19-3
商人ギルドの人に言われるままに連れていかれた先。
王都内のとある区画にて。
おや?
なんだろ、この建物。
どこかのホテルかな?
いや、この世界だと宿屋っていうのかも。
すごい立派だ、高そう。
「ささ、ここを使ってください」
なるほど、こことギルドが提携していて、きっと部屋を貸してくれるって事だね!
いやぁ、こんな綺麗なとこつかわせてくれるなんて!
作家やっててよかった……。
よし、じゃあ早速持ってきた荷物整理しなきゃだね。
部屋の番号聞かなきゃ。
「ありがとうございます。……それで、ここのどこの部屋でしょう?」
「どこの部屋といいますと……?」
「いや、ほら何番号室とか、何階のどこの部屋とか」
「いや、ここですよ?」
「えっ?」
「えっ?」
ごめん、全然噛み合ってない。
ここなのは分かったけど、ここのどの部屋かって聞いているんだけども……。
「何か勘違いされてますね? この建物全てですよ」
へ?
今なんて言ったの……?
「元々は我々が運営していた宿でしたが、あまり利益が出なかったので取り壊しを検討していたところ、折角なのでゆきさんに使ってもらおうと思い改装したのです」
「あ、あの、じゃあ……」
「聖百合教の総本山として活用しようと思っていましたからね、教祖様が直々に住んで貰えれるのは大助かりです」
「え゛っ」
まさか建物全部って。
えええええええええええーーー!!!
いやいやいや!
ちょっと待遇すごくない?
たかが作家だよ……?
そこまでする……?
って、こういう事出来るくらい儲かっているってわけね。
なるほど。
そりゃあ、ギルドの人がウッキウキになるわけだ。
「勿論、巫女様であるエレナさんの部屋もありますので、ご安心を」
「本当か! すげえな! 俺こんなとこ入るのは初めてだぞ!」
エレナは興奮している。
学園に来る前は貧乏だったみたいだから、気持ちは分からなくはないけども。
「ささ、立ち話もここまでにして中へ入りましょう」
「う、うん」
「おう!」
こうしてあたしは新しい家を手に入れる事が出来た。
けども、スケール大きすぎだし相変わらず教祖扱いだし、なんか複雑な気分。
ま、まあでも、エレナ喜んでくれてるみたいだし、エレナの家族が来ても大丈夫なくらい広いから良かったかな。
そういう事にしとこう……。
魔法少女に作家に教祖という三足の草鞋を履く生活、出来るかな……?




