13-8
「はふぅ……」
「…………」
えっ……。
ミカエル……?
あたしと、キスしてくれている……?
…………。
…………。
…………。
…………。
「わたくしも初めてですので、稚拙な点は許してください」
「…………」
稚拙……?
うそでしょ?
すごい上手だったし、あたしすごいドキドキしてるよ?
優等生はキスも上手なんだね。
「もう一度……、もう一度お願い」
でもね、今はそんなことどうだっていいの。
「はい」
…………。
…………。
血生臭い戦場なのに、みんな傷ついているのに。
まるで天国に居るような感じ
とても甘くて、幸福な時間。
…………。
…………。
「これは……!」
あたしとの2度目の口づけを終わると、ミカエルの体からとてつもなく膨大な光が放出されだした。
それはエレナやセフィリアの時とは比べものにならないくらいだった。
激しくって、熱い。
まるで、ミカエルのキスのように。
「な、なんだ!?」
しかも、過去のふたりとは違って、ミカエルの背中には4枚の光の翼が生えていた。
ナンバーワンに百合バーストをかけると、ここまでパワーアップするなんて!
「くっ、ミカエル様! そちらへ向かいました!!」
ミカエルが放つ強烈な光に気づいたのか、ウィーンが今まで引き付けていた恐竜っぽい影はこちらを振り向き、大口をあけながら突進してきた!
「来るぞ!」
「う、うん」
あたしとエレナは、武器を持ち構えて相手の攻撃に備え……。
「おりゃおりゃ!!」
エレナは杖から無数の光弾を恐竜っぽい影の頭へとぶつけたが……。
「ちっ、びくともしねえ」
まるでおかないなしだった。
こちらへ突進してくる勢いが止まらない。
「ミカエル……?」
「下がってなさい。わたくしひとりで十分です」
そんな中、百合バーストを受けたミカエルがすっとあたし達の前へと割りこむ。
ミカエルはそう言うと、目を閉じて腰を落とし、杖を両手で持った。
その直後、光が……、風が、ミカエルの杖へ集まっていった。
「ね、ねえエレナ。あれって」
「すげえ魔法力だ。背筋がビリビリしてやがる」
そ、そうだよね。
あたしも同じ感覚だよ……。
この時あたしは、エレナの手をぎゅっと握っていたけれど、それにすら気づかないくらいミカエルの力に圧倒していた。
「大いなる命の光、破滅の闇と混沌なる影を討ち、永久の安寧と繁栄をもたらす一撃となれ」
集まった光と風は球状の眩い輝きへとなり、それは詠唱を進めるほど、時間が経つほどにみるみると大きくなっていった。
「だけど敵も来てるよ!」
「俺じゃ止められねえ! くそっ、間に合うか……!」
恐竜のような影は、そんな暴風にも屈せずミカエルへと突進し……。
「原始へと帰りなさい! 超光魔法カタストロフィ!!」
そして詠唱を終え、ミカエルがかっと目を見開いた瞬間。
大口を開けて食い千切ろうとした恐竜のような影へと、球状の光を発射したのだ!