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第二十二話 魔剣の在り処 その2

「ここよ」

「ここって……」


 抱きかかえられたままのエリーザの言葉に足を止めた俺。

 そして目の前に存在する扉に目を見開いた。


「っと」


 エリーザは発作で歩けないといったような設定は最初から無かったかのように俺の腕から降りる。

 

「早速入りましょう」


 そう言って、彼女はノックをすることも無くその扉を開けた。


「……エ、エリーザ様……」


 入室したエリーザに対し、いささか怯えた様子をイゾルさんは見せる。

 ――――そう、俺たちが来たのは……学園長室だった。


「ここに来たということは……もう、よろしいのですか……?」

「えぇ。だからイゾル、話しなさい」


 何だ……、何を言っている……?

 

 傍から見ても分からない会話を繰り出した二人の顔を交互に見る。

 そんな俺を尻目に、学園長は重苦しい雰囲気を纏い始めた。


「……スパーダさん」

「はい」

「まずは謝罪を……申し訳ありません」

「え? ど、どうしたんですか急に」


 頭を下げた学園長に対し、俺は困惑と言う感情しか浮かばない。


「今回の一件……実は、私も加担していたんです」

「加担って……俺がここに招待されたことに、イゾルさんも関与してたってことですか……?」

「……」


 その問いに、学園長は無言で頷く。


「ど、どうしてですか? エリーザに協力して、学園長が得することなんて……」


 もしかして脅されたのか……?


 初日に学園長と話した時、言っていた。

 学園長と言う立場ではあるがその立場は置物であり、外部の出資者や王族の指先一つで潰れてしまうと。

 ならば理由がなくとも脅されれば学園長は三大貴族であるエリーザに協力することを余儀なくされる。


「いえ……、私にも目的がありました」

「え……?」

「そこでエリーザ様が協力を申し出て下さり……、あなたのことを彼女から知りました。そして、あなたを学園に招待することになったのです」

「そ、そうなんですか……」


 唇を震わせる学園長だが、俺には全く怒りのような感情は湧かなかった。

 彼が今回の件に関わっていることなど初めて知ったし、その目的が不明瞭だからという理由が大きい。


「その……学園長の、目的ってのは……」

「っ!?」


 俺がそう聞くと、彼は更に体を震わせる。

 そして……。

 

「……ふぅー、ふぅー……!!」


 ――――唐突に、親指の爪を食い入るように噛み始めた。


「えっ!? ちょ、ちょっと学園長!! 何してんですか!!」

 

 俺は慌てて学園長の口からその手を引き剥がそうとする。


「うぅ!! うぅ……!!」


 だが彼は一切自身の口から指を離すことなく、頑なに爪から指先にかけてを噛み続けていた。

 それも、出血するほどに。


「無駄よスパーダ」

「はぁ!? 何言ってんだよ!!」

「無駄だと言ってるの。それはイゾルにとって日常茶飯事の行為よ」

「……え?」


 エリーザの発言に、イゾルさんの腕を掴む力が緩んだ。


「その男はある秘密を抱えているの。その重みに耐えられなくなって、時折そうやって現実逃避に浸るのよ」


 出血するまで爪を指を噛むことが、現実逃避……。


「うぅ……うぅ……」


 俺は横目で学園長を見る。

 先ほどまで確かにあった威厳のようなものは既に存在せず、そこには虐待され怯える子供のような初老が存在した。

   

「ここからは私が話すわ」


 エリーザの言葉に、俺は完全に視線を切り替える。


「この学園にはね、スパーダ……悪魔がいるの」

「……あ?」


 悪魔? 何言ってんだ……?

 

 唐突に出て来た用語に俺の頭には疑問符が浮かんだ。


「ま、いきなりそんなことを言われてもそうなるわよね。でもね、これは事実なの。この学園の地下には悪魔がいるのよ」

「ま、待てよ……まず悪魔って、何だ?」

「それは頭に乗っている魔王様に聞いた方が分かるんじゃないかしら」

「ゼノ? お前何か知ってるのか?」


 俺は顔を上げて未だに肩車をされているゼノを見た。

 

「うむ、この前あの魔人を取り込んだことで少しだけ分かるぞ。悪魔とは儂のペットみたいなものじゃな」

「ペット?」

「全く曖昧な記憶ね」

「あぁん!? お前が言えって言ったんじゃろが!!」

「正確に言うと、悪魔は魔人が使役するモンスターよ」

「無視するなぁ!!」

「魔人が……使役する……」

「えぇ、その強さはSランクモンスターと同等……もしくはそれ以上。その昔、多くの人間が悪魔によって殺されたとされているわ」

「そ、そんなモンスターがなんで王都にいるんだよ!? どう考えても危険すぎるだろ!!」

「最もな意見ね、けど仕方のないことよ。それが昔の貴族が残した負の遺産なの」

「負の、遺産……?」

「えぇ」


 エリーザはコクリと頷いた。


「【勇者パーティー】が魔王を殺した後、悪魔は統率を失った。そこで各国が協力し、残った悪魔の残党に対する殲滅戦が行われたの。この下にいる悪魔は、王族がその機に乗じて秘密裏に捕獲したもの」

「何で、そんなことしたんだよ……?」

「軍事利用するため」

「っ!?」


 エリーザの返答は、端的過ぎるが明快なものであった。

 

「悪魔の力を軍事転用できれば交渉や戦争において事を有利に運べる……そう昔の王族は考えたのよ。けど、出来なかった」 

「出来なかった?」

「えぇ。弱体化していたとは言え、悪魔の力は絶大だった。百年以上掛けて多くの被験者と言う名の犠牲を出し、多くの学者が知恵を振り絞ったけど……これといった成果は得られなかった」

「なら、処分すればいいだろ」

「それが出来たら、どれだけ良かったでしょうね」

「あ?」

「研究に投じた百年、そしてそこから今日までの約三百年で悪魔の力は徐々に強くなっているの。悪魔の動きを制限している結界も、後百年もしない内に破壊されるでしょうね」

「だったら余計に対策考えないとだろうが!? Sランク冒険者でも強い騎士でも呼んで!!」

「冒険者ギルドと王族には確執がある。奴らが冒険者ギルドを頼ることは無いわ、貸しを作ることになるから。そして騎士に関してだけど……確かに、所属組の中にもSランク冒険者に匹敵する実力を持つ者はいるわ。けど……彼らは言わば民にとっての希望の象徴。それを失うリスクを……王族(彼ら)は取らない。それに悪魔を管理しているなんてことが他国に漏れるかもしれないからね」

「何だよ、それ……!!」


 拳を握りしめる。

 確かな怒りが、俺の中で沸き上がった。


「まぁ要するに、何もかも後手に回ったせいで全部手遅れ……それが悪魔の存在を秘匿している理由よ」

「……」


 鼻から息を吸い、俺は怒りを堪える。

 そして怒りを霧散させるために……口を開いた。


「そもそも……何でこの魔法学園に悪魔がいるんだよ……?」

「シュラインガー魔法学園は冒険者や騎士を育成するための教育機関……けど、それは表向きの理由。本当は悪魔を管理することが目的の施設よ。イゾルたちクリュゲイド家は数代前からここで悪魔の管理を任されているの。まぁ任されているというよりかは、「押し付けられている」が正しいかしら」

「……」

「当時の当主からすれば王族が造り上げた機関の最高責任者としての立場は美味しかったんでしょうね。それが今の当主を苦しめている訳だけれど」


 つまり学園長は、イゾルさんは悪魔と言う危険分子をこの学園で管理しているということに心が耐えられなくなっていたのだ。

 そして誰に言えるわけも無く、何年もずっと一人で……全てを抱えてきていたのである。

 

「……イゾルさん」


 俺は膝を曲げ、うずくまるように指を噛んでいる学園長の肩に触れる。


「俺が、悪魔を倒します。だから……安心して下さい」

「くぅ……!! うぅ……!!」


 イゾルさんからの返答は無かった。

 しかし、それでも俺の覚悟は既に決まっている。


「エリーザ。学園にいる悪魔について、詳しく教えろ」

「分かってるわ。元々そのつもりだもの」


 俺の眼差しに対し、エリーザは肩をすくませながら答えた。

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◇◇◇

小話:

魔王幹部である魔人が使役する悪魔、魔王にとってはゼノの言う通りペット程度の存在です。

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