異世界の最強は
ゴブリンは人型の魔物だ。
耳よりはマシだけれど、角の剥ぎ取りもグロい。
角の根本は血管が繋がっていて、切ると、どろっと血が流れる。
……ゴブリンの血が青いのがせめてもの救いだ。人間じゃないと分かるから。
ひーひー言いながら角を取っていると、フェスさんが苦笑する。
「おいおい、そんなキレイに取らんでいい」
「汚いと減点とかありませんか?」
「別に。向こうも数かぞえて捨てるだけだしな。角の先だけ落としゃ十分よ」
そう言いながら見せてきたのは、小さな小さな角の欠片だった。指の第一関節ほどもない。
これなら小石とか混ぜてもばれなそうだな……。
しかし、ゴブリン2体で銅1枚。つまり角4つで銅1枚。大した額ではない。
不正してまで稼ぐ必要もないのだろう。ローリスク・ハイリターンがすぎる。
さきっぽだけならラクラクだ。次々袋に入れる。
角は手触りでは硬いが、剣で斬ると、するっと落とせる。手応えを感じないほど。
剥ぎ取りに関しても、レベル差というのは作用しているのかもしれない。
「じゃ次行くぞー」
坑道にはゴブリンしかでなかった。どのゴブリンもレベルは高くて4。
今日だけで100近いゴブリンを倒して、ノッグスもゴブリン退治には慣れたようだ。最初みたいに息を切らすこともなくなった。
「ノッグス、今度をやってみろ」
フェスさんが指示したのは、レベル4のゴブリン。
一方ノッグスのステータスも上がっている。すでにレベルアップしているのだろう。同じレベル4同士……。
格下に勝ち、格上には負ける。それがルールなこの世界で、どっちに転ぶか分からないのが、同レベル対決だ。
ただ、そんな緊張感もなく、ノッグスの一撃は簡単にゴブリンを吹き飛ばした。即死だろう。
ノッグスのステータスが、まさに今、上昇した。
レベルアップだ。
【名前】ノッグス
【力】28
【賢】3
【防】31
【速】2
「いまレベルあがった?」
「ああ、同格同士だからな。一番レベルが上がりやすい。これで5だ。もうゴブリンには遅れはとらんだろ」
一日でレベル2アップ。なかなかの成長速度だ。
「……つっても、同格のわりに余裕そうだったな。ノッグス、相手はどう感じた?」
「え、あ、今までと同じ。顔が怖いなって……」
コメントはおどおどしてるけれど、結果は一撃の圧勝。
熊としての野生が目覚めたのかも知れない。物理全力だしな。
フェスさんの言う通り、もうゴブリンには負けないだろう。ゴブリンキラーを名乗ってもいいくらいだ。
「相手のレベルを把握するのはまだっぽいな。レガシィ、お前よくレベルアップに気付いたな」
【ステータス】で見えてますからね! チート能力なので!
みんな自然にできるみたいですけど!
ノッグスがレベルアップして、これまでのような誘い出し作戦が必要なくなり、坑道を歩むペースは格段に速くなった。
坑道の途中、日の光りが入ってくる地点があった。
外へ出て確認してみると、なにか爆弾でも落ちたかのようだ
母さんの沙羅曼陀の爆発と同じくらいの大きさだ。
「ゴブリンはここから鉱山に入ったのか」
「これなにがあったんですか?」
「さあ。ドラゴンかもな。最近の痕じゃあないな」
ドラゴン!
この世界にもドラゴンはいるのか。
「やっぱりドラゴン殺しは男のロマンですよね」
「あほ抜かせ。ドラゴンのレベルは知ってるか?」
ひと息おく。
「はかり知れない、だ」
なるほど。
レベル至上主義のこの世界で、最強の存在。
どの物語でもドラゴンは最強に近い。
しかし竜殺しの物語はいくらでもある。
俺も物語の主人公になってやる。
――ドラゴン絶対倒す。
脳内の異世界無双スケジュールにインプット完了だ。
Do it!




