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12/21

赤くなり 息を切らして 倒れ込む

 目が覚める。見知らぬ天井。

 ゆっくりと身を起こしながら、昨日のことを振り返る。


 家を出て、馬車に轢かれて、冒険者ギルドに行って、チンピラに絡まれたと思ったらいいやつで、依頼を随伴キャリーしてもらって、初めて魔物と戦って、初めて解体して、初めてBBQなんかしたりして、依頼で得た金で宿に泊まって。


 初日ってことで店主さんがごちそう作ってくれたんだ。軟骨のある野菜……あれは驚いた。しかもうまい。

 ヒゲモジャで偏屈なタイプかと思ったけれど、優しかったな。

 フェスさんが、飯をおまけしてくれってゴネて、笑って流していた。大盛りにしてやるから勘弁しろってさ。


 相部屋になったノッグスさん。前の激安宿は本当にキツかったらしく、何度も感謝された。

 ……その割に相部屋提案を即答じゃなかったのが気になるけど。


 宿の中庭で素振り千回と魔法の瞑想をして――そのまま寝ちゃったんだ。

 ってあれ、てことは誰かが外から部屋に運んできたのかな。


「おはよう」


 穏やかな声音だ。


「おはようさん……。昨日、もしかして外で寝てた?」

「あはは、そうだよ。帰ってこないからびっくりしたよ」


 そう言ってクスクス笑う。

 ノッグスさんは熊の亜人だ。

 こっちの世界の熊は知らないけれど、丸い耳があって、少しふくよかで、背が高い。体が分厚い。


 【ステータス】で見れたらいいんだけどな……。


 ノッグスさんは、【種族】と【レベル】が見えないタイプだ。なぜかは分からない。ただ、レベル自体はあるらしい。レベル3。ゴブリンとどっこいどっこい、負けかねんレベルだ。


「瞑想してたらつい寝ちゃって……」

「なにしてるんだろうって思ったら、寝てたからね、驚いたよ」


 寝るまで訓練だなんて凄いね、と褒められてしまった。素直に嬉しい。

 ただ、こういうときに言う台詞は決まってる。


「大したことじゃない」


 努力しても謙虚。それこそがチートを引き立てる。


「今日もやるけど……ノッグスさんもやる?」

「そう……だね。うん、やってみるよ。けど、ひとついいかな?」


 思いがけない好感触に、少し驚く。もっと消極的なのかと思ってた。


「その、ノッグスさん、って、あの、いいよ、呼び捨てで……」


 修行も付き合う。呼び捨てを認める。

 一日冒険して仲間パーティになったからだろうか。ずいぶん心を開いている気がする。

 この調子で、冒険者としての才能も開けるといいんだけど……。


「分かったよノッグス。それじゃ、まずは素振り千回だ!」

「うん……ってええっ千回!?」


 素振りといえば1セット1000回、当然だ!







【名前】ノッグス

【力】15

【賢】3

【防】20

【速】2

【装備】なし


 素振り千回を終え、へとへとに倒れ込んだノッグスの【ステータス】を見る。

 昨日と特に変わってはいない。

 うーん、鍛え方が間違っているのか?

 とはいえ俺のレベルが10なのは、たぶん素振りで体を鍛えていたからだろうし……。

 ただ、まあ、【レベル】は置いといて。大事なのはこのステータスのバランスだ。

 【力】【防】が高く【賢】【速】が低い。

 どう見ても前線で体を張る戦士タイプだ。

 大きく力強い、それが熊だ。

 しかしノッグス本人が、前に出る勇気があるのか……。


「はァ……はっ、はっ、は、う、ん……、あー、はー……」


 顔を赤らめて息を切らせるノッグス。

 本当に戦士になることができるだろうか?




 ノッグス育成計画と頭ん中で練り上げていると、パーティのあと二人が現れた。

 半馬人のフェス、猫人のヴァーニャ。



「あっはっはっ! ノッグス死んでるにゃん!」

「レガシィ~、お前マジで容赦ないのな」


 倒れているノッグスと、俺を見比べて、こらえきれないように笑う。


「魔物も倒したことねぇガキがなんでレベル10かって……ようやく分かったよ。やっぱり常識ねえんだなあ」

「魔物以外でレベル上げる方法ってないのか?」

「魔物に勝つか、自分に勝つか、それくらいだ。自分をいじめて強くなるなんて……俺には無理だな」

「にゃはは! じゃあ私がいじめてもいいかにゃ?」

「あほ」


 なんだ、トレーニングでレベルアップって方法も周知されてるのか。

 ただ、素振りが最適なトレーニング方法かは不明、といったところか。

 効率的に鍛える、というなら筋トレの方がいいのかもしれないな……。


「それで、練習は終わったか? それなら今度は実戦と行こうぜ」


 昨日の内に、依頼を選んでいたらしい。内容はゴブリン退治。

 報酬は2体で銅1枚。めちゃくちゃ安い。

 が、これが俺とノッグスのための親切なのはよく分かっている。


 さて、ゴブリンでいくつレベルがあがるか。それとも上がらないのか……。


「おいレガシィ。せっかく宿取ったんだ、鞄は軽くしとけよ。角でいっぱいになるくらいじゃねえと、またうまい飯食えねえぞ」


 ゴブリンの数は角で数える。

 耳じゃなくてよかった~。ゴブリンの耳でいっぱいのリュック、さすがにグロすぎるからな。

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