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149話 エルグランデの開戦!

「青竜の初撃でグラーシにいるプレイヤーが半壊した! 僕の分身もやられて状況が掴めない!」 

 この衝撃の情報は各街に伝えられた。

 もちろん俺と先生のいるエルグランデにも。

 

「先生、どうしましょう?」

 さっきまで『狩人』のギルドマスター、ハントさんの演説を聞き、俺達エルグランデを守るプレイヤー達は士気を上げていた。

 午前10時になると同時にモンスターの足音の地響きが聞こえたと思うと、霧の道の方から淡く緑色に光る大きな何かが近づいてくるのを確認する。

「ここは私達に任せて、アオ君が助けに行きなさい」

「でも……」

 俺は今すぐにでもパレット達を助けに行きたい気持ちがあるが、俺がいなくなってはエルグランデを守るプレイヤーが減ってしまう。

「行けよ。ここはあたい達がいれば大丈夫だ」

「そうです。パレットさんの助けに行ってあげて下さい」

 べリアちゃんとチェイスさんに行けと言われて決心がつく。

「分かりました! 俺が助けに行きます!」

 今すぐ転送用ポータルで……。

 しまった!

 門が閉じてるから街の中にある転送用ポータルに入ることが出来ない!

「霧の道を進むしかないか……」

「道は私達が開きます。アオ君は隙を見つけてグラーシに向かってください。そろそろ来ますよ」

 先生がそう言うと緑色の正体が現れる。

 緑竜だ。

 緑竜の体は淡く発行している。

 まるでエルグランデのクリスタルのような光り方だ。

 緑竜の周りには霧の中で何度も遭遇したトカゲの大群がいる。

「開戦です。始めから全開で行かせてもらいましょう。《常夜の国》《死神化》」

 先生が《常夜の国》を使ったことで霧ので視界が悪い上に暗闇になり、ほとんど何も見えなくなる。

「お前らー! 暗くなっても狼狽えるな! 『教死』のフィールドスキルだ! 《暗視》と《視力強化》を使えばどうってことない!」

 ハントさんが声を張り上げ、先生の《常夜の国》で周りのプレイヤーが動揺しないようにしている。

 ここにいるプレイヤーはハントさんの『狩人』のメンバーが多いので先生と共闘すると分かった時点で全員《暗視》と《視力強化》のスキルを取っていたみたいだ。

 その他のプレイヤーは手に明かりを持ち自分の周りを照らしている。

 俺も今日のために《暗視》のスキルは取ってきたので使用する。

 《視力強化》と《暗視》を使用するとさっきまでの視界に戻る。

 この暗闇に紛れてグラーシに行くしかない!

 俺が走り出そうとするとネロに止められる。

「止めちゃってごめん! でも僕の分身の1人も一緒に連れて行って! 僕が1日に出せる分身は5人まで。今日はもうすでに4人出してるから、今から出す分身は何としてもグラーシまで無傷で運んでほしい!」

 無傷……。

 さらりと難しいことを頼まれてしまった。

「難しいかもしれないけどアオなら出来るって信じてるよ! 《分身》」

「よろしくね!」

 分身したネロに挨拶される。

「アオ君行きなさい。パレットさんが待っていますよ」

「はい! 行ってきます!」

 俺はネロの分身を連れて走り出す。

 目の前には緑竜とトカゲの大群。

 先生たちが道を開いてくれると言っていたので信じるしかない。

 俺はなるべく緑竜から離れたところからグラーシへ向かおうとする。

 ここで緑竜が動きを見せた。

 緑竜の足元から木が生え始めたのだ。

 これは師匠と同じ!?

 何もない場所から木を生やすという見慣れた光景。

 しかしそれをやっている人が違う。

 師匠と違う所があるとすれば木が緑竜と同じように淡く光っていることだろうか。

 あの緑竜がただ木を生やすしただけとは思えない。

 生やした後にやることといえば後は1つだろう。

 緑竜の足元の木が少し動いたと思うと、物凄い勢いで俺の方に木の根が伸びてくる。

 来た、《植物操作》だ!

「やらせませんよ」

 いつの間にか俺の近くに来ていた先生が俺と木の根の間に入り、大きな鎌で弾いて木の根を防ぐ。

「先生!」

 先生が弾いた後ろにもう1本の木の根が隠されていた。

 俺はとっさに叫んで先生に危険を知らせるが、先生が木の根を避けようとする気配はない。

 そうか先生は今《死神化》をしている。

 師匠の木の根も先生を通り抜けていた。

 避ける必要がないのか。

 次の瞬間、先生が木の根に飛ばされ俺の視界から消える。

「先生!?」

「なるほど。厄介ですね」

 飛ばされて壁に打ち付けられた先生がのんきに言う。

 どういうことだ?

 先生は《死神化》をしていたはずだ。

 なのに今先生は木の根に飛ばされた。

「私の《死神化》は物理攻撃はすり抜けますが、魔法攻撃はすり抜けません。つまり、あの木は魔法で作られているということです。楽しくなってきましたね」

 虚勢などではなく、先生は本当に楽しそうな顔をしている。

「べリアちゃん、アオ君とネロ君を安全な所まで連れて行ってあげて下さい」

「任せとけ。行くぞ」

 楽しそうな顔をしている先生を置いて、俺達は再び走り始める。

 

 べリアちゃんが先頭で邪魔になるトカゲを倒し、1度も止まることなくトカゲの群れを抜ける事が出来た。

 出来たが、トカゲの数がかなり多く抜けるのに時間がかかってしまった。

 幸い緑竜からの攻撃はあれ以降なく、緑竜はターゲットを完全に先生に変えたみたいだった。

「あたいはシュウの所に戻る。あんな緑竜すぐに倒してあたい達もすぐにグラーシに向かってやるから、それまで頼むぞ」

「べリアちゃん、ここまでありがとう。グラーシは俺が何とかして見せる。だからべリアちゃん達はあの緑竜に集中してくれ」

「そうか……。分かった。まずはそっちの事は考えずにエルグランデの事を考えるとしよう」

「そっちは任せたぞ」

「ああ。任された!」

 俺とネロの分身はべリアちゃんと別れグラーシに向かう。

 俺の覚えてる限りだとグラーシはもうすぐ着くはずだ。


読んでいただきありがとうございます!

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