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第二十八話 魔王幹部襲来

遂に一章ボス登場!

「何だ今の音は?」

 

 大量のキングゴブリンが出現した同時刻。

 洞窟の入り口で待機していたロイドとウーリャにも、かすかだが壁や地面が崩れる音が聞こえていた。


「どうしますか? 俺たちも向かった方が……?」


 言いながら、ロイドは隣に立つウーリャに指示を仰ごうとするが、


「(フルフル)」


 彼女は何も言うことなく、ただ首を振るだけである。


「行かなくて……いいということですか?」

 

 ロイドはリュートとは異なり、礼儀のある言葉遣いでウーリャに接した。

 

 既に分かっているだろうが、ウーリャはとても恥ずかしがり屋だ。

 しっかりと会話ができるのは親しい人間。

 それこそ同じく【竜牙の息吹】に所属しているリンゼたちしかいない。


 それ以外の者とは基本会話を行わず、首を横や縦に振ることで意思の疎通を図っている。

 しかし流石にこのような事態では口を閉じたままというのは不可能。


 クエスト中に起きたトラブルに対し、自分の羞恥心を優先するほどウーリャは冒険者として落ちてはいない。

 だから、ウーリャは意を決したように口を開いた。


「だ、大丈夫……な、何かあったら……魔石晶で……連絡が、入る……から……問題……無い」

「そうですか……」

「それに……」

「それに?」

「……不測の事態は、覚悟の、上」


 ウーリャの発言の真意を、ロイドは見抜くことができなかった。



「どうなってる……!! 何でキングゴブリンがこんなに……!!」


 あまりにも異様で絶望的な光景にリュードは顔を歪ませる。


 キングゴブリンは一つのゴブリンの群れに対し一匹。

 ゴブリンの王として、群れを統治する……これがゴブリンとキングゴブリンの生態。


 だからキングゴブリンが複数で群れを統治しているというのはあり得ない。

 もし仮にキングゴブリン同士が殺し合いになり、どちらかが王になる。

 

 だから今目の前に広がる光景はどう考えても異常なのだ。


「どうするシェイズ!! 流石にこれはマズいぞ!!」 


 ドミノはリーダーのシェイズに指示を仰ぐ。

 いくらSランクパーティーであっても、これだけの数のSランクモンスターを同時に相手にするのはほぼ不可能と言っていい。


「まずはこの洞窟から脱出することを最優先とする! 俺とドミノ、リンゼ、エルが時間を稼ぐ。その間に他の者は元来た道から戻り、このことを報告しろ!!」

「ま、待てよ!! それじゃあシェイズたちは……!!」


 俺はリーダーの提案に堪らず声を上げる。


「問題ない。俺たちも機を見て脱出を図る……、だから行け!!」

「そ、そんな……!!」


 更に言葉を畳みかけようとする俺。

 何を言うか……全く言語化出来てはいないがそれよりも今はシェイズの決断を取りやめさせたいという思いが口を動かした。

 その時、


「いやはや……、それは困ります」

『っ!?』


 この場にいる俺たち以外の第三者の声が、俺たちの意識を向かわせた。


「誰だ?」


 上空に浮遊する男にシェイズは問いかける。


「初めまして、この度は私のアジトに足を運んでいただき誠にありがとうございます」


 礼儀正しい口調で、男は柔和な笑みを見せた。

 褐色の肌に目の下から顎にかけて不気味な刺繍が施されている。


「アジト……だと?」

「えぇ。ここは私が研究を行っている場所です」

「研究だぁ……?」


 ドミノは訝し気な視線を見せる。


「はい。どうですか? 中々良い完成度でしょう。私の作品たちは」


 そう言って男は大きく手を広げた。


「じゃあ、このキングゴブリンたちは……あなたが造ったってこと……?」


 恐る恐る、エルが問う。


「えぇ! 更に脳にも仕掛けを施しています。彼らは忠実に聞きますよ……私の命令を」


 命令……。


「……まさか……!」


 一連の発言から、俺は一つの結論が導き出された。


「ん? 気付きましたか?」

「キングゴブリンはゴブリンの群れを統治する……なら、そのキングゴブリンがアイツの手によって造られたものなら……!!」

「もしかして……ゴブリンが村を襲ったのも……!?」

「ご名答。全部私が、キングゴブリンを通して命令したことです。離れた村を襲わせたのは、ここに調査が及ばないようにするため」

「……ふざけんな……!!」


 怒りの感情が、俺を襲う。


「なら元凶はてめぇってことじゃねぇか……!!」

「ははは。元凶が私? 失敬ですね……。私が命令しなくとも、キングゴブリンは勝手に群れを統治して村や町を襲っていましたよ。いや、でもそうですね……結果的に……うん、全部私のせいと言っても過言ではないか」


 清々しいほどにあっけらかんとした様子で男は肩をすくめた。


「いかれてやがるなてめぇ……」

「何を言っているんですか? これは必要なことです。全ては……魔王様を復活させるためのね……」

「……は……?」

『何じゃと?』 

 

 あまりに唐突な発言に、俺も……ゼノも一瞬思考が停止する。


『おいスパーダ。今アイツ、何と言った?』

「お、俺の聞き間違いじゃなければ……魔王の復活、とか……」


 俺が視線をある場所へ向けようとすると、その前にシェイズが口を開く。


「魔王の復活だと……? 一体何を言っている、というより……何者だ貴様?」

「あぁ確かに……そう言えば名乗っていませんでしたね……」


 男は纏っていた黒いローブを自ら引き剥がす。

 彼は下に礼服のような服を身に纏っていた。


「では改めまして……魔王様の幹部の一人。魔人ルオードです。以後、お見知りおきを」 

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◇◇◇


小話:

魔人は人間を超越した種族です。人間のように強化魔法や回復魔法を使わずとも凄まじい身体能力や自己回復能力を持ったりしています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 良いですね!後々胸熱展開がまってそうで楽しみ!
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