71話 意味深な間は人を不安にさせる!
戦いが始まって思うことは一つだ。
多い!
とにかく人が多すぎるよ!
行くよって意気込んでみたもののこの人数相手に勝てる未来が見えないよ!
「この人数じゃ不利ね。お姉ちゃんあれをやるわ!」
あれって何!?
もしかしてゆきちゃん何か秘策的なものがある!?
「あれをやるの!?でもあれをやったらゆきが……。」
ゆきちゃんが何!?
あんこちゃん最後まで言ってよ!
「構わないわ……。それでこの状況が打開できるなら!」
ゆきちゃん何をするの!?
何でそんな覚悟を決めたような顔してるの!?
もしかしてーーー使ったら反動で死んじゃうみたいな捨て身の技とかじゃないよね?
でも、あの覚悟の決まった顔……。
それ相応の技に違いない!
そんな技を使わせたらダメだ!
いくらゲームのキャラクターとはいえ、死んでも復活するとはいえ死んでほしくない!
今すぐにゆきちゃんを止めないと!
「ゆきちゃん、使ったらダメ!」「《キラーラビット化》!」
私が止めるのと同時にゆきちゃんが《キラーラビット化》という名前からして危なそうなスキルを使ってしまった。
《キラーラビット化》を使ったゆきちゃんは今まで黒かった目が赤くなっている。
止めることができなかった……。
でもまだどんな反動があるのか分かってない!
私がゆきちゃんを守ればいい話だ!
《キラーラビット化》、そのスキルにどんな反動があろうとも私がゆきちゃんを守って見せる!
さあ見せなさい、その反動を!
「おい、お前ら何ちんたらしてんだ!亀じゃねえんだからきびきび走りやがれ!まあ、のろまのお前らが来る前に俺様が全員殺してやるがな!ヒャハハハハハ!」
これは何?
ゆきちゃんの口が急に悪くなたっよ?
一人称もさっきまで私がったのに今は俺様になってるんだけど!?
どういうこと?
私は説明を求めるようにあんこちゃんの方を見る。
「《キラーラビット化》はステータスを一時的に5倍にするというスキルなんですよ。でもその反動でステータスが5倍になっている間は性格が悪くなってしまうんです。」
「性格が、悪くなる?」
「はい。性格が悪くなります。」
「もう!勘違いさせないでよ!」
「勘違いですか……?」
心配して損したよ!
「あんこちゃんもゆきちゃんも会話の最後に意味深な間を作るから使ったら最後、物凄い反動があるのかと思ったよ!」
「そういう意味ですか。すみません、勘違いさせてしまって。でもあの状態のゆきは人様に見せられませんし……。それに本人も《キラーラビット化》した状態をあまり好いてはいませんから……。」
「そっか……。好きじゃないことまでゆきちゃんにさせちゃったんだから私たちも頑張らないとね!」
「はい!」
「その通りだ!ゆきが頑張ってるんだからあたいも頑張るぜ!《種族強化・悪魔》」
べリアちゃんがスキル名を唱えるとべリアちゃんの角が少し大きくなり赤色の目の色が濃くなり少し光を帯びる。
目の赤色が濃くなってる!
まさかべリアちゃんもゆきちゃんみたいに!?
私は心配そうな顔でべリアちゃんを見る。
「あたいのスキルは何の反動もないから安心しろよな……。」
べリアちゃんは私が何を考えてるのか察して呆れた声で答えてくれた。
うん、よかったよかった。
《キラーラビット化》したゆきちゃんと《種族強化・悪魔》をしたべリアちゃんの強さは凄かった。
ゆきちゃんは目にも止まらない速さで敵の急所を攻撃して一撃で倒している。
べリアちゃんは防御とか関係なしに拳で全てを破壊している。
あんこちゃんも《巨大化》を使って体当たりで応戦している。
私も頑張りたいところだがそもそもステータスが低い私がゆきちゃんやべリアちゃんのように一撃で倒すことはできないので敵の攻撃をよけつつ地道にダメージを与えている。
そこで気が付いたことがある。
人を殴るのも悪くない!
最近気づいたことだけどどうやら私は物を殴ったときの感触がとてつもなく好きだ。
もちろん現実世界で人を殴ったら犯罪になるので絶対にしないけどここはゲームの世界。
しかも敵は私たちを殺しに来ている。
こんなお楽しみのボーナスタイム逃すことはできない!
私はいっそう感覚を研ぎ澄ませて敵の攻撃を躱し的確に防具のない場所にカウンターを入れていく。
ああ……良い!
最高だよ!
もっと!
剣を振りきって開いたわき腹を狙う。
もっと!
拙い双剣使いの疎かになっている足を狙う。
もっと!
ハンマーを振り上げた大男の鳩尾を狙う。
もっと!
よそ見をしている剣士の顔面を狙う。
もっと!
体を鎧で覆っている男の顔面を狙う。
もっと!
詠唱中の魔法使いの顔面を狙う。
もっと!
攻撃してきた格闘家の顔面を狙う。
もっと!
槍を使い距離をとりながら攻撃してきた男の顔面を狙う。
もっと!
棍棒を振り回している野蛮そうな男の顔面を狙う。
もっと!
あんこちゃんの体当たりで吹き飛ばされた男の顔面を狙う。
もっと!
指揮に専念していたキッカーさんの顔面を狙う。
もっと!
怯えて逃げ出そうとしている男の顔面を狙う。
もっと!
瀕死の弓使いの顔面を狙う。
『レベルが上がりました』
『称号《暴力姫》を獲得しました』
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