表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175/220

171話 『防衛戦』終了!

 僕達はアオとパレットがいるグラーシに到着する。

 ハーマリにいるネロから聞いた情報だとニーヤさんが自分の命と引き換えに門を守ったことを聞いた。

 アオとパレットがピンチだとかなり急いで来たがこの光景を見たら、僕達が急いで来たのも取り越し苦労だったかなと思う。

「ア、アオ……我慢できない……ププッ……」

 ダメだ。

 笑うのを我慢できない。

 僕達がグラーシに着くと倒れたアオと、アオの顔に落書きをしているパレットを発見した。

 とても楽しそうに落書きをしているパレットは満足するまで止める事はなく、アオの顔に見事なアートが完成した。

「アオ、似合ってるよー」

 レイクも笑いながら言う。

「師匠、見ないでください。笑わないでください。おい、パレット早く消せ!」

「嫌です」

 パレットはキッパリと断わる。

 アオは青竜を倒した《天の一矢》というスキルの反動で動けないらしくパレットにされるがままになっている。

 パレットに遊ばれるアオというのも珍しい。

 アオには悪いけどこの光景もかなり面白いのでしばらくそのままでいてもらおう。

「しばらくそのままでいいんじゃないかな」

「そんなー」

 アオが情けない声が僕達しかいない浜辺に響く。


 アオが動けないままなのでしばらくその場で過ごす。

「おや? アオ君、随分と前衛的な顔になりましたね」

「先生!」

 先生達もグラーシで合流する。

「僕も来たよ!」

 先生の影からネロが顔を出す。

「もう街の方はいいの?」

「うん。門も開いてほとんどのプレイヤーが街に帰って行ったよ。グラーシで残ってるのはもうフータ達くらい。僕の仕事も終わったから先生と一緒にみんなの所に来たんだ」

「そっか。ネロもお疲れ様」

「フータもお疲れ様。皆すっごくかっこよかったよ! 改めて『フォレスト』は凄いギルドだと思った!」

 僕達はネロに素直に褒められ、照れてしまう。

「いたー!」

 遠くから大声を出し、僕達の方を指差している人がいる。

「げっ! ニーヤさんです」

 いち早く反応したのはパレットだった。

「私はちょっと用事が……」

 そう言いながらパレットは逃げようとする。

「街なさーい!」

 ニーヤさんはパレットを追いかけてすぐに捕まえる。

「痛てて、放してください」

 パレットはニーヤさんに後ろで腕を組まれたまま僕達の所に連れてこられる。

「こ、これは……」

 僕達の所に来たニーヤさんは倒れたままのアオを見てなんとも言えない声を上げる。

「もう、俺のことは放っておいてくれ。それと俺の分まで頼む」

「分かったわ。青竜は倒してもらったから、こちらは任せなさい」

「青竜なら私も倒したのですが……」

「そうね。でも、その前に私にしたことを忘れてないわよね」

 ニーヤさんの顔が怖い。

 いったいパレットは何をしたのだろうか?

 僕はこっそりネロに解説を求める。

 ネロはニーヤさんとパレットの間に起きたことを一部始終余すことなく教えてくれる。

 なるほど。

 それはパレットが悪いな。

「終わり良ければ全て良しじゃないですか。もう終わった事です。お互い水に……」

「水に、なに?」

「流れませんよね……」

「ええ。もちろん流れないわよ」

 最後にいい笑顔を残したニーヤさんの顔が一変すると、パレットは一頻り怒られる。

「も、もう勘弁してください。私が悪かったです。謝りますから! 謝りますからこれ以上は……」

 側から見ても相当怖いので、当事者はもっと怖かったのだろう。

 パレットはすぐに音を上げる。

「そう。なら誠心誠意謝ってちょうだい」

「すみませんでした。多分、もう二度とやりません」

「多分?」

 パレットは余計な一言でニーヤさんに凄まれる。

「ひっ! もう二度とやりません」

 今度は怯えながらも余計な一言はない。

「今回だけはこれで許してあげるわ。感謝しなさい」

「そうですか。これだけで済むなら初めから謝っていればよかったです」

 パレットは反省したかに見えていたが、全く反省していない発言をする。

「だったら、説教の延長戦といこうか」

 パレットの肩がガッチリと掴まれる。

「あれ? 何で?」

「ようやく動けるようになったからなぁ。これでどこにも逃さず説教が出来そうだ」

 アオがいつの間にか起き上がっていてパレットの後ろから逃さないように肩を掴む。

 アオはそのままパレットよ肩を押し付け砂浜に正座させる。

「反省が足りないようだから2人掛かりでしっかり教えてあげないといけないわね」

 正座したパレットの前にはアオとニーヤさんが立ち並ぶ。

「フータさん、フータさんは私のギルドのマスターですよね。だったら連帯責任の筈です。一緒に怒られましょう。下の責任は上が取らないといけない筈です。この世の摂理です」

 切羽詰まったパレットが僕も巻き込もうと必死になる。

 そっか。

 パレット、頑張ってくれ!

「僕達は先に帰ってるから、適当に切り上げて戻って来てね」

「バイバイ。パレット頑張ってねー」

「では、先に帰らせてもらいますね。アオ君も一通り済んだら帰ってくるのですよ」

 僕達はパレットとアオとニーヤさんを砂浜に置いてギルドハウスに戻る。

「待ってください! 待ってくださーい!」

 パレットが必死に僕達を呼び止めるが、振り返る者はいない。

 僕を巻き込もうとした罰だ。

 しっかり反省してほしい。

 背後からはパレットの啜り泣く声とアオとニーヤさんの怒鳴り声が聞こえる。

 僕達は聞こえないフリをして街へ向かう。

 

 何はともあれ『防衛戦』が無事に終わってよかった!


読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ