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第四話 食事の誘い

次の話は夕方ごろに更新します!

 な、何か……すごい嫌な感じがするぅ……!?


『おいスパーダ!! 何かこの女突然おかしくなったぞ!! 早く離れろ!!』


 わ、分かってるよ。さっさと退散するのが吉だ……!


 冒険者として培った俺の生存本能の撤退という判断に従い、俺は立ち上がる。


「お、お前とそういう約束した事は……分かったよ(覚えて無いけど)。だ、だけど俺達もう大人だし……そういうのは……な? 分かるだろ? じゃ、じゃあ俺はこれで……! じゃあな、久々に会えて嬉しかったよ……!」


 俺は誤魔化すように挨拶をする。


「ま、待って!!」

「え!?」


 そんな時、立ち上がった俺の袖を掴んだリンゼは媚びるような視線を俺に向けた。


「え、えーと、あのな? だから結婚とかいきなり言われても……」

「……それは、もういいよ!」

「え?」


 見れば、先程のドス黒い雰囲気は何処へやら。

 普通のリンゼが戻っていた。


「ひ、久しぶりに会ったんだもん。せめて夕食だけでもご馳走させて?」

『何……?』

「い、いやそりゃ悪いって」


 いくら幼馴染とは言え、十年も会っていなかったのだ。

 そんな彼女に奢らせるなど出来ない――――などと言うのは建前で、実際は目の前の幼馴染の言いようのない不気味さに気圧されているというのが本音だ。


「大丈夫! 私Sランク冒険者だから! お金はいっぱい持ってるよ?」

「そりゃそうだろうけど……そ、そうは言ってもな……」

『おいスパーダ!! 何をしておる!!』

「分かってるよ……。やんわり断……」


 俺がそう言い掛けると、


『さっさとその誘いに乗らんか!!』


 ゼノは手首がはち切れんばかりの手の平返しを見せてきた。


「えぇ!? お前数秒前と言ってる事真逆になってるけど!?」


 ゼノのあまりの変わり身の早さに、堪らず俺は叫ぶ。


『今の儂らにとってはメシは死活問題じゃろうが!! 聞けばその女、お前との結婚は諦めたとぬかしておる、更に先程の邪気も感じぬ!! ならば誘いに乗るのは問題ないじゃろ!!』

「そ、そうかもしれないけど……」


 俺が反論の言葉を探そうとした時、


 ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。


 俺の腹が大きな音を立てて鳴った。


「お腹空いてるの?」

「え、えぇと……その……まぁ……うん」


 俺は自分の腹をさする。

 リンゼの言う通り、俺は腹が減っていた。

 しかも最悪な事に金は食費換算で一週間ほどしか残っていない。

 正直な所、少しでも節約するために彼女の申し出は非常にありがたかった。


「じゃあますますご馳走しなきゃね!」


 柔和な笑みを浮かべ、リンゼは俺の手を握る。


「お、おい……!」

「じゃあ早速酒場に行こう! って言っても私この町来たばかりだから場所知らないや。案内だけお願いしてもいい? スーちゃん」


 ……ここまできたら、仕方ねぇか。


「はぁ……分かったよ……」


 背に腹は代えられない。

 ゼノの命令と、リンゼの厚意を受け入れた俺は彼女を町の酒場に案内した。


 油断するな俺、さっき感じた圧はかなりやばかった……。

 気を引き締めろ、隙を見せるな……!!!


 俺はピシッと顔を強張らせる。



「ぷはぁー!!! うめぇ!!!」


 数十分後、酒にまみれた俺の決意は、あっさりと崩壊した。


 忘れていたのだ――――自分が三大欲求内の一つ、食欲の虜になっていたことを。

 そして長い物には巻かれろ主義のロクデナシだったことを。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

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小話:

スパーダは食欲には抗えません。また、そのせいで思考能力が低下したりします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 剣と話せるというのがキーポイントですよね。あらすじ読んじゃうとそれが何なのかおぼろげに想像出来ちゃいますけれど、その分かりやすさが良いと思います。全体的に明るいノリなのも息苦しくなくて良い…
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