表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/21

はじめての討伐依頼(おつかい)

【名前】レガシィ

【種族】人族

【レベル】10


 七年間、努力し続けてきた結果を、ようやく見ることができた。

 レベル10……。

 高いのか? 低いのか?


「どうなんですか、このレベル」

「レベルは大事だが、肝心なところでビビっちまったらどうしようもねえ。気合入れろよ」


 なるほど、いいアドバイスだ。

 ……この歳でこのレベルで冒険者になる、ってのはどれくらい珍しいことなのか、そこを聞きたかったんだけどな。

 聞き返すのもなぁ……と思っていると、声をかけられた。


「あんた面白いニャー。アホすぎニャ。

 フェスのダチの、ヴァーニャ、ニャ。ヴァーニャニャ、じゃにゃいよ、ヴァーニャ。よろしくニャ」


【名前】ヴァーニャ

【種族】猫人

【レベル】9


 顔中体中毛だらけの【猫人】だ。

 耳が4つあるなんちゃって猫……ということもなく、頭に立派なネコ耳がついている。人間の耳のあたりは、毛が深くなっていて、よくわからない。

 身は軽装で、胸と鼠径部を隠す程度。

 これ、猫の毛がなけりゃそうとうエロティックな格好だよなあ。獣の血が混じっているから気にしないのか?

 ただ、身軽な猫です素早さで撹乱するにゃー、みたいなキャラがよく分かる。


 チンピラ亜人三人衆のもうひとりは、目立ちたがりではないようで。

 図体は三人のうちで一番大きいが、フェスさんの後ろに引っ込み顔を伏せている。


「……どうも、ノッグスです」


 フードを深めに被り、顔を伏せて隠しているが、俺の背は七歳児だ。むしろちょうど目が合った。

 猫人と同じく、体毛は濃い。ふさふさではなく、ごわごわ。

 ただ、フードの外からでも、耳の形が膨らんでいる。


「あー、こいつはお前と同じ見習いだ。熊人のノッグス。威張っていいぞ」

「え……あ、そ、う……」

「冗談だ。新入りにもレベル負けてるからな。も少し荷物持ち頑張ってくれ」

「あ、うん……」


 荷物持ちと言われて、ホッとしたように息をついている。

 この人、冒険者に向いてないんじゃないか……?


 なんの気無しに【ステータス】を見る。


【名前】ノッグス

【力】15

【賢】3

【防】20

【速】2

【装備】なし


「んな!」


 俺を拾った冒険者の一人と同じだ。

 【種族】【レベル】が???で見えず、【力】【賢】【防】【速】が見える。

 亜人は全員【種族】【レベル】しか見えない、というのは、間違いだったのか。


 慌てて俺は、受付嬢さんを見る。


【名前】マハーハ

【種族】人族

【レベル】6


 人でも見えるのは【種族】と【レベル】。

 ……なら、なんでノッグスさんだけ?

 二度街に来た時、見えるのはみんな【種族】と【レベル】だけだった。

 いったい、なぜ……。


「こいつは体はでけえが、肝がちっちぇえんだ。レベルも3しかねえ。新入り同士仲良くしろよ?」

「レベルが3? レベルって分かるんですか?」

「そりゃ、分かるもんだろ。むしろ分からねえくせに冒険者やろうとしてんのか? ……危なっかしすぎるだろ」


 フェスさんは、俺を心配そうに見る。

 俺には見えないノッグスさんの【レベル】も、フェスには分かるらしい。

 どうも、レベル差というのは、肌で感じることができるらしい。


 ……雨が降るのを空気の匂いで分かるようなものだろうか。

 都会っ子が雨の気配に気づかないように、日本育ちの俺にレベル差を感じ取るのは難しい。まあ【ステータス】があるから分かるんだけど。

 ……無くてもレベル差が分かるなんて、やっぱ俺の【ステータス】、死にスキルだよなあ。


「お前のレベルは10だからな。ノッグスよりは使えるだろ。……足引っ張んなよ?」


 そう言いながらフェスは、テーブルに置いた地図を手に取り、あるポイントを指す。

 町の外。


「最初はついてくるだけでいい。どういう手順か、流れつかめよ?」


 初依頼、開始だ。




 依頼は、ゴブリン退治だ。手が開いてる冒険者は任意でやってね、というギルドからの依頼だ。

 ゴブリンのレベルは2~3。ノッグスのために受けた依頼らしい。

 俺は三人の背を追って、町の外へ出た。


「これはまあ、誰でもできることだからな。ふたりとも頼むぜ」


 ふたりとは、僕とノッグスだ。

 フェスとヴァーニャは、ゴブリン退治なんか慣れっこらしく、こないだ食べた魔物の肉について談笑している。

 いっぽうノッグスは、ガチガチに緊張しており、木を見るごとにその影に怯え、風で揺れると、身をこわばらせている。

 ……絶対冒険者に向いていないよなあ。

 俺はといえば、めちゃくちゃテンションが上がっていた。

 なにせ、ゴブリン退治だ。ゴブリン。現代日本で遭遇することは、絶対にない。

 ゴブリンを倒してレベルアップ。魔石を剥いで一攫千金。

 まさに、冒険者の王道だ。

 その王道の一歩目を、今、着実に歩んでいる。

 テンションが上げるなって言う方が難しい。


「このあたりのはずだがな……」


 往来がある道を抜け、なにかの目印である石の小塔を目印に、小さな森の入り口に立った。

 これまで、魔物らしきものは、一匹も見ていない。


「魔物……いませんね。森の中ですか?」

「森には入るな、何がでるか分からんぞ」


 冒険者の先輩からすると、俺の提案はうかつすぎるようだ。

 まあ、手の入っていない森なんて、現代日本でも危ないしな。魔物が出るならなおさらだ。


「そもそも依頼はなんなんですか?」

「街外に畑を持つ人が、ゴブリンを見たんだと。ゴブリンは数が増えるだけで、レベルは上がらないから初心者向けなんだがな」


 低レベルで繁殖力が高い。うむ、それでこそゴブリンだ。


「でもあれでしょ? 増え過ぎたらゴブリン・リーダーとかゴブリン・ジェネラルに進化するんでしょ?」


 そいつらを倒してこそ、無双主人公だ。


「なんだそれ。ゴブリンはゴブリンだろ」


 数が多くなっても、ゴブリンを指示するものはいないようだ。増え過ぎたら四方八方に広がる。そして人の目に見つかったら退治されてしまう。

 なんかかわいそうな存在だな。


「もし群れのリーダーがいたとしても、せいぜいレベル5程度だろう。少なくとも、10を越えるゴブリンなんて聞いたことはないな」


 ゴブリンはどこまで言ってもゴブリンらしい。

 しかしフェスの言葉が間違っている可能性もある。油断せず行こう。


 とはいえフェスは油断なんかしていない。


「森の外をグルっと回って、いなけりゃいないで、そう報告しよう」

「それでいいんですか?」

「森から出るほどには増えてないんだ。まだいいだろ」


 ゴブリンは森に潜み繁殖し、増えすぎると四方八方に溢れ出る。

 溢れ出たゴブリンは農作物と動物を食べ尽くすという。弱いけれども数が多い。まるで蝗害だな。

 蝗害を未然に防ぐ……となると重大な依頼に思えてくる。


「結構大きな話なんですね」

「ん? まあそうかもな。つってもゴブリン退治だけどな」


 森の外周を回って、だいたい半分ほど回ったあたりで、突然、森の茂みが動いた。


「ひっ!」


 相変わらずノッグスさんはビビっている。

 フェスさんは軽々と足元の石を拾い、ぽいっと投げる。ゆっくりと弧をかいて、茂みに命中。


 きゃうん!


 茂みから聞こえたのは、とてもゴブリンの鳴き声とは思えなかった。

 横を見ると、フェスさんの顔が険しくなるのが分かった。


水狼ソリッドウルフだ。ノッグス、背に隠れてろよ。ヴァーニャ、レガシィ。後ろに逸らすなよ」

「アイアイニャー」

「よし……やるぞ!」


 気合を入れて、剣を引き抜く。

 見計らったように、毛が濡れたような毛並みの狼が飛び出してきた。


 馬は斬れなかったが……今度は斬る!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ