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74話 油断大敵!

 走る!

 走る!

 行先は決まってないけど今はとにかく走る!

 何か私達走って逃げてばっかりじゃない?

 遺跡の時もスケルトンに追われた時も。

 あ、スケルトンは私だけか。

 「レイク伏せろ!」

 べリアちゃんの声でとっさに伏せるとすぐ頭上を弓矢が通り過ぎる。

 危なかったー!

 「ありがとうべリアちゃん!」

 「バカッ!ぼーっとすんな!集中しろ!」

 「ごめんなさい!」

 怒られてしまった。

 そうだよね。

 今私が死んだら抱えてるあんこちゃんとゆきちゃんも危ないもんね。

 つまり私の命は3人分!

 気を付けなくては……。

 

 逃げ続けてもう30分くらいになるけどこの人たちはいつまで追ってくるんだろう?

 私、割ともう限界なんだけど……。

 隣で走っているべリアちゃんも息が切れてしんどそうだ。

 そんなことを考えていたからだろうか、さっきべリアちゃんに怒られたばかりだというのに私は足元の変化に気が付く事が出来なかった。

 私の足元に魔法陣が浮かび上がり光っていたのだ。

 「危ない!」

 私はべリアちゃんに突き飛ばされる。

 べリアちゃんは私を庇い魔法陣の中に入ってしまった。

 次の瞬間魔法陣が強く光り爆発が起こった。

 「べリアちゃん!」

 「うぅ……。」

 爆発に巻き込まれたがかろうじて生きているようだ。

 私も爆発の影響なのか疲労なのか満足に動く事が出来ない。

 「ギャハハ!きれいに引っ掛かりやがったぜ!」

 下品な笑い声とともに木の陰から人が出てくる。

 数は10人位だ。

 「チッ!なんだ女かよ。俺はあの忌々しいおこぼれ王子を殺したかったいんだ。赤い点が丁度俺らの方に向かってくるから罠魔法を張ったのに無駄になっちまった。弓聖と『炎の王国』のギルドマスターを味方につけたからって調子に乗りやがって!絶対殺してやる!」

 「こいつ等はどうすんだ?」

 「あ?赤点表示されてたってことは一応上位5人の誰かなんだろ?じゃあ殺しておけよ。」

 「お!?やったぜ!ならこの女から殺すかなー?」

 さっき下品に笑っていた男がべリアちゃんの赤い髪を掴み持ち上げる。

 「やめて!ポイントが欲しいなら私を殺せばいいはず!だから他の子たちは見逃して!」

 「お?そうなのか?じゃあーーーお前を殺すのは最後だな!」

 男がニターっと笑みを作りながら言う。

 「何で……?」

 「だってその方が楽しいだろ?それにこの女だって爆発に巻き込まれて苦しそうじゃねえか。それを楽視させてあげる俺!ちょーーーやさしーい!そうは思わない?」

 「狂ってる……。」

 「どうでもいい。さっさとしろ。俺たちはまだおこぼれ王子を探さなくてはならない。」

 「はいはい。冷たいねー。別に直接おこぼれ王子にやられたわけじゃないじゃん俺達。ただ黒竜討伐前におこぼれ王子をバカにして弓聖とファイヤにやられただけじゃん。そんなに恨んだらおこぼれ王子もかわいそうだよー。」

 「うるさいな!その元凶になったおこぼれ王子が俺は許せないんだよ!大した力も持ってないくせに!」 

 「おー、怖い怖い。これ以上怒らせる前にさっさと殺しちゃおーっと。そんなわけで、ヒヒッ、死んでくれよ。」

 男は私の方を見てまたニターっと笑みを作ると剣を振り下ろす。

 「やめてー!」

 私は必死に叫んだ。

 

 ガキンッ!

 

 「お!?正義の味方の登場ですかー?」

 「いいや、正義の味方なんかじゃないけどお前のこと見てたら胸糞悪くてつい。」

 誰かがべリアちゃんを守ってくれた?

 あれはーーーキッカーさん!?

 とにかく今は残る力を擦り絞ってべリアちゃんをあの男から離さなければならない!

 私は歯を食いしばりべリアちゃんの元へ駆け寄りべリアちゃんを抱き上げて離れる。

 離れはしたが結局あまり離れる事が出来ず近くでキッカーさんを見守る。

 「おいおい、お前のせいで獲物が逃げちまったじゃねえか。」

 「それは良かった。あいつのポイントをもらうのは俺だからな。」

 「ならPポイントもってる女はやるから俺の楽しみを邪魔しないでくれよー。」

 「それはできないな。」

 「そうして?お互いメリットしかないと思うけどなー。」

 「どうしてかって?それはお前が気持ち悪いからだよ!」

 キッカーさんの声には明らかに怒りの感情が混ざっている。

 そしてキッカーさんの声をきっかけに戦闘が始まった。

 キッカーさんだけ先行してきたのかキッカーさんの味方はいない。

 そてに対する敵の人数は10人だ。

 「おい、お前らも行け。」

 相当フータに怒りを覚えていた敵リーダーらしき男が指示を出すとリーダー以外が動き出す。

 まだキッカーさんと下品な男の1対1ならまだ勝ち目があったかもしれないが9対1で勝てるわけがない。

 キッカーさんもある程度強いことは知っているけど多対一で勝てるほど強くないことも分かる。

 思った通り9対1になった瞬間から戦いではなく一方的なリンチ状態だった。

 キッカーさんのHPはみるみる減っていきあっという間にゼロになってしまった。

 「キッカーさん!」

 「すまねえな。守ってやれなくて。」

 そう言うとキッカーさんは消えてしまった。

 「余計な邪魔もいなくなったところでここからが本番だぜ!」

 「やだ。こっちに来ないで!」

 「おいおい、そんなに拒絶するなよ。傷ついて泣いちゃうだろ?」

 キッカーさんが倒されたことで頼る者が何もなくなった私の心は折れてしまっていた。

 べリアちゃんもあんこちゃんもゆきちゃんも気絶しているのか起きる気配はない。

 「助けて……。」

 「そんなにほいほいと助けが来られても困るぜ。」

 絶対に来ないと分かっているけどつい助けを求めてしまった。

 「助けてよ!フータ!」

 

 「《植物操作》!」

 

 

 

 

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