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156話 ハーマリでかっこ悪くない!

 光の玉は白竜を守りつつ僕達を攻撃してくる。

 白竜に近づこうとすると、光の玉が牽制のレーザーを発射して近づくことが出来ない。

 《森の目覚め》で森を展開しても光の玉に焼き払われて、白竜まで木の根が届かない。

 それに加えて光の玉は僕達を普通に攻撃するので、かなり厄介だ。

 僕は毎回避けるのがギリギリになってしまって危ないく、避け方がいつも不格好だ。

 レイクはすれすれでレーザーを躱しているが、どこか余裕を感じる。

 あんこもクロもすんなり躱し、苦労してるのは僕だけみたいだ。

 かっこ悪いな……。

 そんなことを考えていたせいで僕に向かって発射されたレーザーに気づくことが出来なかった。

「危ないよ」

「グエッ!」

 レイクに襟を掴まれて後ろに引っ張られる。

 引っ張られた勢いで僕は無様に尻もちをつき、股の間にレーザーで地面が焦げた跡が残る。

「かっこ悪いな……」

 そんな言葉が思わず口からこぼれてしまう。

 僕の言葉を聞いたレイクは首を傾げる。

「かっこ悪い? フータが? 何がかっこ悪いのか分からないけど、私から見たらフータはいつもかっこいいよ」

「そんなお世辞は……」

「フータが自分の事をどう思ってるか分からないけど、私はフータをかっこ悪いなんて思わないよ。私の中ではフータは……ずっとヒーローで王子様だよ」

 レイクはそんなセリフを平然と言ってのける。

 僕はレイクの言葉に赤面する。

「さあ、立って。白竜を倒すんでしょ! そんなところで座ってたら私が倒しちゃうよ」

 ニッコリと笑うレイクが僕に手を差し出し、僕はレイクの手に掴まって立ち上がる。

 赤面したまま何も言えない僕を他所に、レイクは白竜に向かって駆けていき、レーザーを躱しつつ白竜に近づいていく。

 僕はそんなレイクの姿を見て正気を取り戻して、頭を戦闘に切り替える。

「《森の目覚め・攻》」

 僕は森を展開して少しでもレイクが白竜に近づきやすいように光の玉の攻撃をこちらに向くようにする。

「レイク! 僕がレーザーを止めるからそのまま進んで!」

「分かった! フータを信じて進むよ!」

「《森の目覚め》《植物操作》」

 僕はレイクに向くレーザーを《植物操作》で防ぐ。

 細くて速いレーザーを防ぐにはかなりの集中力が必要だ。

 レイクに向かうレーザーを一つ一つ木の根で防いで行く。

 レイクが白竜に辿り着いてどうなるか分からないが、とにかくレイクを白竜の元へ!

 

 レイクは一直線に白竜まで走り、それを僕がサポートする。

「フータ!」

 僕を呼ぶレイクは白竜の頭を指さしている。

「分かった!」

 僕はレイクが白竜に近づくと僕は木の根をレイクの足元まで伸ばし、木の根でレイクの足場を作り、レイクの体を持ち上げて白竜の頭まで飛び上がらせる。

 飛び上がったレイクは目一杯に拳を引き、白竜の頭を思いっきり殴る。

 レイクが地面に着地すると同時に白竜の体が揺れ、地面に横たわる。

 白竜を守っていた光の玉も消える。

「やったッスか?」

「いや、未だだ!」

 モンスターは倒すと光になって消えるはずだけど白竜はまだ消えていない。

 白竜はふらふらと立ち上がると白い光を口に集める。

 まずい!

 ブレスだ!

「クロ!」

「了解ッス!」

 クロも口に黒い光を溜める。

 僅かに白竜の方が早く発射し、互いにブレスはぶつかり合い、爆発を起こす。

 爆発で砂埃が舞い上がり白竜の姿が見えなくなる。

「あんこ!」

「はい!」

 僕はあんこに乗ると砂埃の中に入って、視界の悪い中、白竜に近づく。

 剣を右手で構え、砂埃から出ると目の前には白竜が口を大きく開けている。

 白竜は最後の力なのかまた口に白い光を貯めていた。

 あんこが飛び上がり、僕は白竜の口の中に剣を突き刺す。

 剣を突き刺すと僕はバランスを崩して地面に落ちる。

 どうだ?

 白竜を見る。

 口の中に剣は刺さっているが倒れていない。

 白竜はハーマリの街の方を向く。

「そっちは!」

 白竜はハーマリの門に向かってブレスを発射しようとする。

 打ち消そうにもクロのブレスはもう3回使ってしまった。

 僕にはどうにかしたくても、白竜のブレスを止める手段がない。

 終わりだ……。

「フータ、未だだよ!」

 レイクが助走を取って走ってきている。

「《植物操作》!」

 レイクの行動に僕は反射的に反応する。

 その辺にあった木を操作してレイクの足場にしてレイクを飛び上がらせる。

 レイクは僕の木から大きく飛ぶと、先ほどと同じように拳を思いっきり引く。

「《暴力姫・解放》!」

 レイクがそう言い、白竜の口の中に僕の刺さったままの剣を力一杯に殴ると轟音を立てる。

 僕の剣が竜の頭から尻尾に抜けると白竜に大きな穴が開く。

 大穴が開いた白竜は倒れるとそのまま光になって消える。

「やったね!」

 レイクは地面に落ちて倒れたままの僕の所に来てまた手を差し伸べてくれる。

「ありがとう」

 僕はお礼を言いながらレイクの手に掴まって起き上がると、レイクとハイタッチを交わす。

「クロもあんこもお疲れ様。疲れて休みたいところだけど、すぐにハーマリの街の方に向かおう。白竜は倒したからモンスターは帰っていくはずだけどゆき達が心配だ。ゆき達の無事を確認したら、他の街にも行かないとね」

「やることがいっぱいだね」

「我はまだ大丈夫っス!」

「ゆき……大丈夫でしょうか……」

 僕とあんことクロはハーマリの街に向かって歩き出す。

「フータちょっと待って。この『防衛戦』が終わったらお願いしたいことがあるんだ。だから『防衛戦』が終わったらハーマリの噴水の前に来てね」

「ん? 分かった」

「絶対だからね!」

 笑顔のレイクも僕達の横に並びハーマリの街を目指す。


「そういえば最後の《暴力姫・解放》って凄い威力だったけど何だったの?」

「あれね。白竜の顔を殴った時に解放されたスキルなんだけど、まさかあんなスキルだと思わなかったよー」

「思わなかったって……」

「あれで倒せてラッキーだったねー」

 ラッキーという言葉だけで済ませるレイクに僕達は力が抜ける。


 帰りはあんこが疲れてしまって乗れないので、自分達で走って帰ることになった。

 皆無事だといいけど……。


『ハーマリ防衛成功』



読んでいただきありがとうございます!

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