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第三十話 幼き少年はめげずに突き進む 【過去編1】

過去編です! スパーダが魔剣を手にし、ゼノと出会い、ロクデナシになった経緯が語られます!

「はぁ……はぁ……はぁ……」


 スパーダは息を切らし、折れた腕を抑えていた。

 負傷箇所は腕だけではない。

 肋骨にはヒビが入り、体中は擦り傷と切り傷だらけ。


 何故そんなことになったのか。

 それはひとえに、彼の無謀な挑戦に起因する。


 ダンジョン―――旧世代の者たちが作り上げたとされた遺産。

 内部には数多くの財宝があるとされているがそれに比例し凶暴なモンスターが跋扈ばっこする。

 挑めるのは力を持ったSランク冒険者のような存在のみ。

 それ以外の挑戦は明確な死を意味していた。


 そんな場所に、彼は足を踏み入れたのだ。


 何故そんなことをしたのか。

 理由は単純……強くなりたいからだ。


 リンゼが王都に引っ越して二年後、冒険者として活動を許される年齢になった彼は憧れと希望を抱き冒険者になった。

 まだ誰も見たことの無い景色、誰も倒したことの無いモンスター、誰も手にしたことの無い財宝。

 それらが彼を突き動かした。


 世界一の冒険者になる。


 リンゼに何度も話したそれを体現すべく、いなる一歩を踏み出した。


 だが、まだ子供だった彼は知らなかった。


 現実とは……どこまでも過酷で無情なものであると。



「……もう我慢の限界だ! やってられるかよ!!」


 十一歳になり、冒険者登録をしてから三年以上の月日が経過した彼は怒りに満ちた口調で叫んだ。


「どうしたスパーダ。一体何が不満だ?」

「どうしたもこうしたもないだろ師匠!! いつまで俺は訓練すりゃいいんだよ!!」


 三年、それは師匠と呼ぶ女性にスパーダが弟子入りして経過した月日でもある。

 彼が彼女に弟子入りした理由……それは単純に強くなるためだ。


 三年前、意気揚々と地方局のギルドで冒険者登録を行い、暫定的なランクを示された。


 スパーダは最低ランク……Eランクだった。

 子供ながらに体を鍛え、同年代の子供よりは圧倒的な身体能力を誇るが、魔力は圧倒的に人並み以下。

 Eというランクは妥当なものである。


 だが、冒険者として名を馳せようとした彼にとってそれは厳しい宣告。

 ショックを受けずにはいられなかった。

 

 ―――しかし彼は諦めなかった。


 強くないなら強くなればいい。

 足りないなら補えばいい。

 苦手なら克服すればいい。


 子供ゆえの向上心か、諦めず夢に向かって真っすぐに進もうとする意志が彼にはあった。


 そんな時、彼はエポーガ森の奥に住んでいるという凄腕冒険者の噂を聞きつけた。

 森は近い場所にある、数日で辿り着く。

 そんな単純な理由で彼は森へ出向き、噂通りそこに住んでいた女性に弟子にしてくれと懇願し、晴れて弟子となった。


 弟子入りした後、彼は師匠と呼ぶ女性から魔法の訓練、剣術やアイテムの使い方を学んだ。

 そしてモンスターの生息する場所の地形や気候、モンスターの生態の知識も頭に叩き込んだ。

 

 そして三年が経過し、自分は十分強くなったとスパーダは自負した。

 だが師匠は一向に彼をクエストに向かわせようとしない。

 スパーダはそれに痺れを切らしたのだ。


「もういい!! 俺は強くなった!! なのにいつまでも訓練訓練訓練……!! いい加減うんざりだ!! 俺は出て行くぜ!!」


 師匠を指さし、逸る思いで荷物をまとめたスパーダは彼女の家を出て行ってしまった。

 人に感謝するということをせず、自分のことだけを考え、過信し、行動したのだ。


「っし!! 少し時間は掛ったけど、ようやくこれで本格的に俺は冒険者だ!! これからはバンバンクエストこなして、すぐにSランクに駆け上がってやるぜ!!」


 天に向かって腕を伸ばし、スパーダはニヤッと笑う。

 強大なモンスターをばったばったと討伐する自分の姿を想像しながら。


 そして強くなった彼がランク昇格のため、クエストをこなし二年が経過。


 ―――彼がBランク冒険者より上に上がることは無かった。


 スパーダの才能では、三年の修業で到達できる限界はここまでだったのだ。


「は、はは!! ま、まだ足りないか。た、高いな……Sランクの壁は……」


 三年、それでも足りないのかと一瞬心が折れそうになるスパーダ。

 しかし、


「っ!!」


 両頬を力強く叩き、すぐに奮起した。


「そうだ。強くないなら強くなる。足りないなら補う。苦手なら克服する。そうだろ、スパーダ!!」


 そして自分をそう戒める。

 Eランクだと言われたあの日を思い出しながら。


「今の俺が倒せるのは、Bランクの小型モンスターまで。もっと強いモンスターを倒すために、俺がすべきことは……」


 言いながら、彼が顔を上げると、あるものが目に入った。


「パーティー……」


 それはギルド地方局内のロビーの掲示板に貼ってあるパーティーメンバー募集の張り紙である。


「……」


 この時、スパーダはきっかけを望んでいた。

 何か停滞している自分を突き動かすような変化を。

 そんな時に目に入ったパーティーメンバー募集の張り紙。


 現状からの脱却―――その足掛かりにするために、彼はパーティーに応募することにした。


 早速掲示板に近づき、貼られているメンバー募集の紙に片っ端から目を通すスパーダ。

 色々なパーティー募集があるが、その中でもスパーダはある条件に絞り、それに該当するパーティーを探す。


「あった……」


 そして遂に、スパーダはその条件に合致したメンバー募集の紙を見つける。

 それは初心者パーティー募集の紙。

 募集主はついこの間冒険者登録を終えたばかりだった。


 何故わざわざ初心者パーティーを募集したのか。

 理由はスパーダがソロでしかクエスト経験が無かったからだ。

 連携の取れているパーティーにソロ経験しかない冒険者が入れば、間違いなく足枷になる……そう考えた。


 一番良い選択はスパーダと同じようにソロ経験しかないような者が募集しているパーティー……つまり彼と同じように冒険者として経験を積んではいるが、パーティー経験の無い冒険者の募集。

 だが張り紙だけでそれを判別するのは不可能。

 よって、間違いなくパーティーでのクエスト経験がない初心者パーティーの募集を選んだのだ。


 まずは初心者のパーティーに入り、経験を積む。

 その後パーティーを抜け、別の適正ランクのパーティーに入ればいい。

   

 しかし、この時スパーダは思いもしなかった。

 自分が更なる絶望に叩き落されることを。

ここまで読んでくださってありがとうございます!


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◇◇◇


小話:

スパーダの親は放任主義で、息子が何をしても大して関知することはありません。

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