第十話 【ノーネーム】 前
「集合場所ってここだよな?」
「あぁ、フィオネの指示通りなら、ここで間違いない」
サシタとボルカノはフィオネという人物から指定された集合場所へと足を運んでいた。
廃棄物処理区画、『ブルーノ』で排出されたゴミは全てここに集約する。元は新たな新興街を作る予定だったが、地盤的な問題があったため計画は途中で頓挫。区画に建て並ぶ廃墟はその名残である。
二人が案内されたのはそんな廃墟の一つだった。
「久しぶりね」
「ヤァヤァ」
「何だ、まだ全員いないのかよ」
すると、サシタとボルカノが入って来たのとは別の入り口から三人の男女が現れた。
ドレッドヘアーで褐色の女、カンパネギア。
眼帯を付けた男、バーガー。
口元を布で覆い隠している男、ムオー。
彼らもまた、サシタとボルカノと同じく、この場に呼び出された者たちだ。
「集合時間にルーズなのはいつものことだろ。毎回誰かしら遅刻する」
「ハハッ、確かに」
サシタの指摘に、バーガーは笑う。
時間は既に零時を過ぎ、日付が変わっている。
「ん、来るぞ」
するとボルカノがボソリと呟いた。直後、廃墟上階のガラスを張っていない窓から勢いよく巨大な塊が転がり込んだ。
「ナイス着地、俺の運搬ご苦労、ドンドフ」
「ったくてめぇはよ。久々に会った奴をいきなり乗り物代わりにすんじゃねぇよ」
そう言って巨大な塊から降りる彼の名はチュルラ、ダウナーな雰囲気が特徴的な男。
そしてドンドフと呼ばれた球体だった巨大な塊は丸まっていた自身の身体を解放するように大きく広げ、人間態へと変貌を遂げた。その姿は人間では無く、亜人。強靭な肉体に薄紫色の体皮が特徴の彼は『オーガ』と呼ばれる種族である。
「やぁ皆久しぶり。元気してた? 誰か死んだ?」
「今ん所、死んだ奴はいねぇな」
仲間の顔ぶれが変わっていないことを確認しながら、サシタは言った。
「えー、つまんない。誰か死んで新しい顔が見たかったよ」
チュルラは酷く物騒な不満を漏らす。その時だ、冷淡な声が、薄暗い廃墟に響き渡る。
「静かにしなさい、あなたたち」
『……』
声の方向に全員は顔を向ける。彼らが目を向けるのは一階と二階を繋ぐ大きな階段。そこに、一人の女性が現れた。
「久しぶりね。フィオネ」
「お元気そうで何よりですカンパネギア。それに、他の面々も」
そう言ってフィオネは一階、自分よりも下に立っている彼らそれぞれに目をやる。次いで、彼女は階段の先、二階の奥にいる人物に声を掛けた。
「団長、全員揃っています」
「……そうか」
コツコツ、コツ……。ブーツが床を蹴る小気味良い音がフィオネたちのの耳に届き、「団長」と称した人物の接近を告げていた。
「久しぶりだな。お前ら」
「おぉっす! 団長!! 会いたかったぜぇ!」
ドンドフが彼の登場に歓喜の声を上げる。見れば、他の者たちも彼に対し、大なり小なり好意的な目線を向けている。
「誰も死んでいなくて、何よりだ」
「ヘヘッ、団長に見初められた俺たちが、早々死ぬワケがない……」
ムオーが笑い声を上げる。目元しか見えないが、布の下の表情は相当に下卑たものであることが容易に想像できる。
「そうか……。なら、早速始めるぞ。俺たち、【ノーネーム】の会合を」
団長と呼ばれた男……イタンシンはそう言い放ち、盗賊団【ノーネーム】のメンバーに拝聴する態勢を取らせた。
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小話:
【ノーネーム】は基本バラバラで必要な時に団長から呼び出されます。また、死んだらそのポストに入れ替わる形で新しいメンバーが加わります。