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150話 オトガルシアの開戦とジャッカリアの開戦!

 午前10時ちょっと前。

 俺はオトガルシアでファイヤの演説を聞いている。

 ここに集まるプレイヤーはファイヤの言葉を聞いて士気を上げているが俺には必要ない。

 あんな言葉がなくても俺の士気は常に最高だし、それに今は何にも負ける気がしない。

 もちろん竜にもフータにもだ。

「絶対にこの街を守るぞ!」

「「「「「「おおぉぉぉぉぉぉーーーーー!」」」」」」

 ファイヤの演説が終わりプレイヤー達が雄叫びを上げる。

 その声はオトガルシアの平原中に響き渡る。

 平原が再び静寂に包まれると俺は最前列に行き竜を待つ。

 やっぱり俺は赤竜と戦いてーな。

 竜の代表みたいな感じだし……。

 それに赤竜を倒した奴が勇者だと相場が決まっている。

 誰もが勝てない竜に単独で挑み、死闘の末、勇者が勝つ。

 お決まりの展開だ。

 これができれば俺は勇者になれる。

 まあ、竜を倒す事は決定事項なのですでに俺は勇者みたいなものだがな!

 俺には街に守る理由は無いが、モンスターと戦う理由ならこれだけ有れば十分だった。

 早く来い。

 早く来い。

 モンスター達よ早く来い。

 俺の心の奥底の闘志が今にも溢れ出しそうだ。

 俺の願いが通じたのか、午前10時ピッタリに遠くの方から地響きが聞こえる。

 その地響きと共にに竜が空から舞い降りる。

 来た!

 赤竜だ!

 これを倒せば俺は勇者になれる!

 さて勝負と行こうか、巨大な赤いトカゲよ。


「青竜の初撃でグラーシにいるプレイヤーが半壊した! 僕の分身もやられて状況が掴めない!」


 フータのギルドのネロが後ろの方で騒いでいる。

 グラーシは俺の相棒のニーヤが戦っている場所だ。

「ユウ聞いたか? グラーシのプレイヤーが半壊だってよ。あそこにはお前の彼女のニーヤがいたよな? 心配ならここから離れて助けに行ってもいいぞ。オトガルシアからだと遠いがお前ならあのモンスターの群れを突っ切ることくらい余裕だろう」

 わざわざファイヤが俺の隣に来て話しかけてくる。

「心配? 誰が誰を? 俺がニーヤを心配していると思ったら大間違いだ。ニーヤは大丈夫に決まってる」

「何故そう言い切れる?」

「俺がニーヤを信じているからだ」


***************************************************


 私は今大勢の人間の前で絶対に竜に勝って街を守ろうと声高々に語っている。

 ファイヤに勝手に用意されたジャッカリアの台の上でこれから一緒に戦うプレイヤーに向けて長々と話している。

 ここにはあの会議でいたメンバーは『拳闘士団』ギルドマスターの私と『ドワーフ軍団』のトンドット、『中小ギルド連合』のキッカーだ。

 私が代表みたいになっているが正直トンドットかキッカーにやってほしかった。

 あの会議で『フォレスト』のメンバーはいらないと言ったがこれには理由がある。

 私が『フォレスト』というギルドを嫌っているからだ。

 王の称号などという運だけのもので頂点に立つ彼らがどうしても腹立たしい。

 私は有名ギルドと言われるようになるまで、かなりの努力をしたというのに。

 努力しても、努力しても、いつも噂されているのは彼ら『フォレスト』の連中だ。

 それに『暴力姫』とか呼ばれている女。

 戦闘スタイルは私と一緒で拳みたいだが、素手というのも戦闘を舐めているとしか思えないし、何より絶対私の方が強いに決まっている!

 なのにどうしてあの女の方が有名なんだ!

 近頃はファンクラブまで出来たというではないか。

 腹立たしい……。

 非常に腹立たしい!

 私はこの『防衛戦』でフォレストのやつらの力を借りることなく竜を倒し、私の方が強いとこのゲーム世界に知らしめてやる!

 そんなことを考えながら大勢のプレイヤーの前で話し終わると丁度午前10時になる。

 2号さんの通達だとこの時間から警戒しておかなければならない。

「総員警戒せよ! 10時になった! 何時竜が現れてもおかしくない!」

ここにいる全プレイヤーに聞こえるように言うと私も警戒態勢に入る。

 遠くから地響きが聞こえ、モンスターの大群がジャッカリアの街に向かってきているのを確認する。

 そんなモンスターの大群の中央地点をモンスター達が避けて通っている。

 あの場所に何かあるのか?

 そう思い注視していると、地面が盛り上がり、地中から黄竜が出てくる。

 黄竜はオトガルシアで見た赤竜のような翼は無く、どっしりとした図体に太い手足の四足歩行の竜みたいだ。

 あれが私達の敵……。

 さて、どう戦おう?

 そう考えていた時に後ろの方にいる『フォレスト』のネロという少年から連絡が入る。


「青竜の初撃でグラーシにいるプレイヤーが半壊した! 僕の分身もやられて状況が掴めない!」


 グラーシの街……。

 あそこにいるのは『魔法研究所』と自称勇者の相棒のニーヤ、『フォレスト』のパレットだったか?

 何をしている?

 半壊ということは半分近くのプレイヤーが倒されてしまったのだろう。

 『フォレスト』のパレット、お前がもしこんな序盤で倒れているなら、私がお前を殺しに行くぞ。

 お前も『フォレスト』一員なら何とかして見せろ!

 私の嫌いな『フォレスト』のメンバーならばどうにかしろ!

 私の嫌いな『フォレスト』はこんな序盤に負けたりしない筈だ!

 私が嫌いで、どうしても憧れてしまう『フォレスト』ならば。

読んでいただきありがとうございます!

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