22-10
あたしたちはアルの館から出て行こうとした。
その時だった。
「……エレナ」
「なんだ?」
「具合はどうだ? 何か変わった事はないか?」
アルは再びこちらの方を向くと、興味を示した表情でエレナにそう問いかけてきた。
急にどうしたんだろう?
「どういう意味だよ。魔法力強化なら、失敗だぞ」
「そうか」
もしかして、グランドリリィ決定戦の事かな。
だとしたら……。
「いいえ! 失敗じゃないです! エレナは気づいていなかったけども、すごい魔法力を一瞬だけ出せてたんだ!」
あの時、一瞬だけども魔法力100万とかいってたよ!
エレナはやっぱり気づいてなかったけども、あの力を実際に出せていたら、ミカエルだって倒せたはず。
「そうなのか?」
「うん。そうだよ」
「でもなー、制御出来ないんじゃ駄目だな」
そ、そうだけども。
でもあの時のエレナ、本当に凄かったんだから!
学園長だって、明らかに焦ってたというか驚いていた感じだったからね。
「ほう……」
ほら、アルだって興味ありそうに聞いてるし!
やっぱすごい事なんだよ!
「お互いに次のステージへ行ったか」
んん?
”お互いに”ってどういう意味だろう?
”次のステージ”って何の事だろう?
考えている事よくわかんないや……。
「もう少しここに居ろ、いい事を話してやる」
「急にどうしたんだ?」
「気が変わった」
「お人好しになったのか?」
「私は魔法の腕と人嫌いは誰にも負けない自信はあるぞ」
人嫌いはともかく、魔法使いとして最強って。
すごい人だったんだね。
あたしよりちょっと年上のお姉さんっぽい感じしかしないけども……。
人は見かけによらないというか、この世界は見かけを裏切りすぎだよね。
「この世界が暗黒に包まれる前、魔王が居ただろ?」
「そうだな」
「うん」
「で、勇者は魔王と相打ちになった」
「なんだ? 今更学園でやった事を……。先生にでもなる気か?」
確かにエレナの言う通り、今更そんな歴史上の出来事を話してどうしたんだろう?
「まあ黙って聞け。勇者の力は凄まじく、本来なら魔王なんて片手で捻りつぶせるくらいだったんだ」
「ほお」
「ふむふむ」
「じゃあなんで相打ちになったんだ? 余裕な相手だったんだろ」
「そこを考えるんだよ。お前達でな」
いやいや。
それが分からないから、今もこうやって語られているんだよね?
「何だよ、勿体つけて……。話が終わりならもう帰るぞ」
「じゃあな」
うーん。
なんだかよく分からない人だった……。
でも、目的の品物は手に入れた!
これで依頼達成だね!




