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第六話 グラゴリエス書庫

本日二話目!

「フライトは……貴族なのか?」

「ん? 何だいやぶから棒に」


 グラゴリエス書庫に向かう道すがら、俺は隣を歩くフライトに質問する。


「いや、なんかクリューゲル家長男とか言ってたから高貴な生まれなのかと思って」


 俺がそう言うと、フライトは髪を掻き上げる。

 なぜかキラリとしたエフェクトが見えた気がした。


「ふっ、ご名答だ。僕は王都の貴族だよ」

「あぁ、やっぱりそうなのか……」


 てことは、コイツが俺にあの手紙を送った可能性も……。


 そう考えた瞬間、俺はその考えを頭から振り払った。


 いや、無いな……。


 フライトの振る舞いを見ていた俺はそう結論付ける。


「じゃあカレンも?」

「えぇ、そうね。でもどうしたの、急にそんなこと聞くなんて」

「あぁ……いや、その……貴族なのに、こんな学園に通うんだって思ってな」


 俺の中での貴族のイメージは煌びやかなものであり、上から命令する立場だと考えていた。

 そのため魔法などは部下に任せているものだとばかり思っていたのだ。


「あら、貴族で魔法学園に入学する人は結構多いわよ。特に私たち下流貴族はね」

「下流……貴族?」

「貴族にも位があるの、私とフライトは下流貴族。貴族としての誇りや家名を背負って剣を握るのよ。騎士としてね」

「お前ら、騎士を目指しているのか?」


 そこで俺は初めて二人が冒険者では無く騎士を目指しているのだと知った。


「そ、慣習や習わしみたいなものね。下流貴族は上流貴族に仕えるために騎士になることが多いわ」

「へー……ん、ちょっと待てよ。騎士って都市の治安を守ったり、人を助けたりする奴らのことじゃないのか? 俺の知ってる騎士と随分違う気が……」

「あー、スパーダが言ってるのは所属組のことね」

「所属組……それってお前らが目指している騎士と違うのか?」

「騎士には二つの種類があるの。王族が運営する【王宮騎士団】に所属し都市の治安を守る所属組と、特定の家に仕える専属組。違いはもう分かるはよね?」

「……」


 所属組は騎士団に所属し都市全体を守る。

 専属組は貴族に仕え、その貴族を守る。

 こうして整理してみると、目的など全く異なっていることは一目瞭然だった。

 

「王都内じゃ普通に常識だと思うんだけど、スパーダって田舎出身?」

「え、あ、あぁそうなんだよ。だからそこら辺のこととか良く分からなくて……」

「体験入学ってことは学園側から打診されたのよね? それってかなり珍しいわよ」

「そうなのか?」

「うん。学園側が王都外から生徒を呼ぶなんて今まで聞いたこと無いもの」

「あ、あはは……」


 やっぱり、俺のこの待遇は異常だ。

 くそ……本当に何が目的なんだ……?

 

 そんなことを考えていると、


「着いたぞスパーダ! ここがグラゴリエス書庫さ!」


 フライトの高らかな声に俺は顔を上げる。


「デカいな……」

 

 俺はソレを見上げた。

 目の前にあるのは巨大な両開きの門扉。凡そ書庫の扉とするには不釣り合いな大きさに目を丸くする。


「種類によっては王立図書館よりも本が揃っているからね。さぁ入ろう!」


 そう言って、フライトは扉に手をかざした。

 するとかざした場所が薄い光を放ち、二枚の扉がゆっくりと開いていく。


「すごいな。魔力に反応して開くようになっているのか……」

「その通りさ。この他にも、魔力を必要とする設備や施設は数多くある」


 フライトが説明を続ける最中にも、扉は動き続ける。

 そして徐々に内部の景色を見れるようになっていった。


「開いたぞ。さぁ行こうじゃないか!」

 

 書庫の内部を指さし、フライトは軽快な足取りで中へと入っていく。


「お、おい!」


 慌てて俺とカレンもそれに付いて行った。全く、これではどちらがこの書庫に来たくて来たのか分からない。



「……」


 書庫の内部はあまりにも壮観だった。

 数十メートルある棚がびっしりと敷き詰められており、そのどれにも本がこれでもかという程に敷き詰められている。

 そして王立図書館とは異なり、ここは古書特有の匂いが充満していた。


「すごいな! 今まで来なかったことを悔いてしまいそうだ!」

「そうね……こんなに大量の本があるなんて……下手をすれば王立図書館よりもあるんじゃないかしら」


 フライトとカレンもこの書庫の凄まじさに感嘆の声を漏らす。


「あのー」

「っ!?」


 突然発された声。

 それはフライトとカレンのものではない。

 つまり、別の第三者であることを示していた。


 だが、遠い。

 声の聞こえ具合からそう判断する。


「誰だ?」

「他に人が……?」


 フライトとカレンも気付いたようだ。

 俺たち三人は、声のした方に目を向けた。


「すみませーん!」


 すると、数十メートル先にある棚から落ち床に散乱したであろう本の山。

 その頂点から一本の腕が生えていた。


「大丈夫か……!?」


 何やら危険な雰囲気であることを感じた俺は、慌てて本の山へと駆け出す。

 そしてすぐさまその腕を掴むと一気に引き抜いた。


「っぷはぁ!!」

「ってぇ!?」


 しかし勢いよく引き抜いたことで本の山から救出した人物と俺は顔面が衝突する。

 鈍い痛みを抱えながら、俺と救出した人物は傾斜のある本の山から転がり落ちた。


「いたたたた……いやぁ助かりましたー」


 ぶつかったことによる痛みを感じ額をさすってはいるものの、その人物は助かったことにほっと胸を撫でおろすように安堵した。

 助け出した人物の性別は男、黒いローブを纏い片目が髪の毛で隠れていた。

 少年と言うよりは青年。俺よりも五歳以上年上だろう。


「あんたは……?」


 俺は恐る恐る、その青年に名を聞いた。


「あぁ、すみません。助けていただいたのに、こちらが先に名乗らないと不作法ですよね。僕の名前はビク、このグラゴリエス書庫の管理を任されている者です」


 はにかむようにしながら、青年は自分の名を名乗った。

ここまで読んでくださってありがとうございます!


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◇◇◇


小話:

本作の貴族や騎士の設定は現実にある各国の貴族制度を組み合わせたり、分かりやすくしたり、勝手に創造したものなのでこの世界ではこういうモノなんだ程度で覚えていただけると幸いです。

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