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「で、今日は何の用ですか? セフィリアさんの事なら、こちらから聖百合教本部へ赴こうかと思っていましたのに」
「あーうん。それもあるんだけども。ミカエルって古代文字だっけか。読めるんだよね」
「ええ、専門家程ではありませんが、少しは」
「ならこれって分かるかな」
あたしは持っていた勇者の手記をだすと、ミカエルに渡す。
「見てみます」
「勇者の手記らしいんだけども、あたしじゃ全然分からなくって」
学園内をこれ以上調べるのは難しい。
他に手がかりもないし……、そうなると隠された部屋にあった手記を調べるしかないよね。
何の手掛かりも得られないかもしれないし、それが学園長と関係あるのかって言われるとうーんって感じだけども。
「ふむ……、ふむ……」
ミカエルはぺらぺらとページをめくり、頷きながら読んでいる。
あたしが見てもさっぱりだったのに、読めている様子だ。
やっぱすごいなぁこの人。
「勇者が魔王討伐前に王城、すなわちMA学園内で仲間たちと過ごした内容が書かれてます」
「ほおほお」
「そこまで難しい言い回しもなさそうですし、今は私も手が空く時間はあるので、数日いただければ翻訳して差し上げますよ」
「おお!」
「でも、ただの日記帳なら、そこまで有用な事も書いてなさそうだけどなー」
「そうだねえ、でもこれしか手がかりないからね……」
それから数日後。
聖百合教本部の一室にて。
今日はミカエルが手記の翻訳結果を渡してくれる日だ。
あたし、エレナ、セフィリアはその結果をいち早く見るために集まった。
「出来ました。こちらです」
「ありがとう」
とても触り心地の良い紙で書かれた翻訳結果が書かれた紙を本にしてある。
ほおほお、これが手記の内容……。
どれどれ……。
”勇者は、魔法使いと一緒に食事をとった。今日は芋のスープと干し肉のソテーだった”
うん、普通の日記だね。
ってあれ。
勇者?
魔法使い?
名前は……どうしたんだろ?
「固有名詞の部分は文字が独特で、私でも解読出来ませんでしたので、前後の文面から内容を考えて各職業の名称にしてあります」
なるほど。
そういえば、みんな勇者とか魔法使いとか僧侶とか戦士とか、職業名で呼んでいるよね?
誰も名前を知らないのかな?
それも謎だけども……。
あたしはそう思いつつ、再び翻訳結果が書かれた本を読みすすめる。
”食事をとっている時の魔法使いの姿はとても愛らしい。私の大切な人だ”
”そんな思いで見つめていたら、魔法使いも同じように笑顔を見せてくれた。嬉しい”
え゛っ。
こ、これって……。
「そう、百合です」
えええええええ!!!
ま、まさか勇者の手記が百合本なの!?
あー……。
そういうこと……。
ずっと職業で呼んでたからそう思い込んでいたけども、全員女の子のパーティだったわけね……。
”今日は僧侶と手を繋いだ。彼女の手はとても柔らかくて温かい”
う、うーん。
勇者がまさか百合だったなんて。




