196話 真剣白刃取り!
2階層への扉がある部屋は扉が一つあり隠し通路を通らなくても辿り着けそうだ。
シーナが僕を殺そうと追いかけてくるのでゆっくり見ている時間は無いけど、あのままスイッチを押さずに探索を続けていたら見つけることが出来たのかな。
「待てぇぇぇぇぇぇ!」
僕は階段を下りて逃げる。
階段を下りると1階層の物置部屋のような部屋があり、セーブポイントがあった。
僕は急いでセーブをして、シーナを待ち構える。
シーナはすぐそこまで来ている。
剣を装備している暇は無い。
こうなったら受け止めるしかない!
僕は両手を頭の上に構える。
手のひらに全神経を集中させる。
シーナが上段に剣を構え、僕の頭目掛けて振り下ろす。
真剣白刃取り!
僕はシーナの剣を受け止める。
「大人しく死んでください!」
「嫌だよ!」
この状況を僕ではどうもできないので、僕はシーナの剣を抑えたまま、レイク達が来るのを待つ。
やがて階段を下り音が聞こえてくる。
「……フータ、何やってるの?」
レイクが白刃取り状態の僕達を見て言う。
「見てないで助けて!」
とにかく今はレイクとルナに助けを求める。
「原因は私みたいだし、貸し一つでどう?」
原因は私って言ってるのに貸しにするの!?
「貸し1つでも2つでもいいから、シーナをどうにかして!」
「やったー! じゃあ貸し3つね!」
「1つ増えてる!? まあ、いいや。3つでお願いします……」
僕がお願いするとレイクはシーナに近づく。
レイクはシーナの頭を3回撫でる。
するとシーナは剣から手を放し、おっとりとした表情になる。
「これで完了!」
レイクはあっさりと僕の窮地を救ってくれた。
「……ありがとう」
この一件でかなり疲れた。
シーナが元に戻るまで僕は休ませてもらおう。
僕はセーブポイントに背を預けて座る。
ルナがシーナを叱るのを僕は遠目から見て、このダンジョンの事を考える。
1階層の難易度は洞窟のダンジョンと比べて、あのマネキンがいるので明らかに高い。
洞窟のダンジョンの2階層はモンスターハウスだった。
5匹の光るモンスターを探し出して鍵を造るというもので、1対1体のモンスターが弱かったので苦労することは無かった。
城下のダンジョンでも2階層はモンスターハウスになるのか、それとも全く別の物なのか……。
どんなだろうと洞窟のダンジョンよりも難易度が高いのは確実。
またマネキンみたいなモンスターが出てくるかもしれないし、今一度気を引き締めよう。
「フータさん、ごめんなさい。ちょっと我を失ってました」
ダンジョンの事を考えていた僕にシーナが謝りに来る。
「次回から気を付けてくれればいいよ」
傷ついたわけではないので僕は笑ってシーナを許す。
そんな僕を見てシーナも笑顔になる。
「それは約束できません」
うん。
いい笑顔だ。
「どうしても?」
「はい。どうしてもです」
僕のレイクに対する気持ちを抑えないといけない理由が増えた。
「さて、そろそろ行こうか」
しばらく休んで僕達は部屋の扉を開ける。
「眩しっ!」
僕達の目に強烈な光が入ってくる。
扉の先は外に繋がっていた。
「オトガルシアの街?」
外は今日僕達が買い物をしていたオトガルシアの街そのもの。
「クリアしたって言うこと?」
「これでクリア?」
シーナとルナも街を見て首を傾げている。
でも、朝見ていたオトガルシアとどうも様子が違う。
明確には分からないけど、違和感がある。
「どうなっているんだ?」
いきなり現れたオトガルシアの街に僕達は戸惑うばかりだった。
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