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80話 長いようで短かかったけどやっぱり長かったかもしれない!

 

 「始め!」

 

 ファイヤさんの合図で僕とユウの勝負が始まる。

 ユウがこちらに向かって走り出す。

 これは予想通り。

 まだ距離があるのでスキルを使う。

 「《森の目覚め・攻》《森の目覚め》《植物操作》」

 《森の目覚め・攻》でユウの気を散らせて、《森の目覚め》と《植物操作》で本命の攻撃をする作戦だ。

 「こんな攻撃俺には聞かねえんだよ!」

 思った通り《森の目覚め・攻》の自動攻撃は単純に標的に向かって攻撃をし続けるだけなので難なく防がれる。

 でも本命の攻撃も動き出している。

 ユウの真後ろ、死角になっている場所からユウを狙う。

 よし!

 とった!

 ユウの真後ろにある根を一気に伸ばして一撃で決めにかかる。

 「《五感強化》」

 ユウがスキル名を唱えるとさっきまで気づいてもいなかった根を切る。

 「あぶねー。」

 《五感強化》か。

 スキル名通り自分の五感を強化するスキルなんだろう。

 しまったなー。

 スキルのおかげでユウは今360度全ての攻撃に対応できることになるよな。 

 死角を突いても意味ないじゃないか。

 とりあえず今は手数を増やすか。

 「《森の目覚め・攻》」

 ここら一帯をユウのことを自動攻撃する森に作り替える。

 普通の人なら対応できないはずだけど、どうだ?

 うん……。

 反応しますよね。

 なんとなく予想してました。

 そういう男ですよ君は。

 避けられそうなものは避けて、ダメそうなものは切り落としている。

 でも、こちらに向かう足は完全に止まっている。

 「おい!ズルだろ!」

 「何がズルなの?それよりも《五感強化》なんてスキルを隠していたユウの方がズルだと思うけどな。敵プレイヤーに囲まれてるときピンチなのに使ってなっ方よね、そのスキル。」

 「そりゃあタフータを倒すためにずっと隠していたからな。お前のその手数の多い攻撃を防ぎきるためにはこのスキルが必要だから交換してもらったんだよ。」

 「交換?」

 「ああ、タッグマッチトーナメント2位はスキルか称号と武具一つだったからな。《剣聖》の称号と交換してもらった。《剣聖》の称号を受け取らなかったら《剣聖のつるぎ》っていう剣をあげるわけにはいかないって言われて没収されたけどな。」

 この子おバカだ!

 確かに《五感強化》も強いと思うけど絶対《剣聖》の方がいいでしょ!

 「バカだね……。」

 「バカっていうな!それに俺がなるのは剣聖じゃなくて勇者だしな!」

 「そういえばそんな設定もあったなー。」

 「設定っていうな!本気と書いてマジと読むくらい本気だ。」

 意味が分からないよ、それ……。

 こんな気の抜けたやり取りをしているけど割と本気でユウを倒そうとしてるんだけどな。

 それも、本気と書いてマジと読むくらい本気で。

 僕も使ってみたけどやっぱり意味わかんないなこれ……。

 とにかく今は《五感強化》の効果が切れるのを待つしかないか。

 「その《五感強化》って効果時間どれくらいなの?」

 「聞いて驚け、30……って誰が言うか!」

 本人は隠せたつもりかもしれないけどほとんど言ってるからね。

 30分か。

 『宝探しゲーム』が終了するまでは効果が切れないな。

 ユウが疲れ果てて力尽きるのを待つか?

 ダメですね。

 だって見て下さいよ。

 あんなに目を輝かせちゃって。

 あれなら30分どころか3時間でも動き続けていそうですもん。

 僕が行ってもいいけど剣の実力差がありすぎて下手すると一刀両断されちゃうからなー。

 しばらくは様子を見ますか。


 ーー20分後ーー


 「おい!いい加減にしろよ!このまま終わっちまうぞ!それでいいのか!?フータはそれで満足なのか!?」

 ユウが何か言っているが今は気にしない。

 それよりもユウが段々慣れてきて余裕ができ始めていることが気がかりだ。

 このままだと確実に僕の元へとたどり着く。

 残り5分。

 勝つために最善を尽くさなければ。

 まずは状況把握。

 《森の目覚め》は限界まで展開している。

 ユウに焦りはあるものの疲れた様子はない。

 焦っていても僕の攻撃をすべて捌いていることからその焦りを利用して隙を作ることは不可能に見える。

 そして僕とユウがまともに対峙したら純粋な剣の腕の勝負になるので僕は勝てない。

 

 そしてその時が来る。

 ユウの足が僕に向かって段々と動き出す。

 《森の目覚め》を限界まで展開しているので木が密集していて逃げるスペースがない。

 ユウが近づいてくる。

 じりじりと僕との距離を詰めてくる。

 その時だった。

 「《身体強化》」

 ユウが一段階加速した。

 ユウが剣の届く距離まで一気に詰めてきた。

 まずい。

 もう一つスキルを隠していやがった。

 「《植物操作》」

 僕はとっさに《植物操作》を使い自分の体を弾き飛ばしてユウの攻撃を回避する。

 「クッソー!避けられたか!」

 危なかった。

 さっきまで自分がいた位置にユウの剣がが振り下ろされている。

 しかし、これで終わりではない。

 《森の目覚め・攻》の自動攻撃は《身体強化》を使ったユウの前では無意味になった。

 「《解除》」

 一旦《森の目覚め・攻》を解除する。

 「《森の目覚め》《植物操作》」

 《森の目覚め・攻》と同じ規模で展開する。

 そして全てを僕が操る。

 ひそかに練習はしていたが正直これはすごく疲れるのでやりたくなかった。

 だけどここが正念場だ!

 残り数分持たせて見せる!

 自動攻撃では単調な攻撃でも僕の思考が入ることによって複雑な攻撃となる。

 とにかく躱しづらい、防ぎづらい攻撃をし続ける。

 かすりはするものの致命傷を与える事が出来ない。 

 たまに剣が届く位置まで来るのでその時は剣で応戦して距離を取る。

 隙を探す。

 ユウが何か致命的な失敗をしないか、その失敗を見過ごさないために感覚を研ぎ澄ませる。

 

 今だ!

 普段なら気になんてしないけど今この瞬間だけは致命的な隙だ。

 ユウはよそ見をしている。

 ほんの一瞬だけど僕はそれを見逃さず握る剣に力を込めてユウとの距離を詰める。

 僕が距離を詰めるとユウは二ッと笑った。

 まさか……!

 「わざとだよ!俺のことよく見てくれてありがとな!」

 ユウの剣が僕に迫る。

 このままだと切られる!

 でもまだだ!

 僕には奥の手が残っている!

 「《樹木兵》!」

 強烈な光とともに可愛い木の子供が召喚される。

 あらかじめ目を閉じていた僕は光の影響を受けることは無かった。

 ユウは光の影響を受けてはいたが《五感強化》のおかげで視覚がなくても周囲の状況が分かるようだ。

 でも僕に迫っていたユウの剣は召喚した《樹木兵》に当たった。

 《樹木兵》は僕の代わりに切られてキューと鳴きながら倒れた。

 《樹木兵》のおかげで僕が攻撃する時間が出来た。

 この時間逃してはならない!

 僕の剣はユウの首を狙う。

 ユウもすぐに切り返して再び僕の首に剣が迫る

 ほぼ同時、ユウの剣が僕の首に当たり、僕の剣がユウの首に当たる。


 『しゅーりょー!宝探しゲームは終わりだぞー!みんなーお疲れ様ー♪ここからは転送されるまで一切攻撃が出来なくなるかおとなしくしてるんだぞ♡』

 

 自分の首を確認する。

 良かったちゃんと繋がってるよ。

 ユウの首も良くはないがちゃんと繋がっている。

 勝負は引き分けみたいだ。

 「おーい!おまえらー!いい戦いだったぞー!」

 「久々に胸が熱くなりましたな。」

 「俺も戦いてー!」

 「強くならねば……。」

 いつの間にか僕たちの周りに人が集まっていた。

 ユウとの戦いに集中し過ぎて全然気が付かなかった。

 「今回は引き分けだったけど次は負けないからな!」

 「望むところだ!」

 僕とユウは固い握手をした。

 周りからは盛大な拍手をもらって転送が開始された。

 

 転送先は『グラーシ』の街の中心だった。

 ふー、疲れたけど楽しかったな。

 

 『宝探しゲーム』終了。

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