Lv1. 復活、拠点
目が覚めた。
まず、目についたものは高い天井だった。
生きている?
あの時力が抜けて、死んだと思ったのに。
「目が覚めましたか?」
隣にいかにもシスターという格好をした女性が座っていた。
特徴としては銀髪で目が細い、はっきり言ってめちゃくちゃ優しそうで美人だ。
年齢は俺より年上で20台前半だろうか。
シスターを眺めるのもいいが、まずは状況確認だろう。
周りを見ると、木の椅子に像が見える。
像は、転生したときに会った女神様そっくりだ。
どこからどうみてもここは教会だろう。
「俺は、死んだと思ったんですが、なぜ教会に……」
「ええ、勇者様。ここはクランクの町の教会です。
災難に遭われたようですね。どうか体を休めてください
今の拠点はどちらでしょうか」
拠点?拠点とは何だろう。
神様を信仰しているなら、神様からの派遣者である勇者の味方だろう。
今のうちにいろいろ聞いてみておこう。
「いま勇者としてこちらに来たばかりで、よくわかっていないです。」
「あら、それは失礼しました。召喚魔法の失敗でしょうかね。」
「いや、魔法適正?を図っている途中で……」
遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「勇者様ー!無事ですかー!」
これはクラウの声だろう。
どうやら召喚された場所と、教会は同じ町にあるようだ。
いろいろ問いただすとしよう。
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クラウの登場に驚いたのはシスターだった。
「クラウ卿!あなたが召喚魔法に失敗したのですか!」
「いや、召喚魔法は成功したが、
ちょっと手違いというか、事故があってな。
それより、勇者様本当に申し訳ありません。」
「俺に何があったのかわかりませんが、
まずは、なぜ俺が教会にいるのか教えてほしいです。」
「そうですね。勇者様には神からのご加護があります。
一つは、復活の奇跡。死亡しても教会で復活することができます。
もう一つは、成長の奇跡。この世界の住民より、レベルの成長が早いです。」
ある程度、察しはついていたがやはり、そうだったか。
「つまり、俺は死に、加護のおかげで生き返ったわけですか。」
「そうです。本当に申し訳ありません。」
俺ががっかりしていると、ブラウが思い出したように語りだした。
「勇者様の拠点を用意しなければならないですね。
拠点とは、荷物を置いたり、家になります。基本的には教会に併設されています。
拠点はここの教会がよろしいかと。」
ここでシスターが話をさえぎってきた割り込んできた。
「ここを拠点にするのはあまりお勧めできません。
付近の魔物はレベルが低く、勇者様には不相応の相手しかいないためです。
レベルを図ってもよろしいですか?勇者様に相応しい町へ推薦状を書きましょう。」
グダグダ説明するよりレベルを図ってもらうのがてっとり早い。
そんな目をクラウが俺に向けていた。
俺はもうどうにでもなれ、という気持ちで手を差し伸べた。
シスターは俺の手を握り、ブツブツ唱えながら紙に筆を走らせ始めた。
クラウが後ろから小声でささやきかけてきた。
「実は教会のシスターのほうが、レベルを図る精度は高いです。
理由は、神により近いためです。もしかしたら、レベル1は間違いかもしれませんよ。」
シスターが筆をおき、書かれた文章を確認し、いきなり大声を上げた。
「レベル1?!」
シスターは何度も紙を確認した。
ブラウが残念そうな顔をしながら、しゃべり始めた。
「どうやら、間違いはなさそうですな」
「……レベル1に一番相応な町は、ここクランクの町です。
今から、部屋の準備をしてきますね。
名乗り忘れていましたが、私はネモフィラといいます。
以後、よろしくお願いします。」
呆然としながら出ていくネモフィラを見送り、ブラウと別れた。
ブラウとネモフィラとはこれから長い付き合いになりそうだ。