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194話 思いのほか早い再開!

 足が止まった僕達は2体のマネキンに挟まれる。

 この部屋に扉は2つしかなく、どちらもマネキンの背後だ。

 逃げ道は無い。

 僕達は互いの背中を預け、僕は四足歩行のマネキンと、レイクはガラス片を持ったマネキンと向かい合う。

 アイちゃんの説明ではこのマネキンたちは倒すことが出来ないらしい。

 ならば捕えて動きを止めるしかない。

「《森の目覚め・吸》」

 僕は四足歩行のマネキンを捕えるためにこの部屋いっぱいに森を展開して木の根を伸ばす。

 レイクはガラス片を持ったマネキンと戦闘になり、大きなガラス片をすれすれで躱している。

 僕の伸ばした木の根は四足歩行のマネキンを捕える。

 捕えはしたが圧倒的に拘束力が弱く、すぐにでも拘束から抜けられてしまいそうだ。

 僕はレイクの助太刀をするために腰にある剣を握る。

「あれ?」

 剣を握ろうとするが僕の手は空を切る。

 何度も手を閉じてもそこに剣は無い。

 しまった!

 レイクとの買い物のために買った服のままだ!

 僕がこの格好のままということはレイクも学校の制服のままだ。

 アイテム欄を開き装備しなおしたいが、四足歩行のマネキンがその時間を与えてくれないだろう。

 拘束した木が千切れ始めている。

 どうする?

 僕にできることはなんだ?

 ガラス片を避け続けるレイクを見ながら僕は考える。

 僕が生身で突っ込んでも、あのガラス片で真っ二つにされるだけだ。

 レイクだから避けられてるのであって、僕には不可能だ。

 もう森を展開するスペースは無いし、今ある木の1本でもガラス片のマネキンに使えば、四足歩行のマネキンの拘束が完全に解けるだろう。

 どうしたらいいんだ!

「フータさんこっち!」

 同じ部屋から最近聞いたことがあるような声が聞こえる。

 僕は声のした方を見ると壁が少し開いていて、2人の少女なこちらを覗いていた。

「早くこっちに来て! ここならあいつらは来られない!」

 ガラス片が振り下ろされた瞬間に僕は動き出す。

「レイクごめん!」

「ちょ、ちょっとフータ!?」

 僕はレイクをお姫様抱っこをして隠し扉の方へ走る。

 ここで四足歩行のマネキンの拘束も解け、2体のマネキンが僕達を追ってくる。

 僕は隠し扉に飛び込むと、扉が閉じる。

 マネキンが扉にぶつかり大きな音が響く。

 引っ掻くような音がしばらく聞こえた後、カタカタという音を立ててマネキンたちが離れていった。

「ありがとうシーナ、ルナ。助かったよ」

 僕達を助けてくれたのは洞窟のダンジョンで出会ったシーナとルナだった。

 洞窟のダンジョンの帰り際、またねとは言ったけど、再開するの早くない!?

「いえいえ。お安い御用ですよ。でも、もしフータさんが何かお礼がしたいというなら……」

 シーナとルナが深々と頭を下げる。

「「私達を助けて下さい!」」

 助けた見返りに、助けて欲しいと言われた。

「フ、フータ?」

 僕の腕の中にいるレイクは困ったような顔をしている。

「そもそも、シーナとルナは何でこんな所に?」

 厳しい方になるけど、初級で苦戦していたシーナとルナのくる場所ではない。

 たまたま入ってしまったという事もありえるだろうけど、ここのダンジョンの入り口は見つけづらいところにあまたので、たまたまということはないだろう。

「知っていると思いますけど、今日オトガルシアに新しいダンジョンを発見したっていう情報が回ったんです。どうせ初級だろうと思って来てみたら上級でした……。今はたまたま見つけた隠し通路に隠れて助けを待っていました。ところで、その女性は?」

 ネロが昨日見つけたと言っていたからネロが情報を公開したのかな?

「あ、ごめん。レイク降ろすね」

 僕はレイクをゆっくりと地面に降ろす。

「レイクさん!?」

 僕にお姫様抱っこをされていたレイクはさっきまで恥ずかしそうに俯いていたので、レイクのファンのシーナからは顔が見えていなかったようだ。

 突然のレイクの登場にシーナは目を丸くして、何故か僕の後ろに隠れる。

「は、初めまして。シーナと言います。レイクさん大好きです」

 凄く小さい声でシーナが挨拶をする。

 幸い静かな空間なのでシーナの声はレイクに届いただろう。

「え? どういうこと?」

 レイクも混乱しているようなので僕が補足しておこう。

「この子たちとは洞窟のダンジョンで会ったんだけど、どうやらこっちのシーナがレイクのファンみたいなんだ」

「なるほど……。私のファン……」

 レイクは少し考えた後に両腕を大きく開く。

「おいで」

 そう言うレイクに今度はシーナが困っていた。

「さあ、私の胸に飛び付いておいで」

 僕にはレイクが何をしたいのかなんとなく分かっていたけどシーナのその言葉を聞いてさらに混乱している。

 僕はシーナの背中を軽く押してレイクに近づける。

 ニーナが近づくとレイクは獲物を捕らえるような速度でシーナを抱き締めた。

「フータ聞いた? 私のファンだって! あー、なんて可愛いんだろう!」

 レイクに抱き締められたシーナは嬉しそうな悲鳴を上げた後、よほど嬉しいのか意識が飛びそうになっている。

 シーナの悲鳴を聞きつけ、外からマネキンの動く音が聞こえ、隠し扉に激突する。

 しばらく壁を引っ掻く音が聞こえた後、マネキンは帰って行った。

「ご、ごめんなさい」

 今度はシーナがレイクに抱き着いて、身を縮めながら僕達に謝る。

 あのマネキンは軽くホラーだから怖がるのも仕方ない。

 シーナに抱き着かれているレイクは嬉しそうにしているので結果オーライだろう。


 さて、ここからどうしよう。

 今は隠れているだけで状況は何も変わっていない。

 2階層への階段の手掛かりは何一つ見つかってはいないのだ。

 この隠し通路はどこに繋がっているのだろうか?

「ここの奥はどこに繋がってるの?」

「2階層への階段がある部屋です」

 ルナが答える。

「え? 何て?」

 余りの衝撃発言に聞き返してしまう。

「2階層への階段がある部屋です」

 どうやら思ったよりも早く2階層に進めそうだ。

読んでいただきありがとうございます!

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