れがしぃは さらまんだを おぼえた!
一時間の瞑想後。
胸の炎はちっとも変化していなかった。動いてもいない。こころなしか、小さくなっている気はするが。消えちゃうんじゃなかろうな。
母さんはいなくなっていた。別れの言葉のかけ方が、あんまり言ってほしくなかったから、よかった。お互い泣いてしまえば、一緒にいようなんて言ったかもしれない。
それじゃあ、あまり具合がよくない。
異世界チートするのはあくまでも俺だ。母さんはあくまで目標。乗り越える壁。それは、七年前からずっと変わらない。
……とはいえ、この炎を操るアドバイスは欲しかったな。
まさかここまで、なんの手応えもないとは思わなかった。
「ふーむ」
胸の炎を触ってみる。熱い。が耐えられないほどではない。
この炎を胸に入れる。火が心臓をめぐる。エネルギーになる。大魔力。うおおお!! 大発火! 炎の魔術師!! インフェルノ・テンペスト!!!
これぞ無双! 異世界無双だ!!
薄目を開ける。胸の炎はピクリともしていない。
ま、まあまだ初日だから……。
魔法はイメージが大事なんじゃないのか?
それとも俺のイメージが稚拙すぎるのか?
俺の2つの乳首をつまむ。それが取っ手になっている。胸が開き、心臓が見える。空いたスペースに炎を押し込め、胸を閉じる。乳首をひねればロック完了だ。
薄目を開ける。胸の炎はピクリともしていない。
ファンタジーとリアリティの両面で文句ないイメージのはずなのに……。
夜が更ける。
せっかく冒険者になったのに、胸の光りが邪魔で、服も着れない。
いやいや邪魔とか言っちゃあいけないな。なんと言ってもこれは魔法。念願の魔法だ。【現代知識】と【ステータス】と【魔法】。これで文句を言っちゃあバチが当たる。なにせ【現代知識】はここではぜんぜん役立たないし、【ステータス】は虫食いだらけ。一番成長の目があるのが【魔法】だ。
……?
そうだ、この炎を【ステータス】で見れるかどうか試してなかったな。
「鑑定!」
言わなくても見ることはできるが、つい、興が乗ってしまった。
そして、開いた口がふさがらなかった。
【名前】分体の2・沙羅曼陀
【種族】精霊
【レベル】129
例に漏れず、【名前】【種族】【レベル】しか分からなかった。
しかし、この情報は大きい。
「お前、魔法じゃなくって、精霊だったのか……」
俺が魔法を使いたがるたび、母さんが微妙な顔をしていたのが、いまさら分かった。
母さんから分けられた炎は、魔法じゃあなかったんだ。
魔法じゃない。精霊術だ。
精霊を行使するには……命令か?
「沙羅曼陀、体の中に入れ」
すると炎は、いともたやすく胸の内に入った。
お、俺の今日の苦労はいったい……。
「切り替え切り替え。メンタルリセット!」
馬鹿な真似してないで、と茶々を入れる人はもういない。
ただ、これでようやく冒険に出られる。冒険者らしく。
夜の森は寒く、俺は二度くしゃみをした。
人のいない、やけに静かな小屋に入る。ここで寝泊まりするのも今日で最後だ。
「寒ぃ~。沙羅曼陀、出てきて」
するりと炎が出てきて、暖かい。こりゃ便利だ。
一日が空回りしたけど、これは便利だ。
チートアイテムその1。精霊沙羅曼陀ゲットだぜ。




