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はじめての街、はじめての冒険者ギルド、はじめてのチンピラ

 はじまりの町! いや街!

 人口は1万を越えているだろうか。

 低いながらもぐるっと塀に囲われ、城門を越えたあたりは外の平原とあまり変わらないが、歩むに連れぽつぽつと家が見え、さらには店も立ち並び、奥にはババーンと領主様のお屋敷がある。その奥には堅牢な砦の見張り塔が見える。

 この世界は貴族制で、領主はもちろん貴族様らしい。


 あ~いいな~貴族。貴族のみに伝えられる真実の歴史とか伝統の魔法があるんだろうな~。

 そもそも貴族しか魔力を持たないってパターンも考えられるよな……。

 ぜひとも今後の無双のためにも、なんとかして貴族様の実態を知らねば……。

 もっとも、異世界の貴族なんて9割がクズだけど(偏見)。




 馬車イベントはうまく行かなかったし、あれしかないか。

 前に母さんから話を聞いた、この街に必ずあるはずだ……。

 どこだ……どこだ……。


 お目当ての場所は、家や店が並ぶ中央ではなく、東の城門に近い側あった。

 確かに荒くれ者の集まりだろうし、中央ではないか。


 見上げるその建物は、いかにも古びて、けれども歴史を感じさせる貫禄があった。勝手に俺が感じているだけかもしれない。

 なにせ、異世界もので必ず目にする、憧れの場所だからな――。

 いざ!


「あのぉ~、冒険者ギルド……で、すよね……?」


 イメージの100倍情けない仕上がりになってしまった。

 両面開きの、西部劇のバーみたいな扉の向こうに、いかにもチンピラって感じの悪そうな三人がいた。三人とも亜人だ。

 チンピラ三人のリーダーらしき男は短剣を腰に何本も下げている。

 ――これは、間違いなくアレだ!

 チンピラリーダーは馬の亜人だ。体は男。顔が馬。


【名前】フェス

【種族】半馬人

【レベル】12


 例のごとく他の項目は???で見えない。

 馬にいい思い出がない。そして情けない俺を見下した視線。これは身長差によるものじゃない。絶対にアレだ!


「おい少年……こんなとこに来るほど金に困ってんのか? そうは見えねえが、興味本位ならやめとけよ?」


 ……親切だ。

 俺は二度とテンプレを信じないことにした。

 しかし興味本位ではない。100%本気だ。

 すぅー、大きく深呼吸。舐められてはいかん。

 異世界人として、主人公として。


「俺はレガシィ! 昨日七歳になった! SSSランクの冒険者を目指している! いや、なる! 必ずな! 俺の【チート能力】による無双は誰にも止められんぞ!」


 なお【チート能力】はうろ覚えの現代知識と、穴だらけのステータス。

 しかし絶対にやってやる。

 そのために、この世界に生まれたんだろうからな。


 俺の啖呵を聞いて、馬面は、気の毒そうな顔をした。

 表情の伝わりにくい馬の顔なのに分かるくらい、気の毒なんだな俺って。ちょっと涙。


 馬面は自分の頭を持って振るような動作をした。

 何度か母さんにもされたジェスチャーだ。

 その意味が、今日、明確に理解できた。


「頭おかしいんじゃねえか、お前」


 転生してきてるんだ、少しくらい外れているさ。

 頭を振る動作はおかしいの意味。

 学び!!! すなわち成長!!!


 チンピラ三亜人たちは、手に負えねえやアホらし、というように、彼らが元いた場所に戻った。彼らの席には簡易な地図があった。

 依頼の作戦会議でもしてたのだろう。

 見かけによらず真面目らしい。


 さて。気を取り直して受付に向かう。背伸びをしてカウンターに手をつく。

 さっきの俺の口上を聞いていただろうに、侮りも子供扱いもせず、真剣な顔つきをしている。プロだな~。


「というわけで冒険者登録をしたいのですが」

「では説明します。長くなりますので、椅子を用意してもかまいません」

「そのままでいい」

「そうですか、ではまず――」


 わくわくを押さえきれない俺に、受付嬢さんは無情な一言を告げた。


「冒険者登録というのはありません。もちろんランクづけることもありません」

「なん……だと?」


 SSSランク冒険者になる目標が、一瞬で砕けてしまった。


「危ない依頼を受ける基準がないと、どうやって、えっと、困りません?」

「ええ。基準はちゃんとありますよ。――フェスくん、来てもらえますか?」


 受付嬢さんはさっきのチンピラリーダーを呼び出した。

 不承不承、と言った感じだ。


「さっき絡んでいたから分かるよね?」

「……まァな」

「どのくらい?」

「俺の1つか2つ下だ。――別に見栄張ってるわけじゃねーぞ」

「うん。私の見立ても同じ。一応、安全のため2個下で見るね。ありがと」


 見立て? 2個下?

 俺が七歳だから馬面さんは2つ上で九歳ってことか?

 いやあ、若くても十五歳くらいに見えるが……。亜人だから見た目年齢と違うのか? しかし年齢が冒険者になんの関係がある?


「もしかして、年齢制限……とかですか?」

「違うよ」


 受付嬢さんはさらさらと書きつけた板を、俺に向ける。


【名前】レガシィ

【種族】人族

【レベル】10


「あなたのレベルは10。これが依頼の基準ね」


 ステータス。

 【ステータス】無双は、転生者の俺だけの特権じゃなかったのか……。


 しっかし、当たり前だけど、俺にもレベルがあったんだな。

 自分の【ステータス】は見れなかったからな。

 それにしても10か。七歳児にしては高いんじゃないか?


「とはいえ世間知らずに見えるあなたを、一人にさせるわけには行きません」

「冒険者の心得なら知ってる――」

「自分のレベルも知らない人を、どうやって信用しろと?」


 ぐうの音もでない。

 自分の力量レベルも知らないってのは、まあ、重要なことだよな。

 しかし一人ではダメってったってなあ……。

 この世界には友達もいないし、そもそも知り合いすらいない。

 ……あれ、もしかして俺、ぼっちなのか? 転生前よりぼっちってどういうことや。チーレムどころかより孤独が深まってるじゃねえか。


「……またか?」

 馬面さんは鼻を鳴らした。馬の生温かい鼻息を、もろ顔に浴びた。

「断るんですか?」

「いや、やるさ」

「よろしくお願いしますね」


 なにか二人の間で話が進んでいる。


「えーっと、どゆこと?」

「しばらく預かってやるって言ってんだよ、レガシィ」

 ぽんと俺の頭に手が置かれる。

 ――ひとつ疑問がある。

 ――レベルは力量だ。他の人がレベルを推し量るのは分かる。

 ――しかし名前は違う。

 ――どうして二人は俺の名前を知っているんだ?

 ――【ステータス】で数値を見るのは、俺だけのチート能力じゃないのか?

「あの、なんで俺の名前を……?」

「さっきあれだけアホな名乗りやってただろうが! SSSランク目指すレガシィってよ!」


 馬面――フェスさんは俺の頭に置いた手を、ぐわんぐわん振った。

 頭を振るのは、頭がおかしいの意味。

 確かに、夢の冒険者ギルドにやってきて、ちょっとおかしくなってたようだ。反省反省。

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