193話 無闇にスイッチを押してはいけない!
昨日は沢山のブックマークと評価をありがとうございます!
本当に嬉しいです!
作者はだいぶ元気になりました!
レイクの記憶を頼りにまだ入ったことのない部屋に入っていく。
全て同じ形、同じ広さなので僕には入った部屋が入ったことのある部屋なのか、入ったことのない部屋なのか分からないけど、レイクの脳内では地図みたいなものが出来ているらしく、迷うことなく進む。
「この部屋で丁度100部屋目だけど、まだ全然階段のある部屋を見つけれる気がしないよ」
「レイクばっかりに任せてごめんね。僕も何か手伝えるといいんだけど……」
「部屋は私が覚えていくから、フータは階段へ繋がるヒントを探して。私は部屋を探すのでいっぱいいっぱいだから、何かあってもきっと見逃しちゃう」
「そこは任せて。しっかり見ておくよ」
マネキンに僕達の位置がバレてはいけないので、この会話も最小限の声量だ。
もちろん足音もなるべく殺して歩いている。
この部屋で100部屋目。
ヒントがあったのは、あの行き止まりの部屋のアイちゃんの看板のみ。
僕も目を凝らして部屋中を見ているがヒントらしきものは無く、たまにアイちゃんの看板の部屋に繋がると思われる天井の矢印を見かけるくらいだ。
この部屋にも何もなく、僕達は次の部屋へ移る。
「ボタン?」
「ボタンがあるね」
僕達が入った部屋の中心に台があり、その上に赤いスイッチが置いてあった。
これは……。
あからさま過ぎるトラップだな。
こんなの誰も押すわけ……。
「ちょっとー! 何してるのー!」
こんなあからさまなスイッチを誰も押すわけないと思っていたけど、現在進行形でボタンを押そうとしているレイクがいた。
僕は慌ててレイクを止める。
「せっかくだし押してみようよー」
僕に止められたレイクはのんきに言う。
「いやいや、絶対トラップだから! 絶対押したらダメなやつだから!」
「ほら、このスイッチを押したら階段が出てくるかもしれないよ。だから押してみよ」
恐らくボタンを押したいだけのレイクが思い付いたように提案する。
「その可能性もあるけど、ここで押すべきではないよ。全ての部屋を見て階段がなければ押すことにしよう? ね?」
「うーん」
僕はレイクを説得するが納得は出来ていないようだ。
「次に行こう! 次に! ここで立ち止まっていても仕方ないよ」
僕はレイクの気をスイッチから逸らすために次の部屋へ行こうとする。
僕は歩き出したがレイクはスイッチを見つめたまま動かない。
「もう! 先に行っちゃうよ!」
僕はレイクを置いていくように歩き出す。
それでもレイクは動こうとしない。
それどころかスイッチに向かって指が伸び始めた。
「《森の目覚め》《植物操作》」
僕は木を使ってレイクの指をスイッチから離す。
「押したらダメだって! どうなっても知らないよ!」
「いやー。私の好奇心が抑えられなくってー。だって、スイッチだよ! 押さないと損だよ!」
何が損なのか分からないけど、レイクにとっては目の前にあるスイッチを押さないと損になるみたいだ。
「《解除》。本当に置いていくからね!」
《森の目覚め》を解除した僕はそう言い残して再び歩き始める。
これだけ言えば流石にスイッチはあきらめてついて来るだろう。
僕の背後で足音が聞こえるのでレイクはスイッチをあきらめたようだ。
これでいい。
あんなトラップだと分かり切ってるスイッチなんて押さなくて正解だ。
「やっぱり!」
レイクはそう言うと僕から離れていく。
「ちょっと……」
僕は離れていくレイクを止めようとするが、時は既に遅く、レイクの人差し指がスイッチをしっかりと押していた。
「ふー。スッキリ」
レイクは一仕事終えたみたいに額の汗を右腕で拭う。
何が起こる?
矢が四方八方から飛んでくるか?
床が開いて落とし穴になるか?
それとも巨大な岩が転がってくるか?
「……何も起こらない?」
しかし、僕の予想に反してスイッチを押したのに変化がないもない。
押しても何も起こらないスイッチだったとか?
それならありがたいんだけど……。
『ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!』
何も起こらない……そんなわけはなかった。
警告音がこの部屋を中心に1階層中に響き渡る。
これがどのようなトラップだったのか簡単に予想がつく。
マネキンをここに呼び寄せるためのスイッチだったんだ!
「ほら! やっぱりトラップだった! マネキンが来るから今すぐ逃げるよ!」
警告音の中、微かにカタカタと何かが高速で移動している音が聞こえる。
僕はレイクの手を引いて走り出す。
「ごめんなさーい! 好奇心に勝てなかったんだよー!」
走りながらレイクが僕に謝る。
少しお説教したいところだけど、そんな暇は無い。
「今は謝らなくていいから、レイクも自分で走って!」
僕はレイクの手を放して自分で走らせる。
「とにかくここから離れるよ! マネキンに見つかったらお終いだ!」
「あ、そっち左」
こんな時でもレイクは冷静にまだ入ったことのない部屋を見極めている。
僕達は音源から離れているはずなのに、マネキンが追いかけてくる音は着実に近づいている。
こうなったら階段を見つけるしか僕達が生き残る道はない。
もう足音も気にせずに次々と扉を開いて新しい部屋に入っていく。
「そこを真っ直ぐ!」
レイクがそう言ったところで僕達の後ろにある扉が開く。
その扉からマネキンが顔を覗かせていた。
「追いつかれた!?」
僕達の後ろにいるマネキンの手にはガラス片が無く、四つん這いで僕達を追いかけてくる。
嫌な予感がする。
その予感は的中した。
次の扉を開いた時、目の前にはガラス片を持ったマネキンが立っていた。
マネキンは1体ではなかったみたいだ。
僕達の足が止まる。
読んでいただきありがとうございます!




