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214話 失礼なことを言うと修行が辛くなる!

 パレットの衝撃事実の発覚の夜、約束通り僕達は『城下のダンジョン・2階層』に集まった。

「ちゃんと今日も集まったみたいだね。関心かんしん」

 ネルは僕達の前でうんうんと首を縦に振っている。

「今日もゾンビ?」

「今日もゾンビと戦ってもらうよ。でも、昨日と同じだったら意味ないよね。今日は君達に地獄を見てもらう予定だから」

「……」

 僕達は嬉々として話すネルを見て絶句する。

 昨日以上に辛い修行。

 ネルは地獄を見せると言った。

「反論も無いみたいだし、早速始めようか。よーい、スター……」

「ちょっと待って!」

「何だい? せっかく人が気持ちよくスタートを切ろうとしていたのに。僕のスタートコールを邪魔した理由がしょうもなかったら殺すよ?」

「ゾンビと戦う理由を教えてほしい。ゾンビと戦っていても正直強くなってる気がしない。レベルはいくつか上がるけど、それだけだ。てっきり技術的な事を教えてもらえると思ってた」

「そっか。確かに君達とゾンビを戦わせてる理由を話していなかったね。理由は簡単だよ。まだ君達は僕が直接何かを教えるレベルに至っていないからだ。土台ができていない人に教えることは何も無い。まずは君達自身のレベルとスキルのレベルを上げてもらう。次に今持っている武器以外の武器も使えるようになってもらう。そう言うことでアオ、君は今日からこれを使え。君は既に弓をスキル上は極めている」

 そう言ってネルはアオに鉄の剣を投げ渡す。

「アオには今日から《上剣術LV.10》を獲得するまでその剣で戦ってもらう。フータは《上剣術》と《上植物操作術》を、レイクは《上拳術》を、パレットは《上魔法術》をそれぞれレベル10にしたらアオ同様に次のステップに進んでもらう。僕が認めるレベルに達するまでは永遠とゾンビと戦ってもらう予定だから覚悟しておいて」

 しっかりとした理由があったようだ。

「てっきり私達に嫌がらせをするためだけにゾンビと戦わせてるのかと思ったよー。ちゃんとした理由があったんだね」

「僕がそんなことをするように見えるのかい?」

 むしろ、そんなことをするようにしか見えない。

「何か言いたげな顔だねフータ」

「い、いや何も」

「まあ、いいや。失礼なフータがいるから今日は昨日の2倍の数にしようかと思っていたけど、3倍にしよう。それじゃあ、スタート!」

 スタートコールと共にネルが指を鳴らす。

「ちょっと3倍って!」

「地獄ですね」

「みんなごめん」

「師匠は悪くないです。皆思っていたことですから」

「そうか。皆そんな失礼なことを考えていたのか。明日の内容にしっかり反映させないとな」

「アオさん、ふざけないでください」

「そうだよ! これ以上は本当に無理だよ!」

「じゃあ、レイクとパレットは同じことを思わなかったのか?」

 アオの言葉に2人は目を逸らした。

「本当君達って……」

 その様子を見たネルは呆れていた。

「もう、さっきの発言は冗談にしておいてあげるから集中しな。今の君達では3倍の数は昨日と比較にならないくらい厳しい戦いになるよ」

 ネルの言う通りだと思う。

 昨日と比較にならないくらいのうめき声が僕達に迫って来ていて、数の多さから地鳴りまでしている。

 加えて、今日はアオが使い慣れてない剣を使っている。

 アオの事だからすぐに剣にも慣れると思うけど、それまでは僕達3人でこの場を持ち堪えなくてはいけない。

 しかし、僕達はアオに1歩遅れを取っている。

 レイクとパレットもそのことを考えていたなら今日は連携どうこうの話ではなくなってくる。

 これは集中しないといけないな。

 僕は全力で《森の目覚め・攻》のフィールドを展開する。

「フータさんずるいです。一人でどれだけのゾンビを横取りする気ですか」

 パレットはそう言うと熊を量産し始める。

「私からしたら2人ともずるいよ! 私もたくさん倒すからね!」

 レイクは1人でゾンビの群れに突っ込んで行ってしまった。

 やはり2人とも自分がよりレベルアップできるように単独行動を取り始めた。

 まあ、一番に単独行動を始めたのは僕だけどね。

「お、おい! 俺はどうしたら……」

 それぞれが好き勝手な行動をしたせいでアオが孤立してしまっている。

「僕が《植物操作》でフォローするから、アオは剣に慣れる事だけ考えて」

「すみません。ありがとうございます」

 アオは剣を構える。

 始めてなのに剣を持っている姿が妙に様になっているのはきっと気のせいだ。

 というか気のせいであってほしい。

 レイクが突っ込んで行った所とパレットが熊の大群を向かわせた場所のゾンビがいなくなっている。

 修行2日目が始まったみたいだった。

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