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幕間 悪役令嬢の昔話 中

「よろしかったのですか?」

「何がかしら?」


 帰り道、バーガンディとエリーザは言葉を交わす。


「さっきの約束をしたことです。エリーザ様は『三大貴族』のご子息、あのような少年と再び関わる機会を与えるなど……」

「いいのよ、私が決めたの。あなたは文句を言わず、ただ黙認していればいいのよ」

「承知しました」


 エリーザの命令に、バーガンディは即座に肯定の意を示した。



 翌日、エリーザは早朝に目を覚ました。

 普段は高級な寝心地の良いベッドで寝ている彼女にとって、宿のベッドでは寝付けなかったのである。


「ん……」


 体に痛みによる不快感を抱きながら、エリーザは起き上がった。


「おぉーい!!」

「え……?」


 そして聞き覚えのあるその声に、思わず声が出る。

 まさか……、そう思いエリーザは窓際まで歩くと、そこから外を見た。


「おぉーーい!! 金持ちぃ!! 遊ぼうぜぇ!!」

「アイツ……」


 するとそこには、宿の外から大声を上げ、エリーザを呼ぶスパーダの姿があったのだ。


「おいうるせぇぞスパーダ!!」

「うわぁ!? って宿屋の親父かよ……アンタを呼んだわけじゃねぇんだけど」

「そういう問題じゃねぇ!! 朝っぱらから大声を上げんなって言ってんだよ!! 今この宿にはとんでもねぇ人が泊ってんだ……!! 下手なことをすれば、俺の首が飛ぶんだよ……!!」

「……?」

「分かれぇ!?」


 更に宿屋の店主を交え、そんなやり取りが下で行われていた。


「はぁ……」


 軽くため息を吐いたエリーザは、軽く身なりを整え下へと降りて行った。


「スパーダ」

「ん? おぉ!!」

「っ!? こ、これはこれはこれはエリーザ様……!! すみませんすみませんすみません!! すぐにコイツを黙らせて何処かへ捨ててきますので……!!」

「いてぇ!? ちょ、何すんだ離せよ!!」

「うるさい黙れ!! すみませんすぐに!!」

「構わないわ。彼を離しなさい」

「はえ……?」


 宿屋の店主は、エリーザの発言の意味が分からなかったらしく、間抜けな面をするばかりだ。


「聞こえなかったの? 離しなさい、そう言ったのよ? 後、邪魔だから消えて」

「……へ……は、はい! 申し訳ございません!! し、失礼しましたぁぁぁぁ!!!」


 事態を飲み込めない店主だったが、命の危険を悟った彼は、本能的に最適解とそれに類する行動を導き出した。


「……で、何の用?」


 腕を組み、エリーザはスパーダに問う。


「何言ってんだよ、昨日言ったじゃねぇか。外のこと教えてくれるって!」

「言ったけれど……何でこんな早くから……」

「そんなもん待ち切れなかったからに決まってんだろ!!」


 ワクワクといった風に拳を握りしめ、キラキラとした目でスパーダはエリーザを見詰めた。


 コイツ、下手をすれば私たちの使用人に殺されてたって……うん、全く分かってないわね。


 ただの平民が早朝に大声を上げ、エリーザを起床させようとする行為がどれだけ危険で無鉄砲なものであるか……。

 能天気な態度を崩さないスパーダにエリーザは思わず半眼を向けた。

 ――――しかし、そこに不快感は無い。


「いいわ。じゃあゆっくり話せる場所に行きましょう」

「よっしゃ!! あ、そうだ。昨日の使用人の奴はいいのか?」

「問題ないは、口を出さないように言っておいたから」

「? そうか。じゃあ行こうぜ! えーっと……」


 スパーダが言葉に詰まる。何故詰まったのか、エリーザはその理由を即座に理解する。


「エリーザ。エリーザ・ヴァロナントよ」

「エリーザか!! よろしくな!」


 ニカっと笑い、白い歯を見せるスパーダに、エリーザは苦笑した。



 それから、エリーザは毎日スパーダと会話をした。

 最初はスパーダの要望通り、彼女が外の世界や様々な魔具について教えていたが、数日もすれば互いに他愛も無い会話をするようにもなっていた。


「四×五は?」

×(かける)……? なんだそりゃ」

「四が五個あるという意味よ」

「四が五個……全然分かんねぇ!」

「ふふ、スパーダは学が無いのね」

「あぁ!? 何だよそれ!!」


 エリーザにとって、それらは初めての体験だった。

 同世代の子供と接する機会は、これまでも何度かある。だがそれらは高貴な家同士の社交辞令の一環。

 冗談を言い合い、笑い合う……そんなことは、今までエリーザは経験したことなど無い。


 そして、彼女が人をただ貶めるための罵倒では無く、その人と友好的に接したいがゆえの「からかい」に罵倒を使うのも、これが初めてだった。

 まるで友人のように接する会話は、貴族の慣習やしがらみなどで冷え切った彼女の心を、少しずつ溶かしていった。

 

 だが、そのことをエリーザは認識していない。スパーダと関わることの不快感の無さ、どこか心が温かくなる不思議な感覚を言語化できないでいた。


「エリーザ、もうあの平民と関わるのは止めなさい」

「……」


 スパーダと遊ぶようになって数日、エリーザは父親からそんなことを言われた。

 いつもであれば、彼女は黙ってそれに従う。つまらないことに抵抗するのは、生産性が無いことだから。

 ――――しかし、


「嫌よ」

「なっ!?」

「じゃ、私行くから。今日はスパーダと球蹴りするの」

「ちょ、ちょっと待ちなさい!!」


 エリーザは自身の父親の制止を振り切った。初めて、父親に反抗した。

 子供らしく、子供のように振る舞ったのだ。


 そしてそこから更に数日が過ぎ……彼女にとって、運命を大きく分けるできごとが起こった。

ここまで読んでくださってありがとうございます!


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◇◇◇

小話:

エリーザは三大貴族の令嬢。社会の裏や闇の部分を子供ながらに知ったり、彼女自身頭がとても良いのであんな感じの女の子になりました。

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