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208話 遂に決着?

 僕は念のため、この一帯にいる街の人を《植物操作》を使い、なるべく遠く離れた場所に置いていく。

 それと同時に男の子にばれないようにゆっくりと木の根を時計塔の下に集める。

 1本だけ木の根を時計塔の裏側に待機させる。

 この木の根はちょっとした仕掛け付きだ。

 街の人を全員遠くにやったことを確認して、僕は屋根の上で戦っているレイクと男の子を見る。

 レイクのパンチはあってはいないが、レイクも男の子のナイフを避け続けている。

 時折アオとルナ、パレットとシーナに放たれる魔法を僕が防いで、アオとルナの矢、パレットの魔法も男の子には当たっていない。

 戦いは拮抗していた。

「何だかつまらないなー。銀色の熊の弱点も見やぶちゃったから、もう銀色は使わずに赤色の鳥ばっかり来るし。もっと何かないの? 奇策みたいなのがさ」

 男の子はレイクの攻撃を避けながら、けだるそうに話し始める。

 仕掛けるなら今か。

 僕はここでも気づかれないように木の根を上に伸ばしていく。

「随分と気合を入れてきたみたいだけど何も変わらないね。フータ君は大口を叩いてくれたけど本当に僕を倒す気があるのかな? さっきから仲間のサポートばっかり。やけにいい顔をしていたからほんの少しだけ期待したけど、やっぱり君はダメみたいだ。僕としては1撃位は貰ってあげる覚悟でいたのになー。あー、残念、残念」

 僕は木の根を男の子の真下で止めて絶好の機会が訪れるまで待機させる。

 まだだ。もう少し待て。

 僕は自分に言い聞かせ、機会が訪れるのを待つ。

「これだけ言われてるのに何もしないなんて本当にがっかりだよ。そんなフータ君はもういっぺん死んでもらわないとね」

 男の子の声のトーンが変わった。

 これから僕を本気で殺しに来るだろう。

 僕が狙うのはその一瞬。

 男の子が僕を狙い屋根から飛び降りる瞬間だ。

 男の子はナイフを振りレイクを牽制すると僕を見た。

 集中だ。

 男の子の足が時計塔の屋根から離れる。

 今だ!

 僕は壁から木の根を出し、空中にいる男の子に向かわせる。

「なに!?」

 男の子は僕の木の根を見て驚いた顔をする。

 しかし、驚いた顔をした後、すぐににやけ顔になる。

「何てね。僕が気づいていなとでも思ったのかな? よく我慢したと思うけど、初めからバレバレだったよ」

 男の子はそう言って、木の根に向かって杖を振ろうとする。

「そうはさせないよ」

 そうはさせないとレイクが屋根から飛び降りている。

 レイクは男の子の右手に狙い、拳を振るう。

「《暴力姫・解放》」

 レイクの拳が男の子の右手に当たり、凄まじい音が響くと男の子は杖とレイクが地面に落ちる。

「クソッ!」

 悪態を吐く男の子は僕の木の根に掴まっている。

「《ドレイン》」

 僕は木の根を通じて男の子のHPを吸い取る。

「僕を捕まえてHPを吸い尽くす気かな?」

 なおも余裕そうな声で男の子は言う。

「そんなつもりはないよ。後1撃で決めさせてもらう」

 《ドレイン》は保険だ。

 少しでもHPを減らしておきたいと思っての行動だ。

 本命はこっち!

「アオ!」

 僕はアオに呼びかける。

「はい! 《天の一矢》」

 アオがスキル名を唱えると空が雲で覆われる。

 雲の隙間から光が差し込みアオを照らした。

 そしてアオが弓を引くと光の矢がどんどん大きくなる。

「それは当たるとちょっとシャレにならない気がするよ?」

 ここでようやく男の子の顔色が変わる。

 でも、僕は知っている。

 男の子がまだ本気で焦っていない事を。

 さっきから左手で持ったナイフで僕の木を隠れて切っていることを。

 だから僕は隠しておいたもう1本の木の根を準備する。

 アオと男の子の延長線上に配置した。

「行きます!」

 アオが弓の弦を放すと光の矢が男の子目掛けて飛んでいく。

 それと同時に男の子が拘束を解いた。

「いくら強力な攻撃でも避ければどうってことないよね」

 宣言通り男の子はアオの光の矢を躱した。

 脅威が過ぎ去り男の子の表情がやわらぐ。

 そこで僕は勝利を確信した。

 僕は隠していた木の根を微調整する。

 その木の先端にはパレットに描いてもらった銀色の小さいカエルが付いている。

 光の矢は男の子に躱され、銀色のカエルに反射した。

 そして男の子を射貫く。

「……どうして?」

 男の子が自分のお腹を見て驚愕している。

 男の子のお腹は大穴が開いていた。

 

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