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第三十六話 進化と強化

「オ前……何者ダ……?」

「あ……?」


 腕と剣が交差する中、俺の眼前にいる化け物が問うた。


「魔剣ヲ、使エテイル。ソノ地面ニ落チテイル剣モ、マサカト思ッタガ魔剣ダロウ」


 どうやら、先程までジオルドは俺が使っていた剣を魔剣によく似たまがい物だと思っていたらしい。

 しかし……そこで俺がゼノエリュシオンを使用したことで、魔剣を魔剣と認識したのだ。


「魔剣ヲ二本……一本デモ有リ得ナイコトダ。ソレヲ、オ前ハ」

「はっ!! 知るかよそんなの、ていうか……そんなことより、自分の心配をした方がいいぜ……数秒後のなぁ!!」

「ッ!?」


 腕の剛力を以て、俺はジオルドの腕を払いのける。

 そしてそこからは……。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

「ラアァァァァァァァァァァァァ!!!!!」


 両者の慟哭が響き渡り、斬撃と拳撃が高速で放たれる。

 寸分の狂いでも生じれば……どちらかが命を落とす。そんな行為がいとも容易く繰り広げられた。


 よし!! やれる……!! 魔剣を二本手に入れたから身体能力がさっきまでと段違いだ……!!


 剣を振るいながら、俺は自身の強化に感嘆する。


「グゥゥゥゥゥゥゥ!!!」


 苦し気に声を発するジオルド。それを見て俺は確信した。身体能力では今俺が間違いなく勝っていると。

 だがまだこの力の向上具合に慣れていない。加算された力を……まだ上手くコントロールできていない。

 そのため凌ぎを削り合うような応酬に身を委ねているのだ。


 ――――あとは、この膠着状態から脱し……結界が解ける前にコイツを殺す!!


 再度ゼノエリュシオンの柄に力を籠める。それは確固たる決意と、確固たる覚悟を示していた。

 

 隙だ……ほんの一瞬で良い!! それさえあれば、ゲオルドに代わる暇も与えず、奴を……!!


 そう思った瞬間だった……それは、棚からコロリと落ちるように訪れた。


「ウゥゥゥゥゥ!!! タダノ人間ガァ、身ノ程ヲ弁エロォォォォォ!!!!」


 腕を大きく引いた、大振りの構え……確実に仕留めるという念を孕む殺人拳。

 ――――俺の待っていた、隙。


「っ!!」


 俺は動いた。

 この機を逃すわけにはいかない……その一心で、眼前の対象を見据えた。


「――――付与エンチャント


 俺は唱える……そして、次に到来した刹那魔剣(ゼノエリュシオン)には、


「ナァ……!?」


 を除く、六つの基本属性の魔力を纏っていた。


 これが、ゼノエリュシオンの力……!!


 魔剣ゼノエリュシオンを抜刀した際に流れてきた情報に、間違いはない。


「ゲオルド……!!」

「無駄だ……!!」


 両腕に雷を纏った俺の剣捌きは人格交代の猶予を与えない。


「くらえ……!!! 魔王禍奏撃デビル・エレバロウナ!!!」


 渾身の、六位一体。

 それは肩からわき腹、心臓を通過……奴を確実に絶命に至らしめるよう、斬り裂いた。


 ――――はずだった。


「っ!?」


 だが、無い。刃が肉を割く感触が、刃が骨を断つ感触が。


「アァ……アァ?」


 恐らくジオルドも間違いなく死を悟ったのだろう。だから驚いている、自身が五体満足で生存している事実に、理解が追い付いていない。

 だが生きているという実感も湧かぬまま、本能のみで後方へと跳躍し俺との距離を取った。


「何だ…‥!? 何が起きた……!!」


 かくいう俺もまた同じだ。目の前の敵に何が起きたのか、全く以て分からないのである。


 俺は間違いなく勝利を確信していた。ゲオルドに人格交代をさせる間も無く、魔王禍奏撃デビル・エレバロウナを叩き込んだはずなのだ。


『スパーダ』

「何だゼノ!?」


 相棒の呼びかけに応じる。


「あの悪魔……変容したぞ」

「はぁ、はぁ……変……容?」


 馴染みの無い言葉に俺は息を荒くする。


『奴の魂、数秒前とは別モノじゃ』

「魂って……お前そんなモン見えるようになったのか……」

 

 二本目の魔剣を手にしたことで、力をまた少し取り戻したゼノ。その彼女が言うならば間違いない。

 ならば次に知るべきは何か……その魂の変容が俺の攻撃を防ぐのとどう繋がるのか、その因果関係である。


 思案していると、ジオルドは手と口をワナワナと震わせていた。

 そして、


「ウゥ……ウゥゥゥゥゥゥゥゥ……オオオオォォォォォォォ!!!」


 喚くように叫びながら、涙を流し始めたのだ。


「っ!? な、何だ……!?」


 あまりにも脈絡の無い反応に動揺する。子供のように泣きじゃくる悪魔ジオルドを、俺は訝し気な目で見据えた。

 

「……ゲオルド……。アァ俺ノゲオルド!!! オ前ハ、俺ノタメニィ……!! オォ、オォォォォォォォォォォォ!!!! スマナイスマナイスマナイスマナイスマナァァァァァァイ!!!」


 今度は謝罪を始めるジオルド。感情の道筋が全くと言って良いほど見えない。

 そしてその起伏は、遂に奴を冷静にした。


「……分カッタヨ。俺ニ生キテホシイ。ソレガ、オ前ノ望ミ、何ダナ。ナラ……セメテ……」


 醜悪な外見とは裏腹に、流麗な所作で、ジオルドは構えた。

 片腕を前に突き出し、もう片方を腰に充てる。その姿はまるで拳法家のそれだ。


「……」


 そして眼は冷徹、しかしその奥には……真っすぐに燃え上がる静な闘志が宿っていた。


「……」


 俺は直感する。もう、数秒前の奴では無いと。全てが昇華され、進化した別の生物であると。

 だから構えた。今度こそ、奴を殺すために……偽りの達成感を払しょくし再び意思の松明たいまつに炎を灯す。


「……」

「……」


 互いの距離は、約二十メートル。短いとも、長いとも言えぬ尺。

 

「……」

「……」


 互いは口を開かない。もう、それが不要であることを理解しているから。

 静寂が空洞内を跋扈ばっこする。まるで……浸食するように。

 その域まで達すると、互いの呼吸音すら鮮明に聞こえ、それすら煩わしく思えた。


 ――――永遠にも似たその時間。

 だが終わりは来る。そしてその時を、俺たちだけは知っていた。


 そして、時は来た。


「っ!!」

「ッ!!」


 俺たちは互いに、地を蹴った。

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◇◇◇

小話:

ジオルドとゲオルドは唯一の肉親であり、互いが互いを補いながら生きてきました。兄弟の絆は非常に強固です。

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