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第三十二話 『大オークション』二日目 その4

「ドミノ!!」

「おう!! 盾激突シールドバッシュ!!」


 リンゼに呼応し、ドミノは盾を押し出しながらドンドフへと突撃した。そしてその後ろからリンゼは斬り掛かる。


暗澹祷廻あんらんじゅかい!!」


 右足を軸として回転しながら、リンゼはドンドフの背中に刃を放った。


「挟み撃ちか! だがなぁ……!! ンなもん意味ねぇよ!!」


 ドンドフの圧倒的な筋肉、加えて身体強化による二重の鎧はそれでも破壊することが出来ない。


「今度はこっちの番だぜ!! ギガント一発!!」

「ぐぅあ!?」


 ドンドフは右手に魔力を籠める。そしてドミノの盾を半壊させ、リンゼを再度後方へ吹き飛ばした。


 マズい!! 今の状況、ただでさえ厳しいのに俺が攻撃を受け切れなかったらリンゼに攻撃のチャンスが生まれなくなる……!!


 ドミノは「くっ」と顔をしかめる。


「さぁさぁ!! もっと俺を楽しませてくれよぉ!!」



「向こうはもう終わりそうだな」


 優勢なドンドフを見ながらムオーはそう呟いた。


「……お前たち、一体何が目的だ」

「はは、そんなのお前らには関係ない話だし言った所で無意味だな」


 シェイズはピシャリと言い返されてしまう。


 コイツらは昨日と同じ方式で一組ずつ取引部屋へ案内し、何かをしようとした。だが、イルミさんが黒服が化けている事を看破し、事態が変化した。

 結界が発動し、叫び声や衝撃を外部に漏らされない状況での殺害を行う。恐らく、今の俺達が置かれているこの状況は正体が見破られた時に相手が用意していた処置。

 つまり、俺たち以外の部屋では今、別の何かが行われているはずだ。だが、今は他の部屋の事を考えている余裕は無い。

 このままいけば、コイツらの仲間が来るのは時間の問題。そうなれば俺達は勿論、イルミ様も確実に死ぬ。

 ……そうはさせない。だから、一刻も早くこの状況を打開する……!!

 だから……頼むぞウーリャ!!


「……」

「ウーリャ、まだ?」


 エルは隣にいるウーリャに小声で尋ねる。


「……」


 対してウーリャは無言。何かに集中しているようである。しかし数秒後、彼女はポツリと呟く。


「ありました。けど、これは……」


 ウーリャは非常に辛そうに顔をしかめる。だが、覚悟を決めねばならない。彼女はシェイズに合図を送った。


「……」


 ――そうか。奴ら、なんてことを……!


 ウーリャから送られた情報に対し、シェイズは信じられないという思いと純粋な怒りが込み上げる。


 ……だが、やるしかない! 後はタイミングだ。どうにかして、コイツの意識を逸らさなければ……!!


「……」

 

 結界に閉じ込めた。戦力的にも状況的にも俺達が優勢。もう後はこのまま詰めれば俺達の勝ちだな。


 シェイズと対峙するムオーはそんなことを考える。


 ドンドフは後一分以内であの二人を殺す。そうなれば奴は俺の方に加勢し、残りの四人も確実に数分で殺せる。

 まぁ俺だけでも目の前にいるコイツらを殺せれば御の字だが、恐らく実力が拮抗してて死ぬ可能性がある。だから……俺がすべきことはドンドフが来るまでこうしてのらりくらりやり過ごす事だ。

 ――さぁ、もう少し遊ぼうぜ……冒険者。



「がははははは!! 楽しかったぜぇお前ら!! 俺相手によくここまで死ななかった!! 大抵の奴は五秒も経たない内に死んじまうからなぁ!!」

「はっ……そうかよ……!!」


 盾が半壊したドミノは忌々しそうに言いながら、ドンドフとの距離を推し量る。


「はぁ……はぁ……はぁ……!!」


 嘘……まだ五分も戦ってないのに、息が上がってる……!! 格が、違い過ぎる……!!


 リンゼは、ドンドフに攻撃を通すために筋力や魔力も相当量酷使していた。しかし、主な原因はソレではない。リンゼははドンドフから発される魔力圧まりょくあつと彼の圧倒的な強者としての存在感を目の当たりにし、精神的に疲弊しているのだ。

 

「さぁ、そろそろしまいにしようぜ!! お前らとの戦い、楽しかった!! 礼として苦しむ間も無く一撃で仕留めてやるよぉ!! ギガント一発!!」


 ドンドフの拳が再びドミノを襲う。そこでドミノが取った行動は……、


土瀏撃ランド・ストライクっ!!」


 盾を捨て、剣でドミノの拳を受ける事だった。


「ほう!! 敢えて守りを捨てたか!! 攻撃は最大の防御とはよく言ったもんだよなぁ!!」

「ぐぅ……!!」


 駄目だぁ……!! 押し返される……!! だから……!!


「リンゼェェェェェェェ!!」

「……」


 ドミノの咆哮にも似たその声に、名を呼ばれたリンゼは剣を構えた。


「ダメ、ダメ……ダメ……」

「あぁ……何だぁ?」


 ブツブツと「ダメ」と呟くリンゼに、ドンドフは訝し気な目を向ける。


 もしここで私が死んじゃったら、もうスーちゃんに会えない。そんなの有り得ない。あっちゃいけない。認められない。受け入れられない。受け止められない。受け入れられない。

 私はスーちゃんの元に帰る。スーちゃんだってそれを望んでる。

 ――絶対、生きてここから出る。


 ゾワリ……。


 っ!? 何だ、このオーラは……!!??


 あまりにも異質で不気味なソレに、思わずドンドフから冷や汗が生じる。そして彼の脳には明確な危険信号が発されていた。

 

 何だあの女!! さっきまでとは明らかに様子が違う……!!


 リンゼの力の原動力は、スパーダへの想いだ。彼女は彼のために強くなり続けた。

 ――そして、これからも強くなる。

 そこに理屈は無い。

 当然の話だ……『愛』は理屈ではないのだから。 

 

「くっ!!」

「おい、どこ行くんだよ? 土牢ランド・ロック!!」

「てめぇ!! らあぁ!!」


 地面と天井から生えた土の拘束具をドンドフは即座に力づくで解除する。しかし、『時間稼ぎ』はそれで充分であった。


 リンゼは剣を鞘に納め、その中で闇の魔力を籠める。ソレは凝縮し、濃縮され、無駄な魔力放出が一切無い。これは相当に緻密な魔力操作が必要であるのだが、リンゼはスパーダの元に帰るという固い決意から生じる集中力がそれを可能にした。

 そして、彼女は抜刀した。闇の居合切り、名を……。


「……闇黒一刀堕あんこくいっとうだ


 酷く、静かな口調で呟いた。


「が……ぁ!?」


 腕を振る速度、足を進める速度はこれまでの攻撃の中でも最高。加えて高難易度の魔力操作で闇の魔力を纏っている剣の威力は言わずもがな。

 これらが相乗効果を生み、二重の鎧を纏うドンドフの肉体を斬り裂いた。

 再び剣を鞘に納めた瞬間、ドンドフの背中から腹部に掛け、一気に血が噴出する。


「……ぐぅ、まぁだぁぁ!!」

「させっかよぉ!!」


 体に力を入れ、無理やり傷口を塞ごうとするドンドフに対し、ドミノは彼の傷口に更に攻撃を畳みかけた。


土刳頼ランド・グルーブル……」


 形成された太い土の槍は、腹部の傷口から彼を貫いた。


「て、んめぇ……!?」

「応急処置なんてさせねぇぞ……!! てめぇはここで、死ぬんだよォォォォォォ!!!」

「クゥソガァァァァァァァ」


 ドミノとドンドフの慟哭が室内に響き渡る。


「ドンドフ!!」

「おい、お前の相手はこっちだろう……?」

「っ!! 邪魔だぁ!!」


 エルの遠距離魔法とシェイズが斬り掛かったことにより、ムオーはドンドフの加勢に向かえない。


「オァォ……!! ガハァ……」


 叫びを上げていたドンドフの声は徐々に力の無いモノになっていき、そしてんだ。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

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☆は1~5まで、読者様が思うこの作品にふさわしい評価をぜひ気軽に残していってください!

◇◇◇

小話:

ドンドフとムオーはよくオセロで遊んでました。戦績は現状ムオーの百戦百勝です。



※新作投稿しました!! ぜひ読んでいただけると嬉しいです!!


魔力のムダとテイマーから契約解除&パーティーを追放された魔物の少年、実は最も希少種の【アンデッド】だった~戻って来いと言われても俺を拾ってくれた強くて最強美人テイマーに仕える環境が最高なんで無理!~

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