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第四十六話 『大オークション』三日目 その10

 大オークション三日目において、【ノーネーム】の面々のそれぞれの配置は決まっていた。

 その中でバーガーは会場の外、周辺の見回りを担当していた。


「スゲェ音がしたからさー。慌てて来たよ」

「のワリには全然慌ててるように見えなかったけどなぁ……。ンデ、何? アイツらにやられたの?」

「そうだ。見ろよこの腕」

「ウワー。派手に逝ったねぇ」


 ムオーとバーガーは、そう軽口を叩き合う。


「どーやら一人増えたみてぇだなハニー」

「そうだねダーリン。けど、私たちが負ける道理は無いよ!」


 そう言って、グラコスとラエルは構えた。


「分かってんなバーガー。アイツらは敵だ。しかもっとくと面倒なことになる。だからここで俺たちが潰すぞ」

「ウン。分かったよ」


 対し、ムオーとバーガーもここで戦う意思を見せる。


「ハニー、ゲロ吐くヤツとの近接戦闘は不利だ。さっきは上手く隙を付いたが、もう奇襲はもう通じねぇだろうからな。だからアイツは俺がやる。ハニーは今来たもう片方をやってくれ」

「うん!」


 ――二対二。

 Sランク冒険者である夫婦と、彼らと遜色の無い実力を持ったアウトローたちの戦いが幕を開けた。



 ムオーが場外へと飛ばされ数秒後、壇上に立つフィオネはこの段階で第二会場の戦力が第一会場へ向かうことを諦めた。

 そして更に彼女に追い打ちを掛けたのは、感知端末からカンパネギアとチュルラの反応が消え、団長であるイタンシンの反応が突如として会場外に移動したことである。


 カンパネギアとチュルラが死んだ、これはあまりにも不測の事態。

 まさか第一会場と第二会場共に、私たちと渡り合える者がいるとは……。

 

 チュルラからの連絡が入り、感知端末からの反応が消えるまで約二分。地下のオークション品をサシタが持って『ブルーノ』から脱出できるかは五分五分と言ったところ。

 問題は……第一会場で出品されている『剣』だ。

 そもそも、団長は今回アレを最優先と言っていた。つまり、他のオークション品はまだしも、あの『剣』だけは何としても回収しなければならない。


 ――団長のために、私は動く。


 フィオネは【ノーネーム】の中で一番イタンシンへの忠誠心が高く、強い。

 彼のために殺し、彼のために奪い、彼のために混沌を形成する。

 イタンシンと出会ってから、フィオネは自分のために行っていた殺戮や略奪を、彼のために行っていた。


「おいおい何ぼーっとしてんだよぉ!!」


 そして、今後の動きを考えていたフィオネを前に、好機と言わんばかりに狼人ライカンスロープであるゾイが攻撃を仕掛ける。


「……邪魔です」


 が、フィオネはそれを容易く回避する。そしてそれだけに留まらず、ゾイに手で()()


「お、おぉ……!? がぁ……!!」


 その瞬間、ゾイは謎の力に圧されるように吹き飛ばされた。


「何だ今のは……。力を籠めたようには見えなかったぞ」


 リザードマンのフーガはその奇妙な光景に目を細めた。


「風系の魔法の可能性も考えられますが、恐らく彼女の特殊型魔法でしょう。彼の飛び方は風圧によるものと見るには違和感がある」


 隣に立つバーガンディはそう所見を述べる。


「……」


 次いで、フィオネは彼を見た。


 今私がしなければいけないのは、可及的速やかに第一会場へと向かい団長が欲している『剣』を回収すること。そのために……。


「おっと」


 一瞬にして距離を詰めてきたフィオネに、バーガンディは思わず声を漏らす。

 フィオネは手を伸ばし、ゾイと同じように触れようとした。


 ふむ、ここは……。


 そんな中、バーガンディは思考し、結論を導き出す。

 彼の答えは、


 ビュン!! ドゴォ……!!


 わざとフィオネに触れられ、彼女の魔法を体験することだった。


 先程の方を見る限り、触れられた所で恐らく死にはしない。というより、私なら耐えられる。相手の特殊型魔法がどういったものなのかを確かめるために触れるのが吉でしょう。


 そう考えたバーガンディだが、


「ん……これは」


 謎の力で吹き飛ばされ、壁に叩きつけられるバーガンディ。

 だが、それでもなお彼は動けない。謎の力は未だ持続を続け、ますます彼を壁にめり込ませている。

 そして遂には、


 バキバキバキバキバキィ……!!


 壁を破壊・貫通し、隣の部屋へそして更に隣の部屋へと圧され続けた。 

 床に叩きつけられ、壁に激突することを続けたバーガンディはそうして……。


「あら、バーガンディ」


 第一会場まで到達する。


「……こんばんは、お嬢様」

「貴方、何やられてるのよ」


 エリーザは自身の執事に半眼を向けた。


「面目次第もございません。敵の魔法の威力と種別を見誤りました」


 気付くと体の自由が戻っていたバーガンディは骨をゴキゴキと鳴らしながら、体の調子を取り戻す。


「バーガンディさん。第二会場の敵は?」


 両の手を激しい深紅色に染め上げたサイカは彼に問い掛ける。


「二人です。内一人はグラコス・ラエル夫妻と共に場外へ、もう一人は……」

「最短ルート。想定通りです」

「今来ました」


 バーガンディが空けた穴を通過してフィオネが、第一会場へと足を運んだ。

 彼女はさきほどラエルがムオーを蹴り飛ばし場外へとやったのを見て、こうすれば最短ルートで第一会場へ向かえると踏んだのである。


「彼女は特殊型魔法の使い手です」

「そう。ならある程度内容は把握したんでしょうね?」

「えぇ、わざわざ食らった甲斐がありました。彼女に触れられ、吹き飛ばされたことで、先ほど見た奇妙な光景の正体が分かりましたから」

「その光景を私は見ていないのだけれど、説明は不要だから端的に相手の魔法が何か答えなさい」

「承知しました。相手の特殊型魔法の正体は『磁力』です。その反発力で私はここまで吹き飛ばされました」

「磁力、ですか」

 

 サイカがバーガンディの言葉を反芻する。 

 バーガンディの推測は的中していた。フィオネの特殊型魔法の力は『磁力』である。


届かないこの想い(ラブ・マグネット)】。

 フィオネは自身をN極、またはS極に設定することができる。そして彼女は手で触れたものにS極またはN極を付与することが可能。付与されたものは異極ならば引き合い、同極ならば反発する。一度に付与が可能なのは二つの物体までであり、自身に極を設定してもそれはカウントされる。

 補足すれば、このS極とN極で生じる磁力は、フィオネの魔法下でしか作用しない。

 つまりフィオネに触れられた者がフィオネが触れていない金属に引き寄せられたり反発したりするということは無い。


 この時点で、バーガンディが理解したのは『触れた者を磁力で反発させる』という所まで。その逆の引き合わせることもできるという可能性はすぐに思い浮かぶだろうが、それでもそれ以上は判然としない。

 加えてこの第一会場にはバーガンディにとって最優先で護衛すべきエリーザがいる。先程までとは異なり、魔法解明のために派手な行動は取ることができない。


 これを打破できるのは、新しい波…‥別の第三者である。

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◇◇◇

小話:

現在状況

セコノミヤ公園

→スパーダ&ゼノ、イタンシン交戦開始

『スワロウズドリーム』第一会場

→サイカ、バーガンディ、エリーザ、フィオネ。

『スワロウズドリーム』第二会場

→ゾイ、フーガ

『スワロウズドリーム』外

→グラコス&ラエル、ムオー&バーガー交戦開始

『スワロウズドリーム』地下

→オークション品保管倉庫内にサシタ、イルミ

 シェイズはイルミの元へ、残りのメンバーはボルカノと交戦開始

 

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