無理矢理にネコ耳盗賊がやって来たと脳内変換を試みた。
タイトル出落ちだが、まあゆっくりしていってくれ。これはサービスのお茶だ。なぁに、高い物ではないから心配するな。
それは、自分が働いている店に出勤し、朝の日課の発注をしている最中でした。
新しいフォーマットになり、以前とは比べ物にならん位に使い辛くなった発注画面と格闘していると、パートさんが稲村某に声をかけてきたのです。
「あのー、入り口のドアが開いているんですが~、平気ですかぁ~?」
すっとぼけた調子のパートさんの言葉に、稲村某は一瞬、耳を疑いました。
……えっ? 昨日は俺が鍵を締めたんだが?
……まさか、ねぇ。
「開いてる筈ないっしょ。全くもう……」
そう口走りながら入り口へと向かうと……
……誰の眼で見てもハッキリ判る位に、無惨に砕け散った硝子の先、その破片が隙間に入り半開きになった扉が、確かに開いていたのです。
おはようございます、若しくはこんばんは。稲村某で御座います。
いやいやいやいや、奥さん聞いてくださいよ!
実はですね、昨日の朝、勤務先の店に不審者が入って金庫の金をあらかた持ち去っていったんですって! イヤですねぇ!!
いやいやそうじゃない。何が奥さん聞いてくださいよ! ……だ。まず最初に警察へ連絡しなきゃならんだろう?
稲村某は慌ててスマホを取り出して、何故か会社の回覧板ページに事件現場の写メを投稿してから(その必要は全く無いぞ)、
「……警察って、110だっけ? 119だったっけ?」
テンパってパートさんにそんな質問をする慌てん坊な稲村某に、
「たぶん110番ですよ?」
と、平然と答えるパートさん。流石は還暦過ぎらしい、大人な落ち着き方ですな。紳士然と振る舞えない稲村某とは大違い。山高帽とステッキが無いから、まー仕方無いけれど。
落ち着く為に深呼吸してから、プチプチとタップ。何とか電話が繋がりますと、
「はい、○○警察です。……事件ですか、事故ですか?」
電話の向こうから落ち着き払った、夜勤明けらしき気だるげな雰囲気の男性の声に、稲村某は静かに答えたのでした。
「……事件です。こちらは○○町の○○(店の屋号)ですが、店の入り口ドアが破られて金庫金を盗まれました」
こうして、慌ただしく一日が始まったのです。全く嬉しく無い初体験。どうせなら食パン咥えた美少女にまがり角で体当たりされて始まりたいもんですが、現実は甘く有りません。ついでに稲村某、食パンは焼かない派です。口の中が傷付いちゃうから。
さて、それから暫し後。何故かパトカーではなく軽自動車に乗った作業服姿の男性がやって来て、稲村某に事情聴取を始めたのです。何故か作業服。勿論カッコいいバッジを見せたりはしません。電気配線工かとマジで思いましたが。
その方から詳しい状況を尋ねられる最中、社内掲示板を見たマネージャーから電話を受け、更に上司の店長等からも電話が次々と掛かる中、聴取は続きます。
そして他のパートさんや駆け付けた店長がやって来た後……遂に本命の【鑑識課】の方が登場!!(一番最初の方も勿論警察官だと思いますが)
「では、皆さんの靴の跡を採取しますので、このシートを踏んでください」
稲村某は、出勤用と職場用の二種類の靴で踏み締めました!! 俺は潔白だから堂々とね!! 誰もそんな事は聴いてないだろうけどね!
……と、言う感じで着々と事は進み、両手の指先と掌も全部捺印したりで、初めてだらけの朝は過ぎ去りました。ワクワクしていたのは最初だけ、後はかったるい仕事の始まりです(おいこら)。
それから若干遅延しながらも開店を迎え、気付けばお客様を受け入れていつものように忙しいランチタイムも終了。
その後、従業員同士であーでもないこーでもないと憶測だらけの事後話をし、夕方から夜の営業へと移行しました。勿論、俺の休憩時間は無し。あはは……。
結論から言うと、金庫の鍵は外部には流出していないので、金庫を壊されずに盗まれたのは【身内の犯行】を物語っていると思いますが……やれやれ、疲れましたわ、本当に。
皆さんも、防犯意識だけは忘れないようにしましょう。万が一盗難が発生した時は、落ち着いて警察に連絡し、現場の保管と身の安全を確保しましょう。稲村某のように写メ撮って垂れ流すような失態は絶対にダメだぞ?
こんな事も有りますが、稲村某は明後日、健康診断でバリウム飲んできます。禁酒せにゃならんなぁ。
ではまた!!
また有るのは、願い下げだけどね!!
はい、おしまい。
大した話ではないが、何でも悪いだの不運だの、なんて誰にでも言えるんだ。
しかし、俺は執筆者だ。何でも字にしてやる、そう思えると、大概の事は飲み込めるもんなんだ。
ま、そんなのは稲村某だけかもしれないが。