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第二十七話 異変

危なげなくキングゴブリンは倒せました。

「す、すげぇ……」


 周辺のゴブリンを腰の帯刀していた剣を使って倒していた俺は、いやでも目に入った凄まじい戦闘に感嘆の声を漏らした。


『スパーダつまらんぞ! 何故あっちのデカい奴と戦わん!』

「無理だっての!?」


 先ほどまでの対キングゴブリン戦。

 シェイズたちはとても理想的な立ち回りをした。

 しかし、その理想的な立ち回りを可能にしているのは、ひとえに鍛え抜かれた肉体と、研鑽された魔力による魔法あってこそだ。


 肉体ならまだしも、魔法の使えない俺があの中に入っていったところで何もできない。

 むしろ慣れないSランク冒険者との連携で足を引っ張り、全員を危険に晒すことになる。


「にしても……」


 俺は顔を別の方向に向ける。


「お前は行かなくてよかったのかよ。リンゼ」

「え?」


 近くで俺と同じようにゴブリンを討伐しているリンゼに俺は問いかけた。


「うん、シェイズさんたちなら問題なし! それよりもスーちゃんと一緒にゴブリン討伐してる方が楽しいもん! それにスーちゃんをメロメロにするには近くで私の戦いぶりを見せた方がいいと思ったの! 見て、この剣捌きと俊敏な動き!」

「それはこの前の決闘で嫌って程味わったよ……てか、俺の好感度上げたいならシェイズたちと一緒にキングゴブリン倒した方がまだ上げられたぞ」

「えっ!?」


 リンゼは驚くように声を上げる。


「しかも「楽しいもん」ってお前な……怒られるだろ」

「大丈夫! 皆私の気持ちを汲み取ってくれるよ!」

「おぉいリンゼ!! てめぇ何で戦闘に参加してねぇんだよ!?」


 どうやらリンゼの思いは何も汲み取られてもいないようだった。

 ドミノが駆け寄ってくる。


「あれ?」

 

 怒鳴り声を上げたドミノに対し、リンゼは「何で?」とでも言わんばかりの表情を作る。


「キングゴブリンの相手はお前含めて四人で相手するって会合の時決めただろうが!? 何そっちで雑魚狩りしてんだてめぇは!?」


 会合の中で、リンゼもキングゴブリン討伐の頭数に当然入っていた。

 Sランク冒険者なのだから当然である。


「えへへ」


 だがリンゼは、はにかむように……全く悪びれる様子はない。


「はぁ……ったく、まぁ別にいいけどよ。今回は大して苦戦しなかったからな」


 ポリポリと頭を掻き、ドミノはため息を吐く。


 彼の言う通り、Sランクモンスターであるキングゴブリンとの戦闘はなんら苦戦しているようには見えなかった。


「とは言っても、それは結果論だ。あまり想定外の行動を取るな、リンゼ」


 間から口を挟むように、こちらへ歩いてきたシェイズはリンゼを言う。


「は~い」


 そこで初めて、リンゼはバツの悪そうな顔をした。

 

 しかし何だろうか。

 ドミノも、リンゼを叱咤したシェイズも……リンゼの行いに対しあまり気にしていないようだ。


 本来ならば、リンゼのような作戦を乱す行動はもっと厳重に注意されるべきこと。

 だが皆、どこか心に余裕があるように見える。

 

 これが……Sランク冒険者の『格』というものか。


 俺は改めて、自分が一緒にクエストをしている人物たちの凄さを実感した。

 すると、いつの間にかリンゼの隣に立っていたエルが口を開く。


「何はともあれ目的は達した。他のゴブリンもあの人たちが倒してくれてるし、これでクエスト完了」

「そ、そうそう! 流石エル! 切り替えが早いね!」

「……」

「ん? どうしたのエル?」

「……」

「ふぇっ、ひたいよえふ……」

「これでチャラ」

「ご、ごめんなふぁい……」


 ジト目で両頬をつねるエルに、リンゼは呂律の回らない口調で謝罪の言葉を述べた。 


「ギャァァァァァ!!」

「よしっ! おい、ゴブリンはあらかた殺したぞ!!」


 リンゼとエルがそんなやり取りをしている最中。

 俺たちから十数メートル離れていたリュードたちは出現したゴブリンを殲滅したことを報告する。


「こ、これで……終わった……のか?」 

「そりゃそうだろ。目的のキングゴブリンは倒したんだ。後はそこら辺の雑魚を全部殺せばクエストクリアだろ」


 俺の疑問に、ドミノはもっともな返答を下す。


 だが……何だろうか。

 胸が……ざわつく。


「キングゴブリンの討伐は完了した。これより帰還する」

「死体はどうする?」

「後日回収班が来る。彼らに任せよう」

「了解」


 ざわつきは……嫌な予感に変化する。

 胸のざわつきに、鼓動が速くなる。


「はっ。スパーダ、結局てめぇは大して役に立たなかったな。ゴブリンもほとんど俺たちが倒したぜ」

「本当に役立たずね」

「ふ、二人共言いすぎですよ」


 ……冷や汗が、流れ出る。


『おい、スパーダ』

「……ゼノ」


 同じく、ゼノも気付いているようだ。 

 そして次の瞬間、嫌な予感は……確信に変わった。


 ドゴォォォォォォォォォン!!


『っ!?』


 その爆音に、全員は目を見開く。


「な、何だ……!?」


 我先に言葉を発したのはリュード。

 突如周囲の至る箇所の壁と地面が破壊され、隆起し……瓦礫として崩れ去った。  


 そしてそこからモンスターたちが現れる。


「どういうことだ……?」

「おいおいおい……!!」

「あり得ない……」

「えぇ!?」


 それらに、流石のSランク冒険者たちも動揺を見せる。


『グォォォォォォォォォォォォォォ!!!』


 出現したモンスターは先程討伐したはずのキングゴブリン。

 しかし問題なのはそれだけではない。


「何だよこの数……!!」

『おぉ! 気持ち悪いのぅ!!』


 ……三十匹。

 

 明らかに異常な数のキングゴブリンが、俺たちの目の前に立ちはだかった。 

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◇◇◇


小話:

【竜牙の息吹】内での強さはネタバレになりますのでまだ言えませんが、確実に言えるのは

リンゼ > ドミノです。

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