2-9
「……時間切れですね」
た、たすかった……。
あと数秒遅かったらどうなってたか。
今までの攻撃は耐えれたけれど、魔法力50000の攻撃が同じように耐えれるか分からなかったし……。
同人作戦も失敗したからね……。
「ウィーンさん、行きましょう」
「かしこまりました、ミカエル様」
美人さんのミカエルと、褐色の女の子ウィーンはこちらを何度か見るとあたし達から離れていった。
つまり、舞踏会の終了!
よ、ようやくこの戦いも終わったというわけだね……。
「は、はぁ……、死ぬかと思った」
あたしは緊張が解けた途端、その場に座り込んでしまった。
「広範囲回復魔法・脈動する命の波動」
壇上にいた髪の長い女の子は、少しの間祈りを捧げた後、かたく組んでいた手を広げて魔法を使う。
舞踏会の会場には、緑色の光の粒がゆっくりと降り注いでいくと、あたしは何だか穏やかな気分になるのを感じた。
「う、うーん……」
「エレナ!」
そして、今まで気絶したままだったエレナも目を覚ます。
しかも、今までぼろぼろだったのにすっかり治ってるよ!
名前から察するに、回復魔法かな?
他のやられた女の子も次々と起き上がっている。
「学園長、相変わらず見事な回復魔法です」
「いえいえ、現役の子らに比べれば……ですよ」
壇上に居た女の子、やっぱり偉い人だった。
そりゃあ、こんなすごい回復魔法使えるくらいだからねえ……。
見た目は可愛い女の子なのに、見かけによらないというかなんというか……。
「みなさま、舞踏会お疲れ様でした。それでは早速入学時の初期ランクを投影しますので、各自確認してください」
学園長の女の子はそういうと、壇上の後方に名前とランクが映しだされる。
現世であった映写みたいな感じだけども、そんな機械この世界には無いと思うから、魔法なのかも?
ランクは……、見た感じSが一番高くてDが最低なのかな。
なんかこう、べたべたな感じだね。
「ミカエル様、Sランクおめでとうございます」
「当然ですわね。それよりもウィーンさんがAとは……」
「申し訳ございません、少し手を抜きすぎてしまいました」
「今後に期待しています」
美人さんのミカエルと、褐色の女の子ウィーンはどちらも高ランクかー。
名家出身と、そのお付なら確かにそうなのかもなぁ……。
性格悪いけど。
「はぁぁあああ!? なんで俺がBなんだよ!!!」
そう思っていた時、起きて壇上を見ていたエレナは不満げな表情でそう叫ぶと……。
「おい学園長! どういうことだよ!」
勢いよく立ち上がり、壇上の居た学園長へと問い詰めた。
「あなたはエレナさんですね」
「そうだ」
「あなたの攻撃魔法はとても素晴らしかった。ですが防御をあまりにも蔑ろにしています」
「はぁ? んなもんやられる前にやるだろ?」
「それでは前線に出てもすぐやられてしまいますよ。時に生き残る事は倒す事よりも大切なのです」
「ちっ……」
確かにエレナは多くのライバルをやっつけた。
でも不意をつかれたとはいえ、ウィーンに一撃でやられた。
多分そこが評価の分かれ目だったんだろうなぁ。
おっと、周りも大事だけど……。
あたしのランクはどのくらいだろう?
えーと、えーと。
あれ、そういえばこの世界でも名前はゆきなのかな?
まあいいや、見てみたら分かるかな。
あ、あった。
ゆきでいいらしい。
なんか周りは洋風な名前なのに、一人だけ浮いているような気はするけども。
しかも文字も読めてるし……。
まあいいや、細かい事はおいといて。
それで、あたしのランクは……。
「うっ……、Dランク……」
確かにあたしがした事って、同人本見せただけだからさ……。
この評価は妥当というかなんというか……。
「あと、ゆきさん」
「え? あ、はい」
「この後私の執務室へ来なさい」
うそーん。
しかも呼び出しまで受けるとか!
現世の時はそこまで酷くなかったのに、なんで異世界に来てまで……トホホ。