表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/21

僕らが旅に出る理由

「君たち向けの依頼は、ありませんね」


 受付嬢のマハーハさんが、平坦の口調で言う。

 働き口がない。

 つまり無職。

 こないだの廃坑ゴブリンで、一帯から雑魚モンスターは一掃されたらしい。

 もちろん、小さな群れはいくつかあるかもしれないが……。


 水狼は6~10レベル。ノッグスはもちろん、ヴァーニャさんも少し危険を伴う。

 冒険者が危険を恐れてどうする――だが自分はともかく仲間は怪我してほしくはない。

 ゴブリンと水狼の間くらいのモンスターが大量生産されていないものか……。


「4~6レベルくらいに手頃なモンスターはいないんですか? 虫とか」

「虫というと女王殺しの蜂キラー・クイーン・ビーがいるな。30レベル越えだ」

 30。そりゃまた遠いな。

 もちろん俺にとっては通過点にすぎないが。

「この街で敵はいないとなると、他の街に行くんですか?」


 敵はいない、というと、無双感が出てくる。

 実際は、敵を選んでみたところ自分らが楽勝できる「敵はいない」、なのだが。


 フェスさんは目を閉じうむむと唸っている。

 ヴァーニャさんは口笛を吹いて右左・右右・左右、とステップを踏んでいる。

 ノッグスは服をにぎにぎしている。


「まぁ、しばらく街を出るしかねえか」


 そうだ、冒険者なんだから、街の外へ、旅に出ないと始まらない。

 はじめての街の周りで雑魚狩りをしてレベルをあげるだけじゃあ、冒険者とは言えない。


「どこに行くんですか? 王都? 聖都? 学園都市? 魔女の森?」

「どこでもいい。あ、いや――」

 フェスさんは思いついたかのように――実際に、単なる思いつきなのだろうが――呟いた。

「世界樹を見に――アーシュラカンに行くか」


 世界樹!

 やっぱあるんだよなあ世界樹は! 世界にひとつだけの世界樹!


 俄然テンションがあがってきた。

 というわけで今日は一日準備にあてて、旅立つ運びになった。

 食料の用意やらなになら考えてみると、どうにも懐が心もとない。


 異世界ファンタジーで主人公がよその街に行く時、どうしてたっけ……。

 ギルドに行って王命だなんだでどっかに派遣されて商人に――、


「あっ!」


 思わず声が出てしまう。

 そうだ、街の外へ出るのは新しいイベントのタイミング!


「護衛! 護衛依頼やりましょうよ!」


 護衛はなかなかいいチャンス。

 現代料理を披露して商人から莫大な富を貰ったり、

 貴族に目をつけられ剣客に召し上げられたり、

 襲撃者を返り討ちにして裏社会と対峙するチャンスだ。


 素敵イベントがなくても、日銭は稼げるだろう。

 ……いやゴブリン退治と同じでちょうどいい依頼がないかも知れんな。

 期待はしすぎるな。


 このとき俺は想像を膨らませたりしぼめたり、それで頭がいっぱいで、三人の視線にまるで気付かなかった。

 レベルが絶対の世界で、護衛の仕事?

 妄想を膨らませる俺は、少しの想像力もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ