第二十六話 閃き
気付いたら70話も書いていました!
十五分後。
サラーサの魔法を作戦に組み込み、互いに当日の動きを把握し終わった。
「よし、これで作戦会議は終わりだ」
「スパーダさん。あの、一つ気になることがあるんですけど……」
話し合いが終わり帰宅する気でいた俺に対し、サラーサがそんな言葉を掛ける。
「ん? 何だよ?」
まだ何か案でもあるのかと思った俺だったが、それは次の彼女の発言で打ち消された。
「こ、これは今回の作戦に関係ないんですけど……」
「関係ない……なら、何の話だ?」
俺がそう聞くと、少し息を吸ってサラーサは話し始める。
「こ、根本的な話です。その……エリーザ様は、何を考えているんでしょうか?」
「……え?」
「だ、だってエリーザ様の目的って……」
「あ……」
言われて、気付いた。
……そうだ。
新たに知った新事実の雪崩にすっかり忘れていた――――俺がここまで到達したワケを。
エリーザはロズとの決闘に勝て、という条件を俺に提示した。
そして俺はその条件をクリアしてエリーザから魔剣の在り処を聞いた。
だが、彼女の本来の目的は俺を騎士にすることだ。
しかし……あの邸宅での一件から彼女が俺に対しその条件を言ってくることは無くなった。
このまま上手くいけば、俺は悪魔を倒し……魔剣を手に入れることができる。
そうすればもうエリーザと関わる必要も無くなり、彼女の騎士になる可能性も無くなる。
「いや……」
――――おかしい。
話が上手くでき過ぎている、微かな疑念は徐々に大きさを増していった。
サラーサの素朴だが重大な疑問が俺の脳内を駆け巡る。
この約一週間、少しだがエリーザと言う人間を知った。
アイツは間違いなく有言実行する……そういう奴だ。
なら、どうして俺を騎士にする要求をしてこない……?
このままなら……。
俺は思考した。自分の頭の中で考えられる可能性を挙げては消し、挙げては消した。
エリーザの目的を前提に、俺が取り得る選択肢……行動を逆算した。
――――そして、一つの結論に辿り着く。
「っ……!!」
「スパーダさん?」
はっ、とした俺の表情にサラーサが首を傾けた。
いや……待て、まだ結論って言っても必ずそうだとは限らない。まだ予測の範囲を出ない……!!
――――嘘だった。
俺はほぼ確信した。エリーザが俺に騎士になることを要求してこなかったワケを。そして俺がこれから辿るであろう結末を……。
マズい……どうする? このままじゃ……!!
頭を抱え更に頭を回す。確定しそうな結末から脱却すべく、脳汁を絞り出す。
「だ、大丈夫ですか?」
「……」
思考の海に没頭する最中、サラーサの顔が視界に入った。
「……待て」
その時である。
俺の脳内に、電撃が走った。
散らばっていた微かな破片同士が、まるでパズルのピースのごとく当て嵌まる。
「ひょっとして、これなら……」
気付けば俺はそう呟いていた。
「えっ?」
「いける……かもしれない!!」
「きゃっ!」
細い糸だ。少しでも力加減を誤れば切れてしまいそうな。
だが、上手くいけば……!!
「サラーサ!」
「は、はい!?」
「一つ確認したいことがある」
そう言って、俺はサラーサにある確認を行った。
◇
「ってことなんだけど、できるか?」
「えっと……は、はい。多分できると思います。それだけだったら、魔力消費も大したことないでしょうし。でも一体何をするつもりなんですか?」
「へへ、ちょっとな……」
不思議そうな顔をするサラーサに、俺はニヤリと笑った。
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◇◇◇
小話:
スパーダの知能指数は平凡です。ただ与えられた情報から閃く力は中の上くらいです。




