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第二十九話 『大オークション』二日目 その1

「ふぁぁ……」


『大オークション』二日目早朝、一人の男が『ブルーノ』に入るための検問を通過した。


「全く、一番近いのが私だからって……本当に人使いが荒いんだからもう」


 女のような言葉遣いと、百九十センチに差し掛かりそうな身長。褐色の肌、服と呼んでいいのか微妙な際どい恰好、更には頭が虹色のアフロヘア―と個性の塊どころか大渋滞を起こしているような男だった。

 そんな、彼の目的は『大オークション』ではなかった。


「ま、ユメラちゃんの予知は当たるから無駄足になることは無いと思うから別にいいけど……はぁ、面倒くさいなぁ。んー、もういいや! 考えるのはやめた!! とりあえず飲む! ここなら朝からやってる酒場もあるでしょ!」


 大きく伸びをして、男は少しだけ肌寒さを感じながら歩き出す。



『大オークション』二日目、夜。


 今日も今日とて、スパーダたちはドレスコードに身を包み、『スワロウズドリーム』に足を運んでいた。

 変わらぬ受付、変わらぬ会場、変化したと言えば席の位置くらいであろう。


「今日出品される奴になんか目ぼしい奴ってあるのか?」

「儂はこれが欲しいぞ!」


 出品リストを見ていたゼノが、それを俺に見せつけた。


「えーっと、何々…‥『圧倒的調理鍋』。何だこれ?」

「うむ! 何でもこの中に具材を入れると、たちまち美味な料理に変貌するらしい!」

「それって魔具なのか……?」


 名前からしても、なんというか魔法よりも科学寄りな気が……。つーか、これだけなんか年代モノじゃなくて最近の製造品に見えるぞ。

 

 疑問に思った俺は思わず、書いてあるそれに対し目を細める。


「というワケで小娘。儂はこれが欲しい! 競り落とせ!!」

「バカを言わないで残念幼女」


 にこやかに放たれたゼノの要求を、エリーザはピシャリと跳ね除けた。


「むぅ!! 仕方ない、ならばこの儂自らが競り落とぉす!」

「いやお前金無いだろ」

「は……っ!?」


 俺がそう指摘すると、ゼノは盲点だったと言わんばかりに目を見開いた。


「ちなみに今日のリストだったら私も欲しいやつあるよスーちゃん!」

「ん、どれだ?」

 

 落胆し肩を落とすゼノを無視するように、今度はリンゼが俺にリストを見せてくる。


「これこれ」

「えーっと……『圧倒的超絶媚薬』。うん、駄目だ。例えお前が金を持ってたとしてもこれだけは俺が死んでも阻止する」

「何でぇ!?」

「どう考えてもお前がこの薬を俺に使う未来が見えるからだよ!!」


 てかさっきも今回もなんで名前に『圧倒的』とか付いてんだよ!? ふざけてんのか!?


「『圧倒的超絶媚薬』……」

「……おいエリーザ、真剣に落札を検討しようとするな。お前が検討すると冗談じゃ済まねぇから!!」


 顎を手を当て真顔でリストを見詰めるエリーザに、俺はそう言わずにはいられなかった。



「皆さんお待たせいたしましたぁ!! それではこれより、『大オークション』二日目を執り行いたいと思います!!」


 第一会場に、昨日と同じ高らかな声が響き渡る。どうやら、司会の男は変わらないようだ。

 そして昨日あったティーチさんの始まりの言葉は無かった。


『大オークション』は昨日同様、滞りなく進む。金持ちたちが次々に手を挙げ、恐ろしい金額を口にして、品を落札していた。


「んー……」


 が、俺はここで近くに座っているイルミさんの様子が少しだけおかしいことに気付く。昨日とは違い、彼女の表情はどこか少しだけ、気難しそうであった。


「では次です! ゼニシ・クーパの卓越した職人技によって作られた『凱鍔かいがくの食器』!! 本作はSランクダンジョン、『嘆きの相剋』最深部のみで採取できる『クレーコルドの土』を用いており、その希少価値には拍車が掛かっております! 開始価格は六千から参りましょう!!」

「七千」


 そんなイルミさんは、手を挙げ落札する意を見せる。見れば、先程感じた気難しさは欠片も見えない。

 俺の勘違いだったのだろうか。


「……」

「ん、どうしたエリーザ?」

「……何でもないわ」


 何やら視線を感じる隣にいるエリーザに視線を向けるが、彼女は何てことないように息を吐き、椅子に深く腰掛ける。


 ――――気のせいか。

 

 会場に欲望の熱気が渦巻く中、俺は言いようのない何かを感じる。

 しかし、その「何か」が何なのか。具体的なことは何一つ分からない。


 そんな俺を他所に、『大オークション』二日目は滞ることなく進んでいった。



「じゃ、私たちまた取引部屋に行くから! じゃね!」

「待っててね、スーちゃん!」

「お、おぉ」


 俺は戸惑いながら答える。勿論、リンゼのせいではない。どこか心ここにあらずなイルミさんの言葉に対してだ。


「さぁさぁメシじゃメシ!!」


 ゼノの声で俺の中に流れていた僅かに神妙な空気が崩れ去る。


 まぁ……これ以上考えても仕方ないか。


 そう気を取り直し、俺たちは昨日と同じように『スワロウズドリーム』三階のレストランへと足を運んだ。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

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◇◇◇

小話:

サイカやバーガンディは会話に全く参加していないだけでスパーダたちと同じ場所にいます。ここ最近文中に全く登場していないので読者の方が忘れている気がしたので一応補足させていただきました! 多くの登場人物を上手く見せられない自分の技術不足です、申し訳ございません!

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