14-6
エレナ視点。
散々怪しい怪しいと思ってきたが、ホイホイついてきてしまった……。
俺は何やっているんだろうな。
しかも結構遠くまで行くな、街から随分離れてしまったぞ?
「ま、気楽にしてくれ」
「お、おう……」
招かれたのは、アルの家だった。
玄関を通って入った部屋の中には何度も読んですり切れた本、魔法で使う植物や鉱物がそこらじゅうに転がっている。
灯りも乏しいし、床には魔法陣が描かれている。
いかにも魔法使いって感じだな。
「で、君は魔法力を強くしたいと言った」
「そうだ」
「どの程度欲しい?」
「……同じ生徒にすげえ奴がいる。そいつはランクBの闇を倒した。それ以上の力だ」
「ふむ、ならだいたいこんなもんか」
机の引き出しから……、なんだあれ粉か?
赤色と緑色の粉を出したぞ。
で、それを混ぜて一体何をしている?
「さあ、これを飲め」
いや、飲めって言われても。
こんな不気味な物を飲むのかよ。
「なんだこれ?」
「準備だよ。それを飲んで、これから5日間魔法の修行をする」
「…………」
「飲んだら絶対に逃げる事は出来ない。どんな苦痛も苦難も全て受け入れないといけない」
「やっぱ怪しいじゃねえか!!」
駄目だこいつ、やっぱインチキ魔法使いだ。
岩壊したのもきっとまぐれだろ。
時間の無駄だった、さっさと帰るか。
「なんだ帰ってしまうのか、意気地なしだな」
「なっ! てめえ!!」
くそ、いちいち腹立つ奴。
「やってやるよ!! やればいいんだろ!!!」
こんな粉で何が出来るっていうんだ?
そんなに飲んでほしかったら飲んでやる。
貧民街で食える物は一通り食った、こんなもんで腹壊れるかよ。
「さあどうだ」
「いいねえ」
意外とさっぱりしているというか、すっきりしているというか。
味もほとんどしなかったし、本当になんなんだ?
「……なんも起きないぞ」
「ふふふっ」
「な、なんだ。気味悪いじゃないか……うっ」
やべえ、急に意識が……。
くそ、やっぱ罠だった……か。
うぅ……。
…………。
…………。
…………。
…………。
「……効いたみたいだな」
「…………」
体が言う事を聞かない。
俺は……どうなっちまったんだ?
「もう一度問う、何故魔法力が欲しい?」
「ゆきがミカエルやセフィリアにとられたくないため」
「……ほう」
家族も大事だ。
だけどゆき、あいつは取られたくない。
俺はゆきが好きだ、ずっと一緒に居たい。
「君はマジックバーストを受けた事があるか?」
「ある」
「どのような手順を踏んだ?」
「ゆきにキスされた」
「それは本当か! なるほど、ソフィアめ……」
「…………」
「今の君に話しても記憶に残らないが、敢えて言わせてもらう」
「…………」
「君の願いをかなえてやる。大船に乗ったつもりでいろ」
「…………」




