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第三十一話 友達(改)

「な、何してんだよお前ら!!」


 現れた人物があまりにも意外だったことから、俺は堪らず声を張り上げる。


「ははは! 助けに来てやったというのに随分な言い草じゃないか!」

「助けに来たって……」


 何を言っているんだ……。


 怒り、困惑、動揺、悲しみ、様々な感情が交差し、俺の中で整理できないものになっていた。


「おいエリーザ!! どういうことだよ!!」

『どうもこうもないわ、見た通りよ。私が彼らに話を持ち掛けたの』

「お前ぇ……!!」


 先ほどとは違い、今彼女に向ける感情は明確に怒りであると断言できる。


『安心しなさい。彼らは『専属組』、王族との関係性は遠いわ』

「だとしても!!」

『勿論、それだけが理由じゃない。今回の作戦において、必要以上の人員投入は避ける必要がある。けど、想定外の事態を想定して……予備のカードを用意しておく必要はあったわ。しかし問題なのはそのカードの信用性。その点において、その二人なら問題ないと……私が判断した』

「何、言ってんだよ……!! 一体どこを見て……!」

『あなたが信頼を置いている人間だから』

「っ!?」


 エリーザの言葉に、スパーダは目を見開いた。

  

「ふざけんな……! 何だよその理由!!」

『あら、らしくないかしら?』

「あぁ! 最高にな!! 俺の知ってるお前は狡猾で人のことを手駒程度にしか思わない女だろ!!」

『心外ね』

「それが今のお前の評価だ。甘んじて受け止めろ!! 本当のことを言え……! 何を以て、お前はフライトたちに信頼を置いた……?」


 俺の問いに、約一秒の間を置いて……エリーザは口を開く。


『何を以てと言われても、さっき言った通りよ……愛してる夫の友人を信じるのは、当然でしょう?』

「……」

 

 放たれた言葉に、またもや言葉を失った。

 要するに、俺基準の価値観で……彼女はフライトたちを信用するというわけだ。

 

 はは……そうかよ。


 その理由に理解を示すことはできないが、何故か納得してしまう自分がいた。


 ていうか……。


「いつから俺はお前の夫になった?」

『バレたか』


 指摘されたエリーザはあっさりと白状する。

 それを無視するように、俺は転移してきた二人を見た。


「フライト、カレン!! ……っ!!」

「アアアァァァァァァァァァ!!!」


 しかし悪魔は攻撃を止めることをしない。

 拳を掻い潜り、フライトやカレンの元へといかせないように距離を保ちながら俺は大声を張り上げる。


「何で……ここに来た!!!」


 そう、もっとも知りたい疑問。

 先日……俺は間違いなく彼らと絶交したはずだ。だがその二人は何故か今この場に現れた。

 どうしてこうなったのか。全く以て理解できない。


「はははは! そんなもの決まってるだろ!!」

「っおい!?」


 キザな口調で、あろうことか彼は悪魔へと接近する。

 このままではフライトがやられる。攻撃の及ばないように距離を取った意味がない。


「来るな!! フライト!!」

「何を言う!! その選択肢は僕には無い!!」

「っ!?」

 

 友、その言葉をあろうことか再びフライトから聞けるとは思っていなかった。


「ウァァッッッッ!!!!」

「アブねぇ!!」


 悪魔の拳が、俺では無くフライトを襲う。


「はっ! 舐めるなよ悪魔!!」


 しかし、なんとフライトは悪魔の攻撃を美しい動きで回避した。


「食らえ! 僕の四重奏ざんげき!!」


 そして腰の剣を抜き、悪魔の腕に凄まじい速度で攻撃を浴びせようとするが、


「アアァ!!!」

「っ!? なんという反射神経……!!」


 巨大な体躯のにも関わらず、俊敏な動きを見せた悪魔はフライトの攻撃を悉く回避する。


「ウゥゥゥゥゥ!!!」

「ふんっ!」 


 反撃を後方へと跳躍することで回避したフライトは、意図してなのか俺と横並びになる。


「スパーダ! 君は勝手に僕と絶交した気でいるようだが、そうはいかない! 何故なら僕がそれを許さないからだ!」

「お前……」


 信じられない目で、フライトを見詰める。


「り、理解できない……!! 俺はお前にあれだけ酷いことを言ったんだぞ!? それなのに……!!」


 言いながら思い出す。彼にぶつけた侮蔑と侮辱の数々を。

 今こうして彼の顔を見ているのはこの異常な状況下における功績が大きい。そうでなければ、俺は罪悪感で顔を俯いていただろう。


「ははっ! 何を言っているんだい!! 確かに突然の罵倒には面食らってしまったが、あの後すぐに気付いたさ!!」

「気付いた……?」

「あぁ! 僕が君と友達になったあの日、君は不快な態度を見せなかった。その君が一日で急に態度を変えた……普通に考えておかしいだろう?」

「え、あ……まぁ……」

「そこで思ったのさ。何か事情があるんじゃないか……いや、事情があるんだとね。そこでエリーザ様から呼び出しが掛かった。そして言われたよ。君が窮地に陥った時、助けてやってくれとね」

「アイツ……」


 憎たらしいエリーザの顔が頭に浮かぶ。同時に、疑問が浮上した。


「……だとしても、何で来た?」

「うん?」

「話を聞いていたなら、俺がしようとしていることくらいはエリーザから聞いただろ? 何でみすみす、自分の命を危険に晒す行動をしたんだよ!? お前は騎士に!!」

「なるさ勿論!! そして君も助ける!!」

「無茶苦茶だろ!! 何でそこまで俺を……!!」


 言葉の応酬の果て――――その先に辿り着いたフライトの言葉……それは、


「友達が困っているんだ……手を差し伸べるのは当たり前だろう!!」

「……っ」


 愚直にして実直、端的にして簡潔なものだった。


「命の危険があるからなんだ!! そんなもの、友達を失うことに比べれば造作も無い!! だから、僕を頼れ!!」

「……」


 フライトの言葉の重み、フライトの言葉の意味が俺の心に圧し掛かる。

 だが……それは心を圧迫するものではない。凝り固まった俺の心を、融解するものだった。


「はは……」


 そして、気付けば勝手に笑いが込み上げる。

 悪魔が再び攻撃を仕掛けてくるである刹那の時間、その中で交わされる交流。

 いつ死ぬかも分からない危機的状況……しかし、不思議と不安は無い。


 むしろ……高揚していた。


「フライト」

「何だい?」

「……二人で、悪魔を倒すぞ」

「ははっ! 最初からそう言ってるだろ!!」


 改めて、俺たちは悪魔に向き直る。


「三人でしょ。なーに男同士で友情に浸ってんのよ」

「っておぉカレン! そうだお前もいたのか!」

「いたのかって酷いわね!? しまいには帰るわよ!?」

「ははは! 帰っても構わないよカレン、あのような異形……僕とスパーダだけで充分だ」

「いや今かなり厳しいから!! カレン頼む帰らないでくれ!!」

「はぁ……ここまで来て帰らないわよ。絶対に、三人で生きてここを出るんだから」


 カレンはそう言って、剣を抜いた。


「っし! 行くぜ……お前ら!!」

「あぁ!」

「えぇ!」

「アアアァァァァァァァァ!!!!」


 意気込む俺たちの声と、悪魔の咆哮が交錯し……戦いの苛烈が告げられたのだった。

ここまで読んでくださってありがとうございます!


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◇◇◇

小話:

フライトとカレンが家同士の仲が良く、フライトのキザでナルシストな性格にカレンはいつも振り回されていました。

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