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第二十五話 放課後の作戦会議

 サラーサの協力を改めて承諾した俺は場所を教室へと移し、『大堂円』とそこにいる悪魔についての情報を共有した。


「なるほど。その魔剣を抜くと自動的に結界が消えて、悪魔が自由になってしまうんですね」

「あぁ。だから俺たちがしないといけないのは、剣を抜いた後にその場で悪魔を殺すことだ。けど……その戦闘で被害が甚大になる恐れがある」

「だから、魔具……ですね」

「あぁ」


 魔具の中には簡易的だが結界を張ることのできる代物がある。


「だが当然、それには使用制限がある」


 そう、今魔剣が発動しているような万全結界は魔具には期待できない。

 発動限界時間や、発動範囲の広さ……それらは魔剣が発動している結界よりも遥かに劣る。


「結界を張る魔具の効果発動範囲は、今魔剣が張っている結界よりも狭い。だから……」

「結界の中に入って魔具を設置、魔剣を抜くタイミングに合わせて発動させないといけないってことですよね」

「……そういうことだ」

「あ、あの……」

「ん、何だ……?」

「それって、どっちにしろ第三者の助けが必要だったんじゃ……」


 それを言わないでほしい。


「どうするつもりだったんですか……?」

「……はぁ、仕方ないか。ゼノ」

「よっと」

「え……えぇ!?」


 俺の呼びかけに魔剣から実体化したゼノを見たサラーサは驚きのあまり後ろに仰のけ反った。


「おぉ良い反応じゃ!! やはり儂の威圧感にやられてしまったか……いやぁ、流石儂!!」

「い、いやぁ……えぇっと……」


 自意識過剰、自分に酔いしれるゼノに対し、サラーサの表情はすぐに困惑が混じったものになっていた。


「まぁ、結界を発動する魔具の設置はコイツにやらせるつもりだった」

「な、なるほど……」


 俺の回答にサラーサは納得する。


「で、でも駄目ですよ!! こんな小さい……しかも女の子にそんなことやらせるなんて!」

「あ、えーっと」


 サラーサの指摘はもっともだった。

 傍から見れば、俺は幼女は危険な場所へ特攻させるサディストを超えた何かに見えるだろう。


「コ、コイツは丈夫だから大丈夫なんだよ」

「何ですかそれ!?」

「ですよねー……」


 仕方ない……。


 俺はゼノの詳細をサラーサに話すことにした。


「コイツの名前はゼノ……実はな、魔王なんだよ」

「……スパーダさん。馬鹿にしてます?」

「いや、してない」

「だ、だってこんな小さな子が魔王って……信じろっていう方が無理ですよ」


 まぁ確かにそうか……。


 彼女の言い分を受け入れた俺はゼノに目配せする。


「おい小娘」

「え、はい?」


 サラーサの前に立ったゼノは、


「よっと」

「っ!?」


 微弱な魔力を体に纏った。

 ゼノの魔力……すなわちそれは魔王の魔力。

 その圧倒的な凄みに、サラーサは無意識に体を震わせる。


「分かったか?」


 短く、ゼノは問う。


「は、はい……」 


 そして冷や汗を流しながらサラーサはそう答えた。


「で、でも……やっぱり危険だと思います」

「何?」


 しかし、彼女はめげることなく自分の意見を言い始めた。


「ゼノさんが強いのは分かりました。けど、悪魔も強いんですよね?」

「……あぁ」

「だったらやっぱり、バレずに結界を発動する魔具を設置できた方がいいと思うんです!」

「まぁ……けどそれができたら苦労しねぇよ」


 サラーサの言う通り、悪魔も相当に強いという話だ。

 いくらゼノとは言え、彼女はまだ力の一部しか戻っていない。そんな中もし魔具を設置しようとした彼女に悪魔が襲い掛かったら……、俺を見ることなくゼノに攻撃を仕掛けたら……。


 当然魔具の設置は困難だ。そして結界を発動することができなくなり、悪魔を地上に出してしまう可能性は十分にある。


「確かに……危険だ。けど、やるしかないんだよ。当日は学園内の人は出払うようにエリーザに手引きさせる。だから……」

「私、できますよ!」

「へ?」


 できる……? 何が?


 唐突に意味の分からない発言をするサラーサに、俺は間抜けな声を上げた。


「す、すみません! また言葉が足りませんでした! えと……私、その悪魔に見られないように魔具を設置すること……多分できます!」 

「えぇ!? 嘘だろ!? そんなのどうやって……!?」

「い、今見せますね!」


 当然の俺の疑問にサラーサは俺に全身を見せつけるように立つと、


「『私の景色(ストレート・ビュー)』」


 そう言って、姿を消した。


「……嘘だろ」


 消えた……そう、瞬間的に移動したわけではない。

 まるでサラーサの姿が後方の景色に同化するように、彼女の姿は消えたのだ。


「それって……」

「はい。私の……特殊型魔法です。物体を周囲の物や景色と同化させて見えなくすることができます」


 その魔法があれば……。


「悪魔にバレずに、魔剣が発動している結界内に魔具を設置できる」

「はい。その通りです」

「……」


 確かに彼女の提案は渡りに船だ。

 しかし、サラーサのリスクがあまりに大きい。

 下手をすれば……俺よりもリスクを背負うことになるだろう。


 そんな危険な目に彼女を遭わせるワケには……。


 そこまで思って、俺は考えを中断した。


 いや……サラーサも覚悟を持ってここにいるんだ。

 ここで彼女の意思を無碍むげにすることはできない。


「分かった。魔具の設置、お前に任せる」

「は、はい! 任されました!」


 俺の言葉に、サラーサは両の拳を握りしめ意気込んだ。

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◇◇◇

小話:

サラーサはゼノに少しばかり反抗しましたが好感度はエリーザより高いです。

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