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172話 レイクのお願い!

 ギルドハウスに戻り一息ついた僕達はアオとパレットが返ってるのを待つ。

 どれだけの説教をされたのか想像も出来ないが、パレットは色が抜けて真っ白になっており、歩く気力もないのかアオに担がれてギルドハウスに戻ってきた。

 アオとパレットが戻ってきたので、互いの『防衛戦』の思い出話をして解散する。

 次々と皆がログアウトしていき、僕とレイクと使い魔達が残る。

 僕とレイクが残ったのはハーマリにいた時の約束があるからだ。

「私、先に行ってるね」

「先に行く? 一緒にいるんだからここで言えば……」

「バカか、お前は……」

「え?」

 べリアちゃんにバカと言われる。

「もういい。レイク先に行け。こいつは後から送り出してやる」

 べリアちゃんがシッシと手を振り、レイクは急ぎ足で外へ出ていく。

「フータ様、レイク様の気持ちをもう少し考えてあげて下さい」

「そうよ。フータはもっとレイクの事を考えるべきよ」

「キュー!」

 きーこまで!?

 使い魔達から責められてしまう。

 レイクの事をもっと考えるべき?

 僕はレイクの事を考えてみる。

 レイクはいつも元気で強くて、少し天然が入っている。

 そして今日のレイクの発言を思い出す。

 僕がいくら無様な姿を見せても、レイクはかっこいいと言ってくれた。

 僕の事をヒーローで王子様と言ってくれた。

 ヒーローで王子様は少し恥ずかしいけどね……。

 でも、そう言ってもらえて凄く嬉しかった。

 あんこに乗って移動している時、レイクが後ろから抱き着くように掴まってきたことも思い出す。

 その場面を思い出すと、あの時感じていた背中のレイクの温もりが戻ってきて、僕の全身に広がり、体が熱くなる。

 あの時凄くドキドキしたなー。

 何だか胸が苦しいような感じもしたし、心地良さも感じた。

 あの時間がずっと続いて欲しいとも思ったし、今すぐ逃げ出したいとも思った。

 不思議な感覚だった。

「顔が真っ赤なところを見ると色々思い出したようね。それでいいわ。少しは進歩したかしら?」

「どうだかな。少しは自覚してくれると嬉しいんだけどな」

「そうですね」

「キュー、キュー」

 きーこもうんうんと頷いているが、考え込んでいる僕に使い魔達の発言は届いていない。

 

 レイクの事を考えていると、ゆきに頭をかじられて考え事の世界から引き戻される。

 時間は既に15分ほど経っていた。

「いつまでレイクを待たせる気なのよ。早く行ってあげなさい」

「大変だ! 急がないと!」

 ゆきに引き戻された僕は急いで出ていこうとする。

「兄貴何処に行くッスか? 俺も行くッス!」

 今までどこにいたのか分からないが、クロが僕について来ようとする。

「邪魔はさせませんよ」

「なんスかこれ! 今すぐここから出すッス!」

 チェイスさんが虫網でクロを捕まえる。

 クロは出ようと暴れるたびに、網に絡まり脱出不可能な状態になっている。

「チェイスさん、ありがとうございます! 行ってきます!」

「はい。行ってらっしゃいませ。お気をつけて」

「はい! 皆も行ってくるね!」

 

 僕はギルドハウスを飛び出してハーマリの噴水広場に向かう。

 さっきまであんこ達に言われてレイクの事を考えていたこともあり、今からレイクと会うと思うと少し照れるというか恥ずかしいような気分になる。

 当たり前だが、噴水広場ではレイクが既に待っていた。

「ごめん。遅くなった」

「いいよ。気にしてない。来てくれてありがとね。それよりも、あんこちゃん達に変なこと言われなかった?」

 変なこと?

 レイクの事をもっと考えろと言われたくらいで特に変なことは行っていなかったよな?

「言われてないよ」

「そっか。良かった……」

 僕達は噴水広場の適当なベンチに腰掛ける。

「レイク見てよ」

 僕はおもむろに言う。

「ん? 何を見るの?」

「この景色をさ。この景色は今日、僕達が守った景色だよ。この噴水広場も、目の前にある建物も、ここに賑わうプレイヤー達の笑顔も、今日、全部僕達が守ったものだ」

 僕達だけで守ったわけではないので傲慢な考え方だけど、2人の間でこの時だけはこの景色は僕達が守ったと思ってもバチは当たらないだろう。

「そうだね。素敵な景色だね。本当に守れてよかった」

「本当にね。今日はありがとうレイク。レイクがいなかったら僕は白竜を倒せなかったよ」

「私の方こそありがとうだよ。今日は一緒に戦えて楽しかった。フータとだから勝てたんだよ」

 レイクの言葉で僕の胸は締め付けられるような感覚に襲われる。

「それでお願いって言うのは?」

 僕は早速本題に切り替える。

「待ってね。心の準備をするから」

 レイクが胸に手を当てて2回深呼吸をする。

 そんなレイクを見て僕は逆にと落ち着かなくなっている。

 お願い……。

 何を言われるんだろう。

 いいこと?

 悪いこと?

 これだけ改まって言うことだ。

 相当重要なことだろう。

 もしかして……ギルドを抜けたいなんて言わないよね!?

 ここにいるのはギルドマスターとギルドメンバーだ。

 それだったら嫌だな。

 僕はもっとレイクと一緒に冒険をしたいし、もっと同じ時を過ごしたい。

 レイクの深呼吸が終わる頃、僕も覚悟を決める。

 お願いは聞くと言ってしまった。

 何を言われても聞いてあげるのが僕の役目。

 さあ、どんと来い!

「お願いって言うのはね……」

 レイクがゆっくりと口を開く。

「私と一緒に買い物に行って欲しいんだ」

「買い物? それ位なら構わないよ」

 買い物位なら皆でどこか行くのも楽しそうだしね。

「本当?」

「うん。本当だよ」

 僕が本当と言うとレイクの表情が明るくなる。

「やったー! 2人きりでの買い物楽しみにしてるね。詳しいことは私が決めて今度伝えるよ! 今日はありがとう。バイバイ」

「え? 2人きりって……」

 僕が最後まで言う前にレイクはログアウトしてしまった。

 レイクと2人きりで買い物……。

 始めは皆でと考えたが、僕は2人きりと聞いて少し嬉しいと思っているかもしれない。

 とにかくギルドを抜けるとかではなくてよかった……。


読んでいただきありがとうございます!

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