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第四十三話 出発 後

いよいよ第二章本編完結!!

「お、来たか」


 こちらへ向かってくる馬車を目にした俺は、それが待ち合わせをしている人物であると直感する。

 そして予想通り、その馬車は俺とゼノの前で停車した。


「時間通りね」


 言いながら、馬車からエリーザとバーガンディさんが現れる。


「さ、早速だけれど今後の予定を説明するわ。これから私たちは、馬車で三日を掛け……商業都市『ブルーノ』に向かう。目的は三本目の魔剣の落札」


 馬車から降りて数秒で、エリーザは淡々と俺たちに行程と目的を告げた。


「向かわせる馬車は全部で二十五台。連れて行く従者は全部で五十人、その内半数は既にあっちへ向かわせているから、これから向かう従者の人数は実質その半分。後は執事のバーガンディ、騎士のスパーダ、そして残念幼女のゼノよ」

「了解!」

「了解じゃないわバカ者!!」

「ってぇ!?」


 跳躍したゼノに頭を叩かれ、俺は思わず声を上げる。


「おい小娘!! 貴様儂らに出し抜かれたくせになんじゃその態度は!!」

「ごめんなさいね。今まで負けたことが無かったから負けた人間の態度というモノが分からないの。教えてくれるかしら残念幼女。あなたならそこら辺の経験豊富でしょ?」

「むきぃぃぃぃぃぃ!!!」

「落ち着けぇゼノ!!」

「えぇい離せスパーダ! アイツの頭蓋を噛み砕いてやる!!」


 とんでもなく物騒なことを言うゼノを抑えながら、俺は何とかそれを宥めようとする。


「大体何で儂が【残念幼女】になっとるんじゃ!! この前まで【魔王様】と呼んでいたじゃろ!! グレードダウンしとるではないか!!」

「……」

 

 ビシっとゼノが指を差すが、エリーザはそっぽを向くだけで、それ以外特に言いたく無いようだ。

 心境の変化なのか分からないが……どうやらアイツもアイツで、色々と思う所があるらしい。



 ゼノとエリーザのひと悶着は何とか収めることができた。出発前に何という体力消耗、本当に勘弁してほしい。

 だが、何はともあれこれで出発できる。

 俺たちはエリーザとバーガンディさんと乗車するようエリーザ本人から指定されている。

 つまり、二人がここまで来るのに乗って来た馬車に乗車するということだ。

 馬車の手配などは全て彼女が行っているため、特に抵抗することなく……俺とゼノはそれに従うことにした。


「よし、行くか」


 該当する馬車の前に集まり、俺たちは今まさにそれに乗り込もうとしている。

 そしてその馬車へ乗車しようと足を掛けた時、


「お待ちください」


 ――――後方から聞き慣れた声が聞こえた。

 振り返る前に、先にその人物を視界に入れたリンゼが口を開く。


「あなたは……スパーダの家のメイドね」

「初めまして、エリーザ・ヴァロナント侯爵令嬢。メイドのサイカ・クローバルと申します」

 

 そう言って、サイカさんは深々と頭を下げた。


「サ、サイカさん! どうしてここに!?」


 予想外の人物の登場に、困惑と動揺が一斉に襲い掛かる。


「はい。それは私の役目がスパーダ様、ゼノ様……あなた方お二人のお世話と監視だからです」

「監視って、それは知ってますけど。でも」

「無論、私としてもクエストにまで同行するつもりはありません。それは任務の対象外ですし、そもそもそこまで同行するのは過剰にもほどがありますから」


 俺の言わんとすることを、サイカさんは自ら口にする。


「ですが、今回はクエストではありません。加えて、向かうのは商業「都市」。であればお二人の世話役、監視役として同行するのは必定です」

「あー……」


 確かに、言われてみればサイカさんの言う通りだ。

 別に俺たちはクエストを受け、モンスターのいる山やダンジョンに向かうわけではない。勝手な目的のために……文明が進み、人々が暮らす場所に向かうのだ。


 クエストでも無ければ、向かう場所の危険性も高くない。

 であるなら、俺たちの世話と監視の命を受けているサイカさんが同行するのは至極当然と言えた。

 

「まぁ、それなら俺は構わないけど……」


 そう言ってチラリと、エリーザを見る。

 ここでの最高責任者、最高権力者は彼女だ。何をするにしても、彼女の意見を聞かなければならない。

 俺の向けた視線に、意図を察した彼女は口を開く。


「私も問題無いわ。人数の融通は利く。それに……ギルドとはまだ事を荒立てたくないもの」


 特に抵抗を見せることなく、否定することなく、エリーザはサイカさんの同行を許可した。

 というか……。


「お前、サイカさんのことも知ってるのか……」


 サイカさんがギルドから派遣された人間であることを知っていたエリーザに対し、俺は半眼を向ける。

 しかしこの二週間、コイツには度肝を抜かされてばかりだったため、大して驚くことは無かった。 



 同じ馬車に俺、ゼノ、エリーザ、サイカさん、バーガンディさんが乗る。

 その直後、馬車はゆっくりと動き出した。


 三本目の魔剣。そこに何が待ち受けているのか、誰との出会いがあるのか、それはまだ分からない。

 だがまぁ、今は期待に胸を膨らませて、この道中を楽しむことにしよう。


「待ってろよ!! 『大オークション』!!」


 門を抜けると、馬は地面を勢いよく蹴り、馬車は音を立てて走り出した。


 ――――俺たちの、新たな舞台へ向かって。

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◇◇◇

小話:

第二章本編完結ですが、まだ幕間が数話ありますす!! 次話はエリーザの過去編です。

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