6話 いきなりスキルをもらってもお金は取られない!
スライムを追っていたらいつの間にか森の中にいた。
しかもあれだけ追いかけたスライムはいなくなってしまった。
スライムはいなくなるし、夢中で追いかけていたので自分が今どこにいるのか分からない。
ここはどこだ?
自分の位置を知るために、マップを開いて確認してみると、どうやらここは『巨大樹の森』という場所らしい。
確かに目の前にはとてつもなく大きな木が生えている。
幹は他の木の10倍ほど太く、高さも他の木とは比べようもないほどだ。
おそらくこの森の名前の由来はこの木なのだろう。
この木以外にでかい木は無くどれも一般的な大きさの木の森だ。
さてと平原に戻りますか。
ここにいてもやることないし。
「待たれよ」
え!?
誰?
いきなり話しかけないでよ!
びっくりするから!
僕は振り返って後ろを見る。
誰もいない……。
え?
おかしいな。
右だったかな?
右を見ても誰もいない。
僕は自分の周りをぐるりと見渡す。
しかし、周りを見ても誰もいない。
そっか!
空耳だ!
それじゃないとおかしいもんね!
誰もいないのに話しかけられるなんて。
さあ、帰ろ帰ろ。
「目の前じゃ」
やっぱり声するよ!
でも、目の前か。
本人が言うんだし目の前にいるはず……。
って誰もいないいじゃん!
「あのー、悪ふざけはよして出てきてほしいのですが……」
「ちゃんとおるぞ。お主の目の前に」
いくら見ても目の前にはでかい木しかない。
「僕の目の前にはバカでかい木しかないよ!」
「そうじゃ。その木じゃ。」
「何を言ってるんですか!木が喋るわけないでしょ!」
「お主、ここはゲームの中じゃぞ……」
あ……。
そうだった。
そうだよね。
ゲームの中なら木が喋っても不思議じゃないよね。
「ゴホンッ」
恥ずかしいので咳払いでごまかした。
「それで、僕に何のようですか?」
「わしはもう老い先短いからの、誰かにわしの力を譲渡しようと思っていた時にお主が現れたのじゃ。お主ラッキーじゃったな。わしの残り少ない力を余すところなくお主にやろう。ほれ」
《称号『森の王』を獲得しました。》
《称号『森の王』を獲得したことにより、スキル『森の目覚めLV.10』『植物操作LV.10』『ドレインLV.10』を獲得しました。》
フータ LV.1 お金0G
HP 100
MP 100
STR 5 +3
INT 5
AGI 5
VIT 5
MND 5
DEX 5
ステータスポイント0
《称号》 『森の王』
《スキル》『森の目覚めLV.10』『植物操作LV.10』『ドレインLV.10』
なになに!?
超展開すぎてついていけないんだけど!
『森の王』ってなに?
いつの間に僕は王様になったの?
もしかしてこれはお金を払わないといけないやつ!?
どうしよう……。
今、一文無しなんだけど。
「ご、ごめんなさい。今、お金持ってないです」
「何を言っておるのだお主は」
「え?だってこれ、お金取られるやつですよね?」
「別に取らんけど……」
「じゃあ何が望みなんですか?」
「なにもいらんぞ。さっきも言ったがわしは老い先短いんじゃ。力を誰かに渡そうかなーと思っておった時にたまたまお主が通りかかったから、こやつでいいかと思って渡したまでじゃ」
「たまたまってことです?」
「たまたまじゃ」
「僕じゃないといけない理由とかなかったんですか?」
「そんなものはない!」
無いのか……。
少しくらいあってもいいじゃないか!
ちょっと期待しちゃった僕の気持ちを返してよ!
もう今日は立ち直れないよ?
いいの?
ここで落ち込んだまま動かないよ?
「そんなに落ち込むでない。もう一つプレゼントをやるから」
「ほんとですか!」
「立ち直り早いな!まぁよいか。出てこい」
老人の木がそう言うと森の中から2匹のウサギが出てきた。
1匹は真っ白で、もう1匹は真っ黒なウサギだった。




