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六話

俺が生物部のピアノ線に冥界に連れて行かれたその翌日。学校が終わった俺は生物部に来て皆にピアノ線の事を話した。

「……とまあそんな訳で滅茶苦茶危ないから黒いオーラが漂ったらすぐに逃げてくれ」

「……逃げろってアンタ……除霊は?」

「それは……」

「私がやるから安心するのじゃよ、やまめちゃん」

「「「「「うわっ!」」」」」


やまめが怪訝な顔で俺に詰め寄っていると後ろから突然声が掛けられ、皆驚いて声を上げた。振り返るとそこに居たのは婆ちゃんだった。

「あ、未明のお婆さん!」

「こんにちわ」

祖母が優しくやまめと善野達に挨拶する。やまめは何回も俺の家に遊びに来ているので婆ちゃんとは顔見知りだ。

「急に後ろに立つなよ……ていうか何で学校に……」

「除霊すると言ったろう。大丈夫じゃ、きちんと騒ぎにならんように事務の先生には部活の忘れ物を届けに来たと伝えておいたぞい」

「良かった……! ほっとしたぜ……」

俺はこれ以上事が大きくならずに済んで安心した。今も十分大きいが、学校まで巻き込まずに済んだのがいい。

あとは武士を倒すだけだな……

と、思っていた時期が俺にもあった。


「悪いんじゃが皆は部室の外に出ておくれ。巻き添えになってしもうたら危ないからのう」

「「「分かりました」」」

「分かった」

俺達は部室の外に出て除霊が終わるのを待つ事にした。生物部の扉の窓から婆ちゃんの除霊の様子が見える。

「さて……始めるとするかの……」

婆ちゃんはロッカーの扉を開け、それと対面する。

「ん……これか……霊力の質が妙じゃのう……まあよいわ。“祓閃光”!!!」

婆ちゃんは拳法のような構えを取って光線を打ち出した。その光線は殺人器具に当たり悪い霊力を完全に除去する事に成功する。

「よし、もう入ってもよいぞ。除霊完了じゃ」

「た、助かった~! ありがとうございますお婆さん!」

「なに、これが私の仕事じゃ。気にしないでやまめちゃん」

やまめが婆ちゃんに深くお礼を言い、婆ちゃんがそれに笑顔で応える。

そして善野と御堂が婆ちゃんにこう言った。


「本当にありがとうございました! 凄かったですあの光線!」

「ど、どうやったらあれが撃てるようになりますか!?」

「……え?」

婆ちゃんは硬直した。何故なら俺達霊能力者の能力は一般人には見えない筈だからだ。

「そういえばあれが霊能力なんですか? お婆さん」

やまめまでそんな事を言ってくる。

もしかすると、あの殺人器具に触れた事によって霊能力が開花したのかもしれない。それが良い事なのかは分からないが。

それにしても霊能力という超常現象を見ても大して驚かないあたりこの三人は静仏部に毒されている。

「も、もしや皆は霊能力を持って―――」


「探したぞ……園城寺未明……!!!」

婆ちゃんがそう言いかけた時、凄みのある低い声が聞こえてきた。

「こ、この声は……!」

「儂じゃ」

生物部の壁から、武士が壁を通り抜けて俺達の前に現れた。今度は大勢の部下も連れており、部下もまた鎧を着て刀を構えていた。

「くっ……こんな時に来ようとは……!」

「ぬう。園城寺未明以外の者もあるのじゃなあ。しかし玉石混交じゃな。霊能力を形に出来ていない者が三人もおるわい。逆に足手纏いではないか? 儂にとっては好都合じゃがのう。かかかか……」

武士が高笑いしてこう言うと、やまめが俺の袖を引っ張って聞いた。


「ねえ……あの昔の武士みたいな人達は何なの? 滅茶苦茶怖いんだけど……」

「あれは……幽霊だ。でも心配するなよ。婆ちゃんが全部倒してくれる。とりあえず皆で逃げるぞ」

「分かったわ……ここは未明のお婆さんに任せて行くわよ」

「うん」

「了解」

俺はやまめに教えていいのかとためらいつつも答え、この場を離れる事にした。

「婆ちゃん……頼めるかい?」

「私はまだまだ現役さ。何体の幽霊を成仏させたと思ってるんだい?」

「流石婆ちゃん……心強いぜ! ありがとう!」

「ああ、さっさと行きな! 皆も早く逃げるんじゃよ!」

そう言って婆ちゃんは祓閃光を撃って一瞬の内に部下の半数を殲滅した。

「これなら絶対に大丈夫ね……どんだけ強いのよ未明のお婆さん」

「知らねーよさっさと逃げるぞ! 戦いの邪魔になる!」

そうして俺達は生物部から逃げ出した。

さて……未明達は逃がした……

ここからが私のターンじゃ……フフ……

「逃げおったか……追うのじゃ皆の衆!」

「させんよ」

武士共が未明達を追い掛けようとする。しかし私の祓閃光の前に逃げられる者など誰一人として居らぬ。

追おうとした者全員が閃光によって成仏した。

「こ、この老婆人間を辞めておるわ……」

「それはお主らではなくてか? ヒャハハハハハハハハ!!!」

一番強い武士……平刀乱が呆れた声で言う。私は腹から笑いが込み上げてくるのが抑えられなかった。


「霊能力戦は久方振りじゃ。もっと楽しませて欲しいもんじゃのう」

私は次々と部下を光線で蹂躙していく。じゃがたまには生きのいい奴も居るようじゃ。

「くっ……この化け物が……! “火焔(かえん)”」

「そんな炎が効くものか。ほれ」

「「「「「ぐわあああああああああああ!!!」」」」」

部下が炎の霊能力を飛ばしてきた。

私はそれを身を翻して避け、その部下に光線を放ち成仏させた。

部下はもう既にごく僅かとなっている。刀乱がその様子を見てわなわなと肩を震わせる。


「どうしたんじゃ? 怖気づいたのかい?」

「かかかか……もう勝った気でおるのか。ならば見せてやろう! 皆の衆!」

「「「「「オオオオオオオオ!!!」」」」」

「ん? 何をする気じゃ!?」

私は刀乱の余裕に不審にを覚えながらも刀乱が何を始めるのかと身構えた。

すると奴は部下のを次々と斬り始めた。


「な……お主一体……!」

「かかかかかかかかかか………」

そうして刀乱は部下全員を斬り伏せてしまった。だが恐るべきはここからじゃった。

「これが儂の真の力じゃ。とくと味わえ!」

「ぬおっ!?」

刀乱が見せつけるように刀を振ると、刀から凄まじい斬撃が飛んだ。

私は慌てて光線で斬撃を相殺する。今のは霊力の塊。

つまり刀乱の霊気が飛躍的に上昇し、今の斬撃が放てるようになったのじゃろう。

「儂の霊刀“長月”は霊力を吸収する刀……! 空気中の霊力も吸収出来るのじゃがこのように幽霊を斬るとより効率良く霊力を増やす事が可能なのじゃよ……では、儂は園城寺未明と戦うとしよう」

「なっ、待て―――」

「お主はそ奴等の相手じゃ」

刀乱を止めようと光線を放つが、何処からか新たに現れた奴の部下に止められてしまった。

まだおったのか……!

「くっ、未明、くれぐれも命だけは落とすでないぞ! 待っておれ!」

私は倒しても倒しても湧いて出てくる部下共を蹴散らしながら、未明の無事を祈った。







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