148話 ハーマリの開戦!
僕は今約100人位の人に注目されている。
現実世界では考えられないなー。
現実世界では最近まで友達もいなかったようなただの高校生がゲーム世界では100人もの人に注目されて台上で喋らないといけないんだもんな。
世の中何が起こるか分からないものだ。
「えー、皆さん聞こえますか?」
聞こえますかと言ったがこれは聞こえてないな……。
やはりいまいち反応が悪い。
あんまり声が通らない。
普段から大きな声は出さないし、頑張っても奥の方には声が届かない気がする。
「フータ、ちょっと待ってね。いいスキルがあるよ。《スピーカー》」
ネロが僕にスピーカーという魔法を掛けてくれた。
ネロは便利な魔法を持ってるなー。
「あー、あー、皆さん聞こえますか?『フォレスト』のギルドマスターのフータです」
先程とは比べ物にならない位僕の声が大きくなった。
これなら全員に聞こえてるはずだ。
さて反応はどうだろう。
僕は『タッグマッチトーナメント』の時からあまり好かれては無いと思うけど……。
あんまり悪口ばかりだと落ち込むよ?
「聞こえてるぞー!」
「俺はお前と一緒に戦える時を楽しみにしていたぞー!」
「俺はおこぼれ王子がハーマリを守るって聞いたから俺もハーマリをッ守ることに決めた!」
「俺もだ!」
「私もだよ!」
「『宝探しゲーム』の時のおこぼれ王子と自称勇者の戦いを見て感動したー!」
「暴力姫様ー! 俺を殴ってくださーい!」
予想外だった。
まさかこんな反応が返ってくるとは思わなかった。
素直に嬉しい!
最後のやつは……聞かなかったことにしておこう。
「皆さん今日はハーマリに集まってくれて本当にありがとうございます。僕自身、皆さんにはあまり好かれているとは思っていなかったので、こんな反応が返ってくるとは思わず驚いております。『炎の王国』のギルドマスターのファイヤさんには、ここでハーマリに集まったプレイヤーの指揮を執って欲しいと言われましたが、僕には指揮なんて出来ません。ですが、最前線に立って戦うことならできます。巨大な竜に立ち向かうことならできます。今日は皆さんの前に立ち最前線で竜に立ち向かうと誓いましょう。何があっても、どれだけ竜が強くても、どれだけ絶望的状況に追い込まれようと、必ず僕が竜を倒してハーマリを守ります。しかし、僕一人では竜が率いるモンスターの大群に押し潰れてしまいます。竜の元に辿り着くことも出来ないでしょう。皆さんの助けが必要です。皆さんの力を貸して下さい! 僕一人で勝てる相手ではないから! 共に戦いましょう! 必ず勝ってハーマリを守りましょう!」
「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉーーー!」」」」」」」」
プレイヤーの雄叫びがハーマリの平原に響きわたる。
時刻は丁度午前10時。
竜が出現するであろう時間だ。
時刻を確認し、静まり返った平原に地響きのような音が聞こえてくる。
街の門の反対側。
あちこちからモンスターの足音が聞こえてくる。
地面ばかりに気を取られてはいけない。
遠くの空に光の柱が出来る。
光の柱から1匹の竜が現れる。
白竜だ。
僕達が守るハーマリに現れたのは真っ白な美しい竜だった。
神々しい……。
思わずそう思ってしまう竜が今回の敵というわけだ。
あの白竜の元へ行くにはまず目の前にいるモンスターの大群を抜けなくてはいけない。
「ゆきときーこはここに残ってモンスターの数を減らして! くれぐれも無理はしないように!」
「分かったわ」
「キュー!」
「あんことクロとレイクは僕と竜の元へ行こう!」
「はい!」
「了解ッス!」
「うん!」
僕達が白竜の元へ向かおうとするとネロから衝撃の情報が伝えられる。
「青竜の初撃でグラーシにいるプレイヤーが半壊した! 僕の分身もやられて状況が掴めない!」
今回も読んでいただきありがとうございます!




