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136話 平穏な日常!

 ファイヤさんの会議の日程は、来週の土曜日の夜に決まった。

 チェンジワールドオンラインの世界が騒がしい中、休日が終わりテストのない平穏な学校生活が戻ってくる。

 今は今日最後の授業。

 今日はテスト終わりの最初の授業ということで数々のテストが返却された。

 僕はアオのおかげで危なげなく、赤点を回避する事が出来ていたのだが、今かなりピンチだ。

 マイブームでテストの点数は見ずに、下からちょっとづつ答案を見て、どれだけ丸があるのかを確認するということをやっていたのだが、この英語の答案どこか様子がおかしい。

 おかしいというのも、下の方を少し見ただけでも分かるほどバツが多い。

 そこまで間違えた覚えはないのにどうしてかと思ったら、半分辺りで回答がズレていた。

「アオ、ヤバいかもしれない……」

 僕はこの度の席替えで、僕の前に来たアオに助けを求める。

 こればかりは、アオでも助けようがないんだけどね。

 アオは僕の下半分だけめくられた答案を見る。

「し、師匠!?」 

「回答欄がここからずれてた……」

 僕はズレている個所に指を指す。

「丁度半分くらいですか……。と、とにかく先を見てみないと分かりません」

「そ、そうだね」

 僕はゆっくりと半分より上をめくっていく。

 よかった。

 ここからは丸の方が多い。

 でも、バツもある。

 答案を全てめくり終えて全体を見る。

 まだ点数の部分は折り曲げて見えないようにしている。

 赤点は30点未満だ。

 この僕の答案は見た限り、ギリギリ30点あるかないか分からない。

「めくるよ」

「はい……」

 僕とアオは答案の点数が書いてある部分を凝視して、喉を鳴らす。

 ゆっくりと僕が折り目をめくるとそこには数字が書いてあった。

 

 30点


「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」

 僕とアオは席を立ちあがり叫んだ。

 ギリギリセーーーーーーフ!

「そこ! 静かにしなさい!」

「「ご、ごめんなさい」」

 英語の先生に指を指されながら注意されると僕達は静かに着席する。

「やりましたね師匠!」 

「うん! これもアオのおかげだよ!」

 先生に怒られるといけないので僕達は小声で話す。

「いやいや、師匠の努力があってこそです」

「いやいや」

「いやいやいや」

「いやいやいやいや」

 終わらない謙遜の仕合が始まる。

 しばらくやって飽きてきたころ授業終了のチャイムが鳴る。


「2人ともさっき何で騒いでたの?」 

「レイク見てよ、この答案を!」

 僕は自慢げにレイクにテストの答案を見せる。

「え……?これ自慢できる点数じゃないよね……」

「ん?」

「ん?」

 僕とレイクの目が合う。

 あれ? 

 思ってた反応と違うぞ?

「もっと凄い! ってなると思ったんだけど……」

「そのギリギリの点数は凄いと思うけど自慢できる点数ではないと思うなー」

 レイクは苦笑しながら言う。

「師匠、さっきから聞いていましたがレイクの言う通りギリギリの赤点回避は凄いと思いますけど、人に自慢出来る点数ではないと俺も思いました」

「まさかのアオもそっち側!? さっきまであれだけ褒めてくれたのに!」

「よく考えてみたら30点って高い点数ではないことに気が付きました。師匠もよく考えてみて下さい」

 よく考えてみよう。

「うん。30点って自慢できる点数じゃなかったね!」

 レイク以外の人に自慢する前に気づけて良かった。

 待てよ?

 レイクとアオ以外に自慢できる人なんて僕にはいなかったよ……。


「はい。帰りの連絡をするので皆さん席に着いてください」

 担任の高橋先生が教室に入ってきて僕達も席に着く。

「今日、たくさんのテストが返ってきたと思います。他の先生方が今回は非常に出来がいいと褒めていました。赤点を取った人もかなり少ないみたいで先生は嬉しいです。ということで熊野恵美さん、後で職員室に来てくださいね。ちょっとだけお話があります」

 先生はいつものニコニコ顔だ。

 しかし、ちょっとだけお話がありますと言う先生の目は笑っていない。

 森絵さんを見ると冷や汗が流れている。

 以前、先生に呼び出されたことがある僕なら分かる!

 この後、森江さんは怒られる。

 いつも優しい先生からは考えられないような冷たい雰囲気が滲み出ている。

「さ、皆さん帰りの挨拶をしましょうか。青人君、お願いします」

「起立。気を付け。さようなら」

「「「「さようならー」」」」

 アオに続いて全員が帰えりの挨拶をする。

「はい。さよなら」

 先生がいつものように笑顔で挨拶を返すと、この雰囲気から逃れたい生徒達が蜘蛛の子を散らすように教室から出ていく。

「熊野さん?どこへ行くんですか?」

 熊野さんは他の生徒に紛れて逃げようとしていた。

「え、えーと、私、今日はなんやかんやで用事がありまして……」

「そうですか。忙しいのですね。それなら早く帰れるように、今すぐに職員室に行かないといけないですね」

「職員室に行かない方が早く帰ると思うのですが……」

「私は別にいいですよ?熊野さんの今回のテストで取った赤点の数々の話をまだ残ってる生徒に聞かれてもいいのでしたら」

「はい。分かりました。今すぐ職員室に行ってで話しましょう」

「分かってくれればいいのです。行きましょうか」

「はい。行きましょう」

 熊野さんは先生と一緒に職員室に行ってしまう。

 強く生きてくれ……。

 僕は心の中で熊野さんの背中を見てに言う。

 僕が熊野さんに送れるエールはそれくらいだった。


読んでいただきありがとうございます!

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