第5話 報われる時
「あー、ボスかぁ……」
「まぁ良いじゃない。またかっこいい装備出ると良いわねぇ」
「二人共もうちょっと緊張感を持って」
「そうだな、ディッカの言うとおりだ」
「そうね、ごめんねディッカ」
「まぁ、二人が慎重だったら逆に怖いから」
「ははっ、言ってくれる……」
「開けるよ……」
ディッカが部屋に飛び込み守りを固める。
一拍空けてリフ、メルカが部屋に入る。
土だらけのダンジョンから打って変わって、見事な装飾の大部屋。
「来るよ!」
天井から巨大な石の塊が降ってくる。
どーんと大きな音をたてて地面に激突する。
揺れる地面に3人はこのダンジョンに送り込まれた初めての出来事を思い出して、少しだけ嫌な気分になる。
「嫌なこと思い出させやがって……」
「ほんとにね……」
「ふぅ……ゴーレムか……」
石の塊が分解して、大きな人の形に変化する。
魔力によって動く疑似生命体、ゴーレム。
「固そうね……」
「一撃も重そうだ……」
「流石に僕でも正面からは受けたくないね」
言葉とは裏腹に、やってやるという意欲に溢れている。
すでにゴーレムとは戦闘経験がある。
以前はディッカの力によるゴリ押しで倒して、武器を壊した。
その後何度かの戦闘で戦い方を学んできた。
リフは緩急をつけながら攻撃を続け、敵の攻撃を引き受ける。
メルカはそのスピードを活かし、ゴーレムを構成する石の隙間に短剣を突きつけ魔力のつながりを破壊していく。
そして、ディッカが装甲の薄くなった部分を吹き飛ばす。
かけた部分はすぐに他の場所から石が動いて補填していくが、着実に装甲を剥いでいく。
「見えたね」
「ああ、あそこを重点的にやるわ」
「最期まで気を抜かないでね」
ゴーレムを構成するコアである魔石の輝きが隙間から見え始める。
敵の攻撃もなりふり構わずに強引になっていくが、それが逆に大きな隙きを作ることになる。
次から次へと装甲を剥がされ、魔石が顕になる。
「ディッカ!!」
リフが魔石の脇に剣を突き立てる。その剣をディッカが斧の背で叩きつける。
ポーンと魔石がゴーレムの身体から剥がし取られる。
魔石とゴーレムを繋ぐ魔力のつながりを、メルカが一刀のもとに断ち切る。
その瞬間、今まで生物のように動いていたゴーレムが、ただの石の集合体となりガラガラと崩れ落ちるのであった。
「お疲れー」
「スムーズに終わったね」
「見てみてリフ、この大きな魔石!!」
両手で抱えるほどの巨大な魔石を持ってメルカははしゃいでいる。
「メルカ、鎧が勝手に吸ってる吸ってる」
「ああ、ごめん。しまっておいて」
リフの持つ魔法の袋に魔石がシュルンと収納される。
これは前に戦った中ボスからのドロップ品だ。
空間魔法によって収納されたアイテムは別次元に保存され、時間軸の違いを利用して、ほぼ現状を維持して大量の物資の保存が可能になる。
今はリフとディッカが所有しており、貴重品はリフが保存している。
「みんな装備は問題ない?」
魔石で武器を修復しながらディッカが尋ねる。
魔石の魔力で魔装具を修理する。鍛冶師の熟練の経験が無ければ出来ないことを、生き残るために必要だったディッカは見事に身に着けていた。
「ああ、頼む」「私もー」
ストックの魔石を利用してあっという間に修理を完成させる。
リフは母から習った初級の魔法は全て使えるようになった。
メルカは自己強化系の魔法をいつの間にか使えるようになっていた。
そして、ディッカは土系の魔法と、魔道具や魔装具に関わる魔力を使う操作を身に着けていた。
「さーて、お宝は何かな-」
「楽しみね」
「一応気をつけてね、開けるよ?」
二人は黙って頷く、部屋の奥に現れた大きな扉をディッカは押し開ける。
すーっと滑るように扉が開き……
目の前に宝物庫のような部屋が現れた。
「な、なんだこれ……」
「す、すごーい!」
「と、とりあえず。お金とか宝石は僕が回収しちゃうね。
リフとメルカは道具や防具を集めといて」
「「りょうかーい」」
周囲に散らばるコインをドンドン収納していく。
宝石や装飾品も簡易的な鑑定をして芸術品はしまっていく。
「あ、メルカ、魔法袋あったよ」
「やったー!」
すぐに魔力を通して自分用にして腰につける。
こうすれば自分から使用権を放棄しなければ他人には使えない。
「うわ、ディッカ! これ中身入ってる!
凄い30万ピールだって!」
「もう一個魔法袋だ!」
「凄すぎない?」
「そうだね……まだ、本命が残ってる……」
周囲の宝よりも一段高い場所に、豪華な装飾を加えられた箱が鎮座している。
どう考えても、この部屋の中で一番高価な物に決まっている。
「ああ、リフこっちのほうが格上だ。
この短剣も格上、うわ、どうしよ……両手剣にしようかな……
ああ、鎧もこっちのほうが良いね」
ディッカは次々に鑑定しながら全員の装備を一番いいものに変えていく。
お古ではあるものの、高級品である装備品はリフの袋にしまっていく。
「さて、開けようか」
「さーて、何が出るかしら?」
「いくよ……」
宝箱を開く……
「ん?」
「え?」
「これ……?」
中には、小さな箱が入っていた。
「え、これだけ!?」
「武器も鎧もなし?」
「そうみたい……なんだろこれ……調べてみるね……ん? え、ほんとに!?」
「どうどう、凄いの?」
「なんかしょぼそうだよなー」
「やばい、やばいよこれ!!
どこでもセーフルームだ!!」
「はぁ?」
「どういうこと?」
「とにかく、使ってみよう!」
ディッカはボスの部屋へと走って行ってしまう。
二人は渋々ついていく。
ディッカは一人で興奮しながら、魔道具を空に掲げる。
「起動には、ほんの少しの魔力で良いんだ……いくよ?」
「はーい」「へいへい」
しょぼい宝にテンションの下がった二人の気のない返事、しかしディッカは気にすること無く魔道具を作動させる。
「コレが、この魔道具の正体だ!」
がらんどうとした部屋に、突如、家が現れた。
まるでその昔、絵本の中で見た王様の住むような真っ白な家が現れたのだった……
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