2-5
「あ、あれ?」
と思ったけど、意外と何ともない……?
着ているメイド服も一切焦げたり汚れたりしてないし。
「そんな!」
火の玉を放った女の子は涙目だった。
もしかして、このメイド服の防御力がすごいとか……?
でも、他の子は魔法受けて普通に倒れるし、服だってぼろぼろになってる。
なんであたしだけ……。
あっ!
もしかして!
「ねえ!」
「な、なんですか!」
「もっかい魔法やってきて!」
「訳の分からない事を!!」
「いいから! この本読んだ事みんなに言うよ?」
「まあ! なんてひどい人!! なら徹底的にやってやりますっ!!」
あたしの挑発に女の子は杖を頭の上で何度かくるくると回転させ、無数の火の玉を呼び出す。
そしてそれを全部、あたしめがけてぶつけてきた。
火の玉は全弾命中。
あたしは消し炭確定……なはずなんだけども。
「やっぱりそうだ」
「そ、そんな……、何か悪い夢でも見ているの……?」
やっぱり今回も無事だ、着ている服すら燃えていない。
と、いう事は……。
あたしは魔法が使えない。
だけど、魔法に対する防御は高い。
つまり、この舞踏会では絶対に負けないって事になるわけだ。
やばい、なにこれ無敵じゃん。
でも、こっちも攻撃出来ないからどうしようもないけど……。
あぁ!
確かに生き残ってもセーフだったような!
だったら時間ギリギリまで耐えるしかないね!
「オラァ!! 貰ったぁ!!」
「きゃあ!!!」
って思ってたら姫カット女の子の背後から、光の玉がぶつかって一発ノックアウト。
目がぐるぐるってなっているから、完全に気絶してるしとても魔法を使える状況じゃあなさそう。
「なんだ、またゆきを助けちまったのか」
「エレナ!」
「まぁ、俺の点数になったから別にいいけどな」
「う、うん」
エレナは少し不満そうな表情だ。
生き残りのサバイバルで、倒すべき相手であるあたしを助けたからかな?
「ねえエレナ、その杖」
「あ? これなー。俺が唯一持ってたものだ」
「ほおほお」
「世話してた村のガキどもが働いて買ってくれてさ……へへ」
そんないいものだったなんて。
というか、乱暴者なイメージだったのに意外といい人じゃん。
「でも大分数が減ってきたな。めんどくせーのは粗方やったが、残ってるのはやべー奴らばかりだ」
「そうなの?」
「ああ、ざっと見てきたがどいつも一筋縄ではいかなさそうだな」
そんなにやばそうな人ばかりなのかな?
どれどれ。
うーん、何がすごいのか分からない。
みんな同じ格好だし。
あれ、よく見たら持っている武器は全員ばらばらだ。
杖だったり、本だったり、水晶玉だったり、何も持ってなかったりいろいろだね。
でも、確かにここまで残ってる人って実力者だから、エレナの言う通りやばいかも?
そう思っていた矢先。
「おしゃべりなんて、随分余裕じゃないか」
突如背後から声が聞こえてくる。
あたしはそちらを振り向くと、短髪褐色の女の子が手をかざしたままあたし達を無表情のまま見ていた。
っていつのまに!
おしゃべりに夢中になってた?
でも、エレナも気づかないとか……。
「あぁ? なんだお前……。ぐはぁ!!」
「エレナ!!!」
そして褐色の女の子は、手の甲にはめたバングル……あれはパームカフかな。
それから黒緑色の光弾を放つ。
光弾はエレナへと直撃し、彼女は大きく後方へ吹き飛んでいった。