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第三十一話 『大オークション』二日目 その3

ぼちぼち色々更新再開していきます。

 ドンドフが叫んだ瞬間、シェイズ達五人は肌である事を感じた。

 それは結界が作動し、微かな周辺の空気の揺れと無機的な魔力圧を知覚したためである。


「ははっ、逃げられちゃあてめぇらを分断した意味がねぇからなぁ……!」

「ふん! こんなのすぐに壊して!!」

「そんなやわな結界を俺達が張ったと思うか?」

「……なるほど、どうやら面倒な条件が課せられているらしい」


 ムオーの言葉に、忌々しそうにシェイズは呟いた。

 魔具による結界の効果は、結界内で発生した音や物理的衝撃を結界外へ出さないというのが主だ。

 そんな中、結界はその強度を条件設定する事で上げる事が出来る。

 発動範囲、発動持続時間、結界に出入り可能な者の制限と言ったように、その条件には様々なものがあり、発動の際に課すその条件の難易度が高ければ高いほど、結界の強度は増すのだ。

 最も、結界を発動するための魔具が重い条件に耐えられず壊れてしまう可能性もある。そう言った事も考えてなければならない。

 

「結界の発動範囲は、恐らくこの部屋全体とかなり狭い。だがこの結界の俺たちを包み込んでいる圧……設定した条件はそれだけじゃないな?」

「ご名答。この結界には二つの条件を組み入れた。一つはお前が今言った通り結界の発動範囲、そしてもう一つは……俺たちそれぞれの寿命一年分を消費した」

「はぁ!? おいおい条件にそんなもん入れられんのか? 聞いた事ねぇぞ!!」


 信じられないと言った表情をするドミノ。


「あぁ、普通の魔具じゃ出来ない。これは団長がくれた特別製だ」

「団長……?」

「あ、やべ。まぁいいか……どうせ殺すしな」


 しまった、という表情をしたムオーはそう言ってすぐに切り替える。


 ――さて、どうするか。


 その最中、シェイズは状況の整理と打開策の模索を行っていた。


 敵は二人、両者共にかなりの手練れだ。だが、ここに敵が潜んでいた以上、他の所にも敵の手は及んでいると考えるべきだろう。恐らく、他の部屋にも【シジマ連合組合】の人間に化けた奴らがいるはずだ。

 とすれば、この部屋だけじゃない。この階層全体が危険。俺達のすべきことはこの部屋を脱出後、停留所の通路から地上へ戻ることだ。そしてその上で最優先すべきは、イルミ様の命。

 ……そのために、まずは。


「ドミノ、リンゼ。お前たちはデカい方を。エルとウーリャは俺ともう一人をやる」


 シェイズの言葉に、黙って首肯するメンバー達。


「はっ、話し合いは済んだかよ!! ……なら、もう構わねぇよなぁ!!」

「リンゼ!! 奴を止めるぞ!!」

「うん!!」


 一気にシェイズ達との距離を詰めるドンドフ。イルミに危険を晒さないために、ドミノとリンゼらも自ら距離を詰める事にした。


「オラァオラオラオラオラオラァ!!」

「ぐぅっ!! くっそなんてパワーだよ!!」


 重騎士のドミノはリンゼよりも前に出てドンドフの拳によるラッシュ攻撃を一心に土魔法によるコーティングと魔力で強化した盾で受ける。

 しかし、流石はドミノ。【ノーネーム】内最強の腕力を誇るドンドフの攻撃に、辛うじてだが耐えている。本来であればドンドフの攻撃の前に防御など為す術も無く潰れるが、これによってドンドフには隙が生まれた。


「っ!!」


 ドミノの後方から勢いよく跳躍するリンゼ。ドミノを飛び越え、彼女は剣を抜いた。


暗蘭喪祷あんらんそうじゅ!!」


 リンゼは闇の魔力を用いた得意の斬撃をドンドフの頭上へ食らわせる。しかし、


「……はっは!!」

「うぇっ!?」


 ドミノへのラッシュを中断したドンドフは頭上へ腕をクロスして構え、リンゼの攻撃を受け止めた。


 ま、まさか!! 身体強化の魔法で強化した腕だけで私の攻撃を防いだ……!?


「いぃい攻撃だなぁ!! だが、俺には届かねぇ!!」

「っ! きゃぁぁぁぁぁ!!」


 そのままリンゼの腕を掴んだドンドフを、彼女を投げ飛ばした。

 魔具による結界は、この部屋を媒介としている。すなわち、この部屋の強度は凄まじいものになっており、リンゼは壁に叩きつけられたが、壁自体が壊れることはなかった。


「てててて……」


 す、すごいパワー。咄嗟に身体強化で体を守らなかったら骨か内臓がやられてた……。

 

 立ち上がりながら、リンゼは対峙する敵の強さを実感する。



「エル!! 威力は抑えろ!! イルミ様に危険が及ぶ!!」

「分かってる」


 宗玉の杖(アグロバル・ワンド)を前に突き出し、エルは魔法を唱えた。放つのは、広範囲の魔法では無く、相手のみを狙い撃つためのもの。


一風刺し(サルト)


 非常に鋭利な風の槍が凄まじい速度でムオーに放たれる。


「早いな」


 が、そう呟きながらムオーは首を曲げ、それを避けた。そして、一気に距離を詰めてくる。


「エル、ウーリャ!! イルミ様を頼む!!」


 イルミの近くでの戦鬪に持ち込まれるのはマズい。そう判断したシェイズは駆け出し、ムオーとの距離を自ら詰める。


水ノ斬(みずのざん)!! はぁ!!」


 水の魔力を纏わせ、流麗な動作で敵をほふるシェイズお得意技。その剣先は、一心にムオーの首を狙っていた。


酸吐ゲネシス……うおぇ!!」

「っ!?」


 その時である。ムオーは口から嘔吐物を、シェイズの顔面に向かって放出した。

 

 何だ……? このタイミングで吐いた? いや、この状況で意味のないことをするはずがない!! ここは回避し、一旦体制を……!?


 刹那の思考の中、シェイズはあることに気が付いた。吐き出された嘔吐物、これを避けた場合、この被害を被るのは……後方にいるイルミたちだと。

 

 ……違う!! 最初からコイツは俺ではなく、俺がコレを回避することを見越したうえで、イルミ様たちを狙っている!! なら……!!


 シェイズは回避行動を中断する。そして、


「ふん!!」


 水ノ舞を敢えて空振りさせ、ムオーの嘔吐物をその剣技を以て受け流した。


「うへぇ……バレたか。 はは、まぁいい」

「なっ……」


 瞬間、シェイズは驚愕すべきモノを目にした。ムオーの嘔吐物に触れた剣が、溶けているのである。


 特殊型か……!!


 剣の柄を握り締め、シェイズはムオーを見る。


 強烈な酸性の嘔吐物を放出する魔法? いや、結論を出すのは早計だ。嘔吐物のみが酸性とは限らない。それにこれだけ強力な酸……向こうにも何かしらデメリットはあるのか……?


「はは、色々考えてるな。さぁ……俺たちを相手に、どうする?」

「……」


 気だるげに挑発するムオーに、シェイズは無言で構えを取った。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

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☆は1~5まで、読者様が思うこの作品にふさわしい評価をぜひ気軽に残していってください!

◇◇◇

小話:

ドンドフの好きな酒はヘビ酒です。



※新作投稿しました!! ぜひ読んでいただけると嬉しいです!!


魔力のムダとテイマーから契約解除&パーティーを追放された魔物の少年、実は最も希少種の【アンデッド】だった~戻って来いと言われても俺を拾ってくれた強くて最強美人テイマーに仕える環境が最高なんで無理!~

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